提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ

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麦・大豆

麦編 施肥追肥

(2021年10月 改訂)

はじめに

●ムギ類は、冬作物なので栽培期間が長く、肥切れを起こしやすい特徴があります。
●基肥だけでなく、栽培期間中に養分、特に窒素を適当な時期に追肥すると、ムギの収量や品質を高めることができます。
●窒素をいくつかの時期に分けて施用することによって(分施)、施肥効率(施肥した窒素のうち作物に吸収される割合)が高まります。コストの削減にもなります。
●適切な溶出パターンの肥効調節型肥料を用いることで、総施肥量や追肥回数を減らすとともに、肥料成分の圃場外への流亡を防ぐことができます。

追肥時期

●追肥は、それぞれの生育ステージに、目的に応じて行います
●収量構成要素(穂数、1穂あたり小穂数、1小穂あたり小花数、小花の稔実歩合、一粒重)や子実タンパク質含有率の決定時期に適切量の追肥を行うことで、収量や品質を上げることができます。

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図1 麦の生育ステージ 盛岡における生育の例 注)各地域やそのときの気象条件によって生育ステージの進み方が異なります。

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 :小穂分化前期のコムギの幼穂
 二重隆起ができることで穂に分化する。これ以降を幼穂形成期とよぶ。幼穂長は約1mm
 :頴花分化前期のコムギの幼穂
 節間伸長が急速に始まった頃の幼穂。幼穂長は約3mm


「融雪後追肥」「起生期追肥」「分げつ期追肥」「つなぎ肥」 *地域によって呼び名が異なります
●融雪後追肥・起生期追肥は、主に寒地で長い冬の生育停滞期のあとのリスタートのために行います。
●分げつ期追肥・つなぎ肥は、秋~冬に雨の多い、または冬期間中も成長が進む暖地で肥料補給のために行います。

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融雪直後の小麦の様子(岩手県内) 雪腐病が発生し、葉色が低下している

「穂肥」
●節間伸長が始まる幼穂形成期から茎立ち期に施用します。
●この時期の追肥は穂数と1穂粒数を増やします。
●稈長を長くするので、倒伏には注意します。

「実肥」
●止葉展開期から開花期頃の追肥は、子実を充実させます。
●1粒重、容積重、子実タンパク質含有率を上げる効果もあります。
●実肥により外観品質の低下や、小麦粉の白さや明るさが低下する場合があるので、注意します。
●製パン用や中華めん用、醸造用のコムギなど、子実タンパク質含有率が高いことが特に求められるものでは、遅い時期に追肥すると効果が高くなります。逆に、日本めん用のコムギは、開花期以降の追肥は避けます。

追肥量

●追肥量は、必要とする全窒素量を、いつの時期に何回に分けて行うかという視点で決めると、過剰施肥を防ぐことができます。
●正常に生育したコムギの場合は、窒素吸収量が増えると子実収量が増えるという試算があります。
●さらに施肥効率も加味して、実際に施用する窒素量を増やします。
●地力や、堆肥由来の窒素量によっても、変わってきます。
●一般に、秋播の麦では、麦がまだ小さくて多くの窒素を吸収できないこと、冬期の積雪や降雨で窒素が流失することから、基肥の施肥効率は高くありません。
●生育が進み、気温が高くなってからの追肥は、基肥よりも施肥効率が高めです。
●気温が高くなると土壌からの窒素供給が増えるので、地力の高い土壌では、その分の減肥を行わないと、倒伏などの原因となります。
●品種や地域によっても、追肥量と子実収量の関係が異なります。
●追肥時期や量については、地域の普及指導センターなどの情報を参考にしてください。

「追肥重点型施肥」
●麦生育時期別に窒素要求量にあわせて基肥量を減らし、特に要求量が高まる節間伸長期を中心に追肥量を増やす施肥方法です。単収が高いヨーロッパ等で一般的な施肥法です。
●茎立期以降の乾物生長量が大きくなることで、穂数、1穂粒数、千粒重が増加し、収量の増加が期待できます。
●湿害が発生して減収しやすい圃場でも、比較的高い収量が得られます。
●成熟期が数日遅れたり、外観品質が低下することがあります。
参考文献:日本作物学会紀事2016:85(4) 373-384 渡邊ら

追肥上の注意点

●粒状の肥料は、降雨がないと作物に吸収されず、効果がでないことがあります。
●肥効調節型肥料を使って追肥する場合は、土入れなどを合わせて行うと、追肥効果がでやすくなります。
●晩期に追肥する場合は、赤カビ病防除と同時に行う尿素などの葉面散布で追肥することもできます。
●葉面散布では、濃度の濃い溶液を散布すると肥料焼けを起こすので、尿素溶液は2%程度にします。そのため、一回の散布で施用できる窒素の量は、限られます。

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乗用管理機による開花期追肥

執筆者 
島崎 由美
農研機構 中日本農業研究センター水田利用研究領域

池永 幸子
農研機構 東北農業研究センター畑作園芸研究領域

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