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野菜編:果菜類

在来品種の紹介【香酸カンキツ編】

在来品種が見直されています

 国産農産物の見直しは年々高まっている。そうした中で、各地に受け継がれている伝統野菜が人気です。
 ここでは在来品種として各地で栽培される「香酸カンキツ」を取り上げます。それぞれ特徴ある由来や栽培方法、食べ方、また、関心が高まる機能性等を含めて紹介します。

へべす


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へべす (宮崎県日向地域)

●特徴と由来
 「へべす」(Citrus heibei hort. ex. hatano)は、宮崎県日向地域で古くから栽培されている香酸カンキツです。名前は、江戸末期に日向市の長宗我部(ちょうそかべ)一族の平兵衛(へいべえ)さんが原木を栽培していたことに由来します。当時は婚礼の習わしとして、嫁ぎ先に苗木を持たせ、果実が結実するようになると、料理の隠し味として使っていたと伝えられています。
 果実は、果皮色が鮮やかな緑色、果径が45mm前後で、同じ香酸カンキツ類のスダチより大きくカボスより小さいです。また、果皮が薄く、種も少なく、果汁が豊富であり、食味はさわやかな香りとまろやかな酸味があります。消費者からも「他の香酸カンキツと比較しても使いやすい」と好評です。
 さらに、果実中には機能性成分のナツダイダイン(フラボノイドの1種)が豊富であり、ユズの約37倍も多く含まれています(果実日本2003年6月号記載)。

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新姫


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新姫 (三重県熊野市新鹿町)

●由来と特徴
 「新姫(にいひめ)」は三重県熊野市新鹿(あたしか)町に自生していた香酸カンキツ類です。熊野市では野生の「タチバナ」を市天然記念物として指定していましたが、現在の「新姫」も昭和45年に「タチバナ」の変種として追加指定されています。熊野市教育委員会が発行した記念物記載書には「(前略)降霜期に入ると酸味が減り、小児は喜んで食する。また、生花として珍重されている」との記載があります。その後、国の調査で「ニホンタチバナ」と他種の交雑種であることがわかりました。
 平成9年に新品種として登録されました。「新姫」は当地方では5月上旬に開花、1月上旬に完全着色します。果実重は約30gで、12月下旬には糖度11.6%、クエン酸濃度4.5%になります。「タチバナ」と比べて、果実は大きく、果皮の赤みが強いのが特徴です。

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ジャバラ


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ジャバラ (和歌山県北山村)

●特徴と由来
 ジャバラは香酸カンキツの一種で、果実の重さは120~170g、表皮は油胞のくぼみが荒く、ユズと松ヤニに似た特有の香気があります。自家不和合の不完全な単為結果性で種子はありませんが、他のカンキツが近くに植栽されていると種子が入ります。樹勢は比較的強く、葉には翼葉があり、枝は立ちぎみでトゲはありません。花芽はつきやすく早い樹齢から着果します。北山村では5月中下旬頃に満開を迎えます。
 原産地の和歌山県北山村では江戸時代の頃からこの地で食されていたとされており、昭和54年11月種苗法により以前からこの地で呼ばれていた「じゃばら」の名称で品種登録されました。じゃばらの名前は「邪 (じゃ)」を「祓(はら)う」ところから名付けられたともいわれています。

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ユコウ


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ユコウ(徳島県上勝町)

●特徴
 ユコウは、ミカン科ミカン属に属する。ユズとダイダイの自然交雑種といわれており、漢字では「柚香」もしくは「柚柑」と表記されます。
 果実は扁球形で果頂部がくぼみ、果面はユズより滑らかですが、果実中央から果頂部にかけて大きなしわが多数あります。果実によってはユズに近い外観となります。

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長門ゆずきち


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長門ゆずきち (山口県萩市田万川地域)

●特徴
 「長門ゆずきち」は、山口県萩市田万川地域で古くから栽培されてきた香酸カンキツです。果実はゴルフボールよりやや大きめで緑が美しく、露地栽培で8月中旬から10月上旬まで生果の出荷が行われます。
 まろやかな酸味と果汁が多いのが特徴で、さまざまな料理とあわせやすいです。
 また、樹勢は強いものの結果樹齢に達するのは早く、耐寒性はユズと同様とされています。

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ゆうこう


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ゆうこう (長崎県土井首地区・外海地区)
(長崎県農林技術開発センター果樹研究部門提供)

●由来
 「ゆうこう」は、現在、長崎市南部の土井首(どいのくび)地区と北部の外海(そとめ)地区といった限られた地域に、わずか100本ほどの自生が確認されている香酸カンキツです。
 自生している地域は隠れキリシタンと深く関わりがあり、「ゆうこう」は「キリシタンが伝えたのではないか」といわれるなど、歴史的興味を抱かせる説もあります。幕末から明治にかけて多くの外国人が長崎を訪問、居住しており、その頃使われていた「だいだい」に変わる調味料として甘みがあり洋食に適していたことから「ゆうこう」が広く栽培されるようになったとも言われています。

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じゃぼん


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じゃぼん (広島県東広島市安芸津町)

●特徴と由来
 「じゃぼん」は、広島県の瀬戸内海沿岸に位置する東広島市安芸津町周辺において100年前から栽培されていると言われていますが、詳しい来歴は解っていません。自家消費用として庭先や畑の隅に1、2本植えられ、果汁が市販酢の代用として使われてきました。
 他の香酸カンキツに比べて比較的大玉(約200g)で果汁が多く、鳥獣被害、寒害に遭うことはほぼ皆無で、独特の香りを有し、貯蔵性が高いことが知られています。
 果汁の風味がまろやかで、12月には糖度が11度を超え、クエン酸は5%程度になります。

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