提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ

農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

農作業便利帖


野菜・果樹

在来品種の紹介【キュウリ編】

在来品種が見直されています

 国産農産物の見直しは年々高まっています。そうした中で、各地に受け継がれている伝統野菜が、いま人気です。
 ここでは、在来品種として日本各地で栽培される「キュウリ」を取り上げ、それぞれ特徴ある由来や栽培方法、食べ方、産地の動向などを紹介します。

加賀太きゅうり


2021dento_kagafuto1.jpg
加賀太きゅうり(石川県)

●特徴と由来
 加賀太きゅうりは、15品目ある「加賀野菜」のうちの⼀つである。⻑さはおよそ24cm、直径6cm、重さが600gと⼀般的なキュウリの4~5倍もある俵型のキュウリである。果皮は濃緑色で硬く、果肉は厚く柔らかい。そのため、通常は皮を剥いて煮物などで⾷べることが多い。
 昭和11年頃に⾦沢市の篤農家・米林利雄氏が、福島県の農家から種⼦を譲り受けて栽培したのが起源とされる。導⼊当時のものは現在よりも黄色く、形もずんぐりとしており、煮物などで家庭消費されていた。このキュウリが、当時地元で栽培されていた節成り品種と自然交配し、色が緑色に、形も変化して現在の加賀太きゅうりとなった。

▼「加賀太きゅうり」をさらに詳しく知りたい方はこちら

黒滝白きゅうり


2021dento_kurotakishiro1.jpg
黒滝白きゅうり (奈良県吉野郡黒滝村)

●特徴と由来
 黒滝白きゅうりは、奈良県吉野郡黒滝村で栽培されており、江戸時代から現在まで種子が受け継がれてきた。収穫適期の果実は全体が白色で、長さは約13cmで一般のキュウリと比べてやや短く、重量は約80gである。えぐみがなく、皮が薄く、コリコリした食感が特徴である。
 戦前から県内で生産が確認されている品目として、平成26年度に「大和の伝統野菜」として県から認定された。

▼「黒滝白きゅうり」をさらに詳しく知りたい方はこちら

美馬太きゅうり


2021dento_mimafuto1.jpg
美馬太きゅうり(徳島県美馬市)

●特徴と由来
 美馬太きゅうりは美馬市の在来種として作り継がれてきたキュウリで、普通のキュウリに比べて太く丸い形をしており、重さは500~800gになる。皮は固いためむき、縦2つに割り、種を取り除いてから調理に用いる。形が崩れにくいので、生食だけでなく煮たり炒めたりしてもおいしく食べることができ、冷や汁や漬物等、地域の伝統料理の中で親しまれてきた。

▼「美馬太きゅうり」をさらに詳しく知りたい方はこちら

毛馬胡瓜


2021dento_kema1.jpg
毛馬胡瓜(大阪府南河内地域<)

●由来と特徴
 毛馬(けま)胡瓜は、毛馬村(現在の大阪市都島区毛馬町近辺)で江戸時代から栽培されていた半白系の黒いぼキュウリであり、文久3年(1863年)の「大阪産物名物大略」にも記載されている。早熟栽培が行われていたとされるが、どのような栽培法であったのかは記録が残っていない。
 果実は長さ約30cm、直径約3cmと細長い形状で、果か 梗こう部は淡緑色であるが、果頂部から約3分の2は淡緑白色となり、収穫適期には全体的にやや黄色味がかる。歯切れがよくパリパリとした食感があり、独特の苦みがあるため漬物用として珍重され、特に奈良漬けは他品種の2倍ほどの価格で取引されたといわれている。
 大正6年(1917年)の「農事調査」では、東成郡(現在の大阪市)と中河内郡(現在の東大阪市)で約89haの栽培面積があったと記載されている。しかし食生活の変化等により、昭和40年代頃から緑色が鮮やかで果皮の薄い白いぼ系品種に取って代わられ、毛馬胡瓜は自家用を除いて市場から姿を消した。

▼「毛馬胡瓜」をさらに詳しく知りたい方はこちら

勘次郎胡瓜


2021dento_kanjiro1.jpg
勘次郎胡瓜(山形県真室川町)

●特徴と由来
 勘次郎(かんじろう)胡瓜は、山形県北東部に位置する最上地域の真室川町で古くから栽培されている在来のキュウリである。長さ20cm前後、重量200gほどで収穫する。一般的なキュウリと比べると収量はやや少ない。茎葉の色は薄いが葉は大きく、不規則な飛び節成りの性質がある。果実はずんぐりとしていて、色は薄い黄緑色で黒いぼがある。水分が多く柔らかい食感で、食味はえぐみが少なく瑞々しい。
 最上地域では、現在も自家採種している地域特有の野菜・豆類などを「最上伝承野菜」として地域資源化を図っており、勘次郎胡瓜もその一つに認定されている。「勘次郎」という名は種を伝承してきた真室川町の姉崎勘次郎家の屋号からつけられた。明治の頃、姉崎家へ嫁いだ女性が嫁入りの際に種を持参したことが栽培の始まりである。

▼「勘次郎胡瓜」をさらに詳しく知りたい方はこちら

会津余蒔胡瓜


2021dento_aizuyomaki1.jpg
会津余蒔胡瓜(福島県会津地方)

●特徴と由来
 「会津伝統野菜」の一つに選定されている会津余蒔(よまき)胡瓜は、江戸時代から蔬菜の産地として知られる会津若松市門田町飯寺地区周辺で栽培されてきたキュウリである。「余蒔」には、余った種子を蒔いて育てたという説や、農家の女性が農作業を終え、余った時間に蒔いて育てたという説がある。かつては6月以降に畑に直接種子を蒔く栽培法だったが、現在はそれより早い4月頃に播種、5月中旬以降に定植し、6月下旬頃から収穫が開始される。
 果実はやや短形で、果色は全体的に淡緑色で霜降り状の模様となるのが特徴で、約18cmの長さで収穫した果実は皮が軟らかくて果肉の歯切れもよく、食味が優れる。さらに成長して20cm以上の長さで収穫すると、果皮はやや硬くなるものの果肉の食感は変わらず、キュウリ特有の香りが増す。

▼「会津余蒔胡瓜」をさらに詳しく知りたい方はこちら

糠塚きゅうり


2021dento_nukaduka1.jpg
糠塚きゅうり(青森県八戸市)

●特徴と由来
 糠塚きゅうりは、先人が藩政時代に参勤交代の途中で種子を持ち帰り、当時、野菜の供給を担っていた青森県八戸市糠塚地区に植えたことが始まりと言われている。一般的な細身のキュウリよりも薄い緑色をしており、形はずんぐりして太く短い。1株当たりの収穫量は10本程度と少ないが、標準的な収穫時の長さは約20cm、直径は約5cm、重さは約500gにもなる。独特のシャキシャキとした食感と苦みが最大の特徴である。

▼「糠塚きゅうり」をさらに詳しく知りたい方はこちら