伝統野菜の品種紹介 【ネギ編】
在来品種が見直されています
国産農産物の見直しは年々高まっています。
そうした中で、各地に受け継がれている伝統野菜が、いま人気です。
ここでは在来品種として日本各地で栽培されるネギを取り上げ、それぞれ特徴ある由来や栽培方法、食べ方などを紹介します。
岩津ねぎ
岩津ねぎ (兵庫県朝来市)
●特徴と由来
岩津ねぎの歴史は古く、「朝来誌」(明治36年)によると、生野銀山が栄えた江戸時代後期の享和3年(1803年)ごろに、鉱山労働者のための冬季野菜として旧朝来町岩津地区で栽培させたのが起こりとされています。
岩津ねぎは九条ねぎの改良種で、極めて柔らかく日持ちが悪かったことと、分げつする性質が強すぎたため、昭和2年~10年頃に、兵庫県農業試験場但馬分場で、関東の千住ねぎを交雑育種し、「改良岩津ねぎ」が育成され、この品種が現在も作り続けられています。
岩津ねぎは葉ネギと根深ネギの兼用種です。葉色は濃緑で、寒さにあうと葉身内部に粘物質を大量に生じ、葉身及び葉鞘部(軟白部)の肉質は柔軟で香気高く、甘みが強く品質は極上です。
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九条ねぎ
九条ねぎ (京都府内全域)
(画像提供:(公社)京のふるさと産品協会)
●特徴と由来
九条ねぎの栽培の始まりは、今から1300年ほど前の和銅4年(711年)、伏見稲荷大社の建立時までさかのぼります。その原種は浪速の国から伝来したとされ、京の伝統野菜の中でも最も古い栽培の歴史を持っています。
京の都は、北から南にゆるやかに傾斜しており、都の南部に位置する九条付近に、野菜生産に適した有機物に富んだ土壌が堆積していました。
この九条付近で、品質の良いネギが栽培されたことから、九条ねぎの名がつけられました。また、弘法大師が東寺付近で大蛇に追いかけられ、ねぎ畑に隠れて難を逃れられたとの逸話があり、付近の農家では、弘法大師の縁日である21日には、ネギを食べることを遠慮するという風習が伝えられています。
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越津ねぎ
越津ねぎ (愛知県津島市越津町)
●特徴と由来
越津(こしづ)ねぎは根深ネギの主要品種が属する千住群と、葉ネギの代表的な品種が属する九条群の中間的品種です。
11~3月の冬どり栽培が主体で低温伸長性が強く、分げつが多くなります。葉・白根(葉身部・葉鞘部)ともに軟らかく食味に優れています。10~15℃でよく生育し、25℃以上になると生育が急に悪くなります。また、高温下では特に湿害に弱いため、栽培には排水が重要な条件となります。
発祥は旧海部郡神守村越津地域(現在:愛知県津島市越津町)で、徳川三代将軍家光の時代(1623~1650)と言われ、現在は、「あいちの伝統野菜」にも選定されています。
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下仁田ねぎ
下仁田ねぎ (群馬県甘楽富岡地区(富岡市、下仁田町、甘楽町))
●特徴と由来
下仁田ねぎは、群馬県西部に位置する名前の由来である下仁田町を中心に、甘楽(かんら)富岡地区(富岡市・下仁田町・甘楽町)等で生産されています。
いつ頃から栽培されているかは定かではありませんが、江戸時代の文献で高崎藩の殿様が地元の名産品として諸国大名へ年末年始に贈答した記録があり、古くから栽培されているネギです。
また昭和に入ってからは皇室への献上により、その名声が一段と高まりました。
下仁田ねぎは、非分げつ性の1本ネギで、軟白部が15~20cmと、他のネギと比べると短い。また、太さは直径5~6cmで、太くてずんぐりとした極めて特異な形状・草姿のため、他の品種とは区別されます。
下仁田ねぎは冬季限定のネギで、寒さに当たるほど美味しくなります。種は自家採取している農家も多く、何系統かに分類されます。他のネギに比べ病害に極めて弱く、栽培しづらい品種です。
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仙台曲がりねぎ
仙台曲がりねぎ(余目葱) (宮城県仙台市岩切地区)
●特徴と由来
発祥の地とされる仙台市岩切地区は、七北川沿いにある広く水田に囲まれた地域で、畑地はその多くは水田の中に点在するか河川敷にありました。そのため地下水位が高く、根菜類や立ちネギの軟白栽培が難しい地域とされていました。
1909年に地区住民の永野一氏がネギの優良品種の導入と育成、軟白技術の改良を試み、大正初期に栽培法として「やとい」という新技術を確立し、それに合う品種として松本系一本太ネギが選ばれました。
その後、自家採種が重ねられ、「やとい」の技術も徐々に周辺に伝わりました。地名をとって「余目葱」として名声を博すようになり、出荷名を「仙台曲がり葱」と統一され、東京市場へも出荷が行われるようになりました。
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平田赤ねぎ
平田赤ねぎ (山形県酒田市平田地域)
●特徴と由来
「平田赤ねぎ」は山形県酒田市平田地域(旧平田町)で栽培されている在来野菜で、全国的にも珍しい、分げつしにくい一本赤ネギです。外観は、葉の濃い緑色、葉鞘は上部の白とワインカラーに似た赤紫色の美しいコントラストが特徴です。
始まりは、北前船が上方と酒田港を往来していた頃とされ、江戸時代の末期に最上川舟運で種がもたらされたと言われています。土壌条件や自然条件との相性が良く、味が良いことから、今日まで伝承されてきました。
収穫まで1年半以上の労力をかけ、100年以上もの間、越冬用や薬用として農家に大切に受け継がれ、地域に愛される野菜となっています。
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