提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ

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農作業便利帖


麦・大豆

麦編 播種法

(2021年12月 改訂)

はじめに

●麦類の高品質、安定生産を図るためには、適期に播種を行い、良好な出芽と初期生育の確保が重要です。
●手作業で播種する場合と、トラクタと播種機を使用する場合があります。複数の播種法があるので、作付体系や圃場条件を考慮して選択します。

手作業で播種する場合

「条播」「すじ播き」
●手播きの場合(条播)と(図1)、手押し式播種機(すじ播き)を用いる場合(図2)があります。

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 :図1 鍬幅に手播きで条播(長野県松本市)
 :図2 手押し式播種機によるすじ播き(長野県南佐久郡)


●事前に前作の残さを鋤き込み、炭酸苦土石灰などの土壌改良資材、基肥を散布し、耕起・整地しておきます。
●手播きの場合の多くは、鍬幅に播種溝をつくり、播種後に足や鍬などで覆土をし、足で鎮圧します。
●手押し式播種機を用いる場合は、溝切り、播種(すじ播き)、覆土、鎮圧ができるので簡便です。
●いずれの場合も、除草剤を播種後に散布しない場合は、雑草防除が必要となるため、中耕がしやすいように条間を設定します。
●播種量は、地域、品種、播種時期、播種法によって変わります。例として、長野県内で10月下旬に条間30cmで、100粒で4g程度の種子をすじ播きする場合は、30cmに20粒が目安です。鍬幅播きで条間60cmの場合は、30cmに40粒が目安です(10a換算で8.8kg播種に相当)。

「散播」「全面全層播き」
●種子と肥料を動力散粒機などで均一に散布した後、ロータリやハローにより深さ5cm程度で撹拌する方法です。
●事前に前作の残さを鋤き込み、炭酸苦土石灰などの土壌改良資材を散布し、耕起・整地しておきます。
●播種量は、後述のドリル播きより2割程度増量します。
●ドリル播きに比べ、導入する機械が少なく経済的ですが、播種深度が不安定で、出芽、生育が不ぞろいになること、凍上害や倒伏が発生しやすいという欠点があります。

トラクタと播種機を使用する場合

「ドリル播き」
●生育、収量を安定して確保できる省力的な播種法で、国内のほとんどの麦作農家が、この方法で播種しています。
●事前に前作の残さを鋤き込み、炭酸苦土石灰などの土壌改良資材を散布し、耕起・整地しておきます。
●播種の際に、播種のみ行う場合と、耕起を同時に行う場合に分かれます。
●ドリルシーダは、高速(10km/h程度)で精密に播種が可能で、平坦地の大規模経営体に適した播種機です。施肥機のアタッチメントもあり、側条施肥が可能です(図3)

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図3 ドリルシーダによる播種(スガノ農機株式会社提供)

●耕起しながら播種する場合は、ロータリやドライブハローの後ろに播種機(以下、「ロータリシーダ」という)を搭載します。施肥機や除草剤散布機の搭載も可能です。
●播種機には、接地した車輪(駆動輪)が播種機の動力となるタイプ(図4)と、運転席から操作可能なモータによって車速と播種量が連動するタイプ(図5)があります。

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 :図4 ロータリシーダ(駆動輪タイプ)による播種(長野県安曇野市)
 :図5 ロータリシーダ(車速連動タイプ)による播種(長野県須坂市)


●ロータリのタイプは、正転(ダウンカット)と逆転(アップカット)に分かれ、多くはダウンカットロータリが使われていますが、砕土性が高く、播種時に畝立てをし、排水性を高めるアップカットロータリによる播種法も普及しています(後述)。
●シーダの間隔(条間)は20~30cm、播種深度(ディスクの深さ)が3cm程度になるよう、シーズンの初めに確認しましょう。特に、駆動輪が動力となるタイプは、駆動輪が接地・回転しないと播種されないため、ロータリと播種機の位置調整を確実に行いましょう。
●播種量は、地域及び播種時期によって異なりますが、長野県の10月下旬播種では、8kg/10aを基準とし、11月播種では10kg/10a程度としています。地域の目標茎数及び穂数に応じた播種量としましょう。

「耕うん同時畝立て播種」
●アップカットロータリの砕土性の高さを活用した、ドリル播きの一種です(図6)。両サイドの爪の配列を内向きにすることで、耕起、畝立て(高さ10~15cm程度)、施肥、播種を一工程で行うことができます。

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図6 耕うん同時畝立て播種による小麦の播種(長野県松本市)

●基本的に事前の耕起が不要で、通常、耕起後の多雨で機械播種が困難な場合や、排水不良な水田転換畑において有利な技術です。ただし、通常のロータリシーダより作業速度が劣り、枕地など前作の残さが溜まっている箇所は、耕起・播種精度がやや劣る傾向があるため、チゼルプラウなどで事前に簡易耕起をしておくと、作業速度、耕起・播種精度が向上します。

「不耕起播種」
●事前に耕起をせず、専用の不耕起播種機を用いて播種する方法です(図7)。水稲の乾田直播、大豆などへの汎用利用も可能であり、ドリルシーダ並みに作業速度が速いため、作業体系の省力化が期待できます。

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図7 高速汎用播種機による不耕起播種(松山株式会社提供)

執筆者
宮原 薫
長野県農業試験場作物部主任研究員

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