大豆編 病害防除
(2024年6月 一部改訂)
はじめに
●大豆にはさまざまな病気があります。
●病気の区別は容易ではありませんが、防除には正しい診断が必要です。
●株全体が枯れ上がる立枯性病害で重要な病気には、「茎疫病」「黒根腐病」「白絹病」があります。
●種子の品質低下を引き起こす重要な病気には、「紫斑病」「モザイク病」「べと病」があります。
●その他、「さび病」「菌核病」「褐色輪紋病」等の糸状菌による病害、「葉焼病」「斑点細菌病」等の細菌による病害、「萎縮病」「わい化病」等のウイルスによる病害があります。ここでは、「葉焼病」「さび病」について紹介します。
立枯れをおこす病気
「茎疫病」
●日本各地で発生が確認され、病原性が異なる多くの茎疫病菌系統が知られています。
●主に水田転換畑で発生し、排水不良による冠水・滞水により発生が多くなります。
●耕起回数が少ない場合や、不耕起栽培によって土壌表面が硬くなり滞水しやすい圃場で、発生が助長されます。
●発芽前から莢肥大期まで、生育期間全体を通じて発生します。
●若い株ほど発病しやすく、茎の褐変が地際部から上方に広がり、やがて枯死します。
●主茎の地際部や根部に茶褐色や暗褐色の病斑が生じ、のちに茎全体を覆います。
●枯死した病斑部には白色の菌叢が生じますが、二次寄生菌により淡紅色~灰褐色に変色していることがよくあります。
●根は褐変するが、側根が残っていることが多く、「黒根腐病」によって生じるゴボウ根状態にはなりません。
●土壌伝染性の重要病害で、土や罹病残渣の中に形成される卵胞子が、次作以降の伝染源(一次伝染源)となります。
●卵胞子は、土や罹病残渣の中で長期間生存します。
●卵胞子より発芽・伸長した菌糸に遊走子嚢が形成され、その内部に遊走子が形成されます。
●遊走子嚢が水に浸かると遊走子が放出され、遊泳して大豆根や地際部の茎に到達し感染します。
●発病した大豆株で再び遊走子嚢が形成され、水媒伝染によって二次感染を繰り返します。
●圃場抵抗性に品種間差がありますが、完全な抵抗性ではないため、条件によっては多発する場合があります。
●茎疫病菌の病原性に分化が認められるため、病原菌の系統によっては真性抵抗性をもつ品種でも発病します。
●干ばつ対策のための潅水により発病が助長される場合があります。
左上 :出芽直後の罹病個体(提供 :元農研機構中央農業総合研究センター 加藤 雅康)
右下 :茎疫病罹病個体と枯死個体(提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
茎疫病発生大豆圃場での罹病および枯死個体
茎疫病罹病個体の根際部(左上)と地際部病徴(右下)
(左写真提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
培地中に形成された卵胞子(左上)と遊走子嚢から放出された遊走子(右下)
(右写真提供 :元農研機構中央農業総合研究センター 加藤 雅康)
<対策>
●暗渠や明渠の設置圃場を利用するほか、弾丸暗渠等の補助暗渠、額縁明渠、心土破砕を施工する等の排水性改善対策を行います。
●干ばつ対策のための灌水が圃場内に滞水する場合は、速やかに排水します。
●畝立て播種(栽培)することで発生を軽減できます。
●播種深度が深いほど生育初期の発病が多いことから、適正な深さに播種します。
●土壌中の菌密度を低く保つため、連作は避け輪作します。
●有機肥料やカリ肥料は発生を助長するので、施用を控えます。
●カルシウム資材や亜リン酸肥料の施用は発生を軽減します。
●土壌pHが低いと発病しやすいので、石灰質資材を用いてpHを6以上(pH6.5程度)に矯正します。
●播種前の種子処理および生育期に使用できる殺菌剤が登録されています。
●殺菌剤で種子処理して播種すると、茎疫病に対し特に弱い生育初期の発病が減り、苗立ちが向上します。
●茎疫病に強い品種において病気が多発する場合は、品種や作型を見直す、その他防除法を併用する等の対策が必要です。
●健康診断に基づく土壌病害管理(ヘソディム)マニュアルに掲載されている土壌の健康診断に基づくダイズ茎疫病対策マニュアルも参照ください。
▼健康診断に基づく土壌病害管理マニュアル】
▼土壌の健康診断に基づくダイズ茎疫病対策マニュアル
「黒根腐病」
●日本のほぼ全域で確認されており、特に東北地方や北陸地域で問題視されています。
●水田転換畑のような土壌水分の高い圃場、例えば排水不良、地下水位が高い、グライ層が浅い位置にある圃場において多発する傾向があります。
●倒伏軽減のための摘心処理で多発することもあります。
●土壌伝染性の重要病害で、土や罹病残渣の中に残った微小菌核が、次作以降の伝染源(一次伝染源)になります。
●宿主植物がない環境に微小菌核が残存すると、低温や乾燥により徐々に感染能力が低下しますが、少なくとも7年以上生存することが知られています。
●播種直後から感染しますが、初期の症状は不明瞭なため感染・発病を早い段階で検知するのが困難です。
●開花期以降に葉が早期に黄化する、葉脈の間に黄色~灰褐色の斑紋(退緑えそ斑)が形成される症状が生じ、正常な株よりも早く落葉します。通常、開花期以降に症状がでますが、明瞭な病徴が生じない場合もあります。
●地際部には、赤褐色の子嚢殻と呼ばれる粒子が形成されることがあります。
●病気がひどくなると、支(側)根が腐って脱落するため根量が著しく減少し、直根だけが残るゴボウ根状態となり、株は簡単に引き抜けるようになります。
●重症化すると枯死する場合がありますが、軽症個体では、早期黄化により熟期が早まる程度で収穫に至ります。このため枯死個体が少ない場合でも、圃場全体の枯れあがりが不斉一となり適期の収穫作業が困難になります。
●発病株では着莢数・粒重の減少による収量の低下、小粒化やしわ粒による品質の低下が生じます。
黒根腐病発生圃場 (左上写真提供 :農研機構植物防疫研究部門 越智 直)
黒根腐病罹病植物(左上)と葉に生じる退緑えそ斑(右下)
地際部に形成された子嚢殻(左上・中央)とゴボウ根状態になった根の病徴(右下)
(提供 :農研機構植物防疫研究部門 越智 直)
<対策>
● 暗渠や明渠の設置圃場を利用するほか、弾丸暗渠等の補助暗渠、額縁明渠、心土破砕を施工する等の排水性改善対策を行います。
● 遅播きすると発病が少なくなります。
● 中耕や培土をしないと発病が少なくなります。ただし、畝間を狭くしたり生育期除草剤を使ったりする等、中耕に代わる除草対策が必要です。
● 大豆連作により発病しやすくなるため、水稲と輪作します。
● 発病が多い圃場では、水稲作転換後の水稲連作期間を伸ばします。
● 3年程度水田に戻し、湛水すると、菌の密度が下がります。
● 畝立て播種(栽培)も効果的です。
● 播種前の種子処理および生育期に使用できる殺菌剤が登録されています。
● 抵抗性に品種間差異がありますが、完全な抵抗性品種は認められていません。
● 診断に基づく大豆栽培改善技術導入支援マニュアル及びダイズ黒根腐病のリスク診断・対策マニュアルも参照ください。
▼診断に基づく大豆栽培改善技術導入支援マニュアル
▼ダイズ黒根腐病のリスク診断・対策マニュアル
「白絹病」
●日本では比較的温暖な西日本エリアで発生が多く見られます。
●壌土~砂質土に分類される排水性の良い土壌で多く発生します。
●発芽前(出芽阻害)から莢肥大期まで、生育期間を通じて発生します。
●発病は主に地際部で起こり、罹病株の地際部から白い菌糸が上方に伸び、茎を覆います。また薄紅~褐色の小さな菌核を形成します。
●淡褐色の褐変が茎の地際部から上方に広がり、枯死します。
●土壌伝染性の重要病害で、土壌中の罹病残渣やその周辺に形成される粟粒大で褐色球形の菌核が次作の伝染源(一次伝染源)になります。
●菌核は土壌が乾燥している場合に越冬しやすく、水分の多い土壌中では、ほとんどが死滅します。
●日本の圃場において、病原菌は菌核と菌糸にて生活環を全うし、好条件下の菌核は約4~5年生存することができます。
白絹病罹病個体(提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
白絹病罹病個体の根際部の菌糸(左上)と菌核(右下)(提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
白絹病罹病個体を覆う白色の菌糸と茶色の菌核
(提供 :元農研機構中央農業総合研究センター 加藤 雅康)
<対策>
●病原菌は腐生能力に富み、稲わらや麦稈等の粗大有機物が多いところで増殖し感染源となるので、可能であれば麦稈を焼却処理します。
●完熟していない堆肥等の未熟有機物の施用や前作麦稈の鋤込みは、発生を助長するため注意を要します。
●播種前の1カ月間の湛水処理で、菌核の死滅を促進することができます。
●播種時から土壌を耕さない不耕起栽培で発生が減少します。
●連作は発生を助長するため、水田転換により湛水することで、病気の発生が減少します。
●中耕培土は病気の発生を助長するので、発生圃場や病原菌密度が高い圃場では培土を控えます。
●収穫後の石灰資材散布による高土壌pHへの調整および深耕天地返しによる菌核の深い位置への埋没処理は、越冬菌核の死滅促進に有効です。
●作付前の土壌燻蒸剤および播種前の種子処理、生育期に土壌潅注や株元散布で使用できる殺菌剤が登録されています。
種子の品質を低下させる病気
「紫斑病」
●農林水産大臣による「指定有害動植物」として指定されており、発生予察調査等の対象となっています。
●東北地方、関東地方、北陸地域を中心に、日本全国で発生します。
●葉、茎、莢および種子を含め地上部全てに病斑を形成しますが、紫斑粒(子実の病斑)を除いて目視のみで診断することはできません。
●莢が伸長する頃から葉に紫色がかった赤褐色の病斑を形成しますが、特徴のある病斑ではなく、他の病害による病徴と識別するのは困難です。
●子実の紫色の病斑はへそを中心に生じることが多く、発病が著しい場合、紫色の斑紋が種皮全体に広がり、大きく品質を損ねます。
●発生は気象条件の影響が大きく、莢肥大期以降に降雨が多いと多発します。
●刈り遅れたり、収穫後も湿度が高い条件下で放置したりすると紫斑粒が増加します。
●罹病した作物残渣や種子が感染源となります。
●紫斑粒は発芽不良を引き起こします。
●降雪量が少なく、圃場地表面が比較的乾燥している西日本エリアでは、罹病種子だけでなく、圃場に放置された罹病した植物残渣も一次伝染源と考えられます。
●品種によって抵抗性に差がありますが、完全な抵抗性を有する品種は認められていません。
紫斑粒(提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
紫斑病罹病葉(提供 :元農研機構中央農業総合研究センター 加藤 雅康)
<対策>
●種子伝染を防ぐため、健全な種子を使います。紫色の斑紋が現れていない場合も感染していることがあるため、発病圃場から採取した種子の使用は避けます。
●菌の生存率低下を促すため、収穫後の耕耘により罹病残渣を土中に埋没させます。
●適期収穫し、収穫後の種子は速やかに乾燥します。
●播種前の種子処理および生育期に使用できる殺菌剤が登録されています。
●播種前に殺菌剤を種子処理すると、出芽率を高め初期生育が良くなるとともに、初期の伝染源を減らすことができます。
●子実への感染につながる開花2~6週間後に、殺菌剤を1、2回散布しますが、薬剤耐性菌の発達を防ぐために、成分が同じ薬剤の連続使用は避けます。
●ベンゾイミダゾール系(MBC)殺菌剤(ベノミル剤やチオファネートメチル剤、FRACコード:1)に対する耐性菌が発生している地域では、ベンゾイミダゾール系以外の殺菌剤に切り替えます。
●アゾキシストロビン剤の効力が低下している圃場では、QoI殺菌剤(FRAC コード:11)の使用を中止し、他系統の薬剤に切り替えます。
●アゾキシストロビン剤の効力が低下していない圃場では、QoI殺菌剤の使用回数を制限し使用します。
「モザイク病」
●ダイズモザイクウイルス(SMV)等数種のウイルスにより引き起こされることが知られていいますが、ここでは主にSMVについて紹介します。国内ではA、A2、B、C、D、Eの6つの系統が知られ、地域によって発生系統が異なります。
●種子伝染またはアブラムシ類の媒介により感染し、若い葉に濃い緑と薄い緑の入り混ざったモザイク症状が現われます。さらに症状が進むと葉がちりめん状に萎縮します。
●生育が旺盛になる夏頃になると病徴ははっきりしなくなりますが、発生状況によっては10~75%の減収となります。
●感染した種子には褐色~黒色の斑紋が生じ(褐斑粒)、品質が低下します。
●SMV同様、褐斑粒の原因となるインゲンマメ南部モザイクウイルス(SBMV)はハムシ類でも媒介されます。
●被害程度には品種間差があり、抵抗性品種の育成も進んでいます。
●SMVのA~D系統に対する抵抗性品種に褐斑粒が生じる場合は、SMV以外のウイルスが原因である可能性があります。
感染葉に生じたモザイク症状(提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
様々な褐斑粒
葉の症状等は「品種と栽培型」の項を参照
(提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
<対策>
●種子伝染するため、発病圃場から採取した種子の使用は避け、健全株から採種した無病種子を使用します。
●大豆圃場周辺の豆科植物を除去します。
●大豆の生育初期に、ウイルスを媒介するアブラムシ類の防除を徹底します。
●関東南部等の発生地域では、ウイルスを媒介するハムシ類の防除を行います。
●抵抗性品種を作付けします。「里のほほえみ」「シュウレイ」「あやこがね」等はSMVの主な系統に抵抗性を有しています。
●発病株は、早期に抜き取り除去します。
●直接ウイルスを抑制する効果のある薬剤はありません。
「べと病」
●多雨や多湿の条件下、密植や過繁茂で風通しが悪い時に発生が多くなります。
●生育期に、葉表に黄色の斑点が形成され、大きくなると病斑の中央部は灰色になり周縁部は褐色に縁どられます。
●葉に生じる病斑の裏面には、汚(灰)白色の菌糸を形成します。
●種子には、白い紙(マット)状の病原菌(菌糸と卵胞子が絡まったもの)が付着するため、品質を著しく低下させるとともに、種子伝染します。
●種子上の病徴は、白大豆ではあまり目立ちませんが、黒大豆ではよく目立ちます。
●収量への影響は少ないものの、小粒化と品質低下を引き起こします。
●被害が甚だしい場合、早期落葉します。
●圃場内の罹病残渣や感染種子上に形成された卵胞子で越冬し、次作の伝染源になります。
●生育期間中、発病個体の病斑上に形成される分生子が風雨によって飛散し、二次伝染を繰り返します。
●抵抗性の品種間差が報告されており、「里のほほえみ」等は罹病しやすいことが知られています。
葉(左上:裏面、右下:表面)に生じたベと病の病斑(提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
子実に付着したべと病菌(提供 :元農研機構中央農業総合研究センター 加藤 雅康)
<対策>
●種子伝染するため、発病圃場から採取した種子の使用は避け、健全株から採種した無病種子を使用します。
●罹病残渣は圃場に残さず、焼却等により適切に処分します。
●多発圃場での連作を回避します。
●早播きを避け、適期に播種します。
●密植を避け、風通しを良くします。
●生育期に使用できる殺菌剤が登録されています。
●殺菌剤を開花期前後(一般的には「開花10日前から子実肥大期)に散布し、発生状況を勘案しながら必要に応じて追加防除します。
●薬剤耐性菌の発達を防ぐために、成分が同じ薬剤の連続使用は避け、複数剤のローテーション散布を行います。
●アゾキシストロビン剤の効力が低下している圃場では、QoI殺菌剤(FRAC コード:11)の使用を中止し、他系統の薬剤に切り替えます。
●アゾキシストロビン剤の効力が低下していない圃場では、QoI殺菌剤の使用回数を制限し使用します。
そのほかの病害
「葉焼病」
●北陸~関東以南での発生が多く、通常8月頃から発病が認められます。
●細菌による病害で、風雨により飛散し、葉の傷口や気孔から病原菌が侵入します。
●雨が多い年や台風後に発生しやすい病害です。
●開花期頃より収穫期前まで発生し、発病初期には、葉の表面に淡緑~淡赤褐色の小斑点が形成されます。一方、裏面では、中央部が隆起しコルク状になった褐~黒色の病斑を形成し、周りに淡い黄色ハローを伴う症状が見られます。
●被害茎葉で越冬して感染源になるほか、罹病種子も感染源となります。
●発病が激しくなると葉全体が茶色く変色・枯死し、小粒化・減収を引き起こします。
葉に形成された葉焼病の病斑(左上)と罹病個体の症状(右下)
(左写真提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
葉焼病発生圃場
<対策>
●連作を避け、大豆の栽培間隔が2年以上の適切な輪作を行います。
●種子伝染するので、種子更新を行います。
●被害茎葉等残渣は、可能であれば焼却処理します。
●抵抗性の強い品種を選択します。「すずかれん」「すずおとめ2号」等が抵抗性のほか、「フクユタカ」等は比較的強いことが分かっています。
●生育期に使用できる殺菌剤が登録されています。
●多発生の場合は、発生初期(開花期頃)に薬剤防除を行います。生石灰、硫酸銅、撒粉ボルドー、Zボルドー、バリダシン液剤、フェスティバルC等の薬剤がありますが、ジメトモルフ・銅水和剤(FRACコード:40、M1)の効果が高いとの報告があります。
「さび病」
●近年米国やブラジル等で大発生し、大きな問題となっています。
●日本では、特に関東以西で、夏の終盤から秋にかけて発生が顕著になりますが、発生に適した条件となる期間が短いため、収穫に影響を及ぼすほどの被害は、ほとんど見られません。
●生きた宿主植物上でのみ生存できる病原菌(絶対寄生性の糸状菌)により引き起こされます。
●日本では、大豆等数種の豆科植物において、さび病菌の夏胞子世代および冬胞子世代が確認されています。その他の胞子世代は見つかっておらず、その生活環の全体像は明らかになっていません。
●好条件下であれば、クズ等永年性の豆科植物で越冬し、一次伝染源になる可能性があります。
●さび病菌は、大豆のほかクズやツルマメ等の豆科植物に感染し、極めて広い宿主範囲を有します。
●日本では主に、成熟した葉、葉柄や茎に発生し、初期には灰(淡)褐色、のちに茶褐色の小斑点が葉の裏面に生じます。葉の表面から病斑を見つけることは困難です。
●症状が進むと、感染部位が盛り上がって半球形の夏胞子堆を形成し、中から球形から楕円形で、無色~淡褐(黄白)色の夏胞子が放出され飛散します。
●生育期間中、発病個体上に形成される夏胞子によって二次伝染を繰り返します。
●被害葉は黄化・脱落して着莢数や百粒重の減少を引き起こし、大幅な減収に至ります。劇症の場合、ほとんどの葉が落葉し、枯死に至る場合もあります。
●完全抵抗性の品種はありませんが、品種間で抵抗性に差があり、「フクユタカ」等は比較的強く、「エンレイ」「アキシロメ」等は弱いことが知られています。
さび病罹病個体の葉の病徴(左上)と、さび病発生圃場(右下)(写真提供 :筑波大学生命環境系 山岡 裕一)
さび病罹病葉の裏面に生じた病斑と病斑上の夏胞子堆から放出された夏胞子
(左写真提供 :(株)クボタ 羽鹿 牧太)
左上 :さび病罹病葉の顕微鏡観察
右下 :複数の夏胞子堆が形成された単一病斑と放出された夏胞子
さび病菌の夏胞子(左上)と発芽胞子(右下)
<対策>
●宿主となるクズ等の野生の豆科植物を除去します。
●生育期に使用できる殺菌剤が登録されています。
●早期に発生が見られる場合は、ペンチオピラド水和剤(SDHI、FRACコード:7)等登録のある薬剤を散布します。
●被害茎葉等の植物残渣は、翌年の伝染源となる可能性があるので処分します。
●毎年発生が見られる地域では、「フクユタカ」等の比較的罹病しにくい品種を栽培します。
農薬の使用にあたっては、必ず商品ラベルの記載事項を確認してください。農薬の効力が低下している、または耐性菌が発生している地域では、対象薬剤の使用を隔年とする等、使用を制限している場合があります。詳しくは、独立行政法人農林水産消費安全技術センターのウェブサイト等で最新の情報を確認するか、最寄りの農業改良普及センターや農協等にお問い合わせいただき指導に従ってください。
赤松 創
農研機構 本部事業開発部(西日本農業研究センター)
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