キャベツ栽培のための畝内局所施肥技術
畝内局所施肥とは
「一般的な施肥法」
●野菜栽培では、ほ場全体に肥料を散布する「全面全層施肥」が、一般的な施肥法です。
●「全面全層施肥」では、肥料を畝溝など作物の根が分布していないところまで施用します。
「畝内局所施肥とは」
●一方、「局所施肥」は、作物の根が利用しやすい位置に肥料を集中的に施す技術です。
●「畝内局所施肥」は、畝立て時に肥効が緩やかで濃度障害が起こりにくい緩効性肥料を、苗を定植する位置周辺の土壌のみに集中的に施肥する技術です。
図1 畝内局所施肥での施肥位置
「畝内局所施肥のメリット」
●全面に肥料を散布する従来の方法と違い、肥料を作物の根域に限定して施用するので、施肥量を減らすことができます。
●緩効性肥料からの成分溶出パターンを、作物の吸収特性にあわせることができ、肥料の利用効率が高まります。
●全量を基肥で施用できるので、追肥作業を省略することができます。
●肥料成分の流亡が減る、環境にやさしい技術です。
畝内局所施肥器
「畝内局所施肥器のしくみ」
●畝内局所施肥に使用する機械を、「畝内局所施肥器」といいます。
●トラクタの後ろに畝立て器、畝立局所施肥器(肥料タンク、肥料吐出部)を装着して、耕耘、作畝、施肥作業を一工程で行います。
●「畝内局所施肥器」は、肥料吐出管の先端を横幅13cmの扇型とし、吐出口中央部の底面を凸状に底上げすることで、散布幅約13cmで、土壌中に肥料を均等に散布できます。
●さらに、吐出部中央に2本の突起棒(長さ4cm)を付けることで、耕耘土壌が撹拌され、肥料を縦方向約4cmに分散できます。
●開発された機械は改良が加えられ、(株)クボタから畝内施肥機RT400-2Sとして市販されています。
左上 :畝内施肥器を装着したトラクタ / 右下 :開発した畝内施肥器
左上 :開発した幅広型肥料吐出管 / 右下 :開発器利用による肥料粒位置
畝内局所施肥の実際
「実施上の留意点」
●畝内局所施肥の肥料施用量は、肥料繰り出しロールの回転数で決まります。
●各圃場でトラクタのスリップ程度等が異なるため、施肥前には必ず圃場内を試走して、散布する肥料の量を調節しましょう。
●畝土壌中の肥料の適正な埋設深さは、約10cmです。本技術の重要なポイントですので、あらかじめ作畝、施肥して深さを確認してください。
●土壌水分が極めて高い条件では、吐出管に土が付着して作畝ができない可能性があるので注意します。
●畝内局所施肥では、施肥時に肥料吐出管を土壌中に埋設するため、土塊が大きい場合、施肥後に吐出管が通った跡が残ることがあります。よって、装着するロータリは、砕土性が優れる超砕土ロータリがお勧めです。
●畝内局所施肥は、局所のみに施肥するため、定植後から長期間、降雨がない場合には土壌中の塩類濃度が高くなることがあります。
●生育を安定させるためには、速効性肥料の全面全層施肥と、緩効性肥料の畝内局所施肥を組み合わせる施肥法が、望ましいでしょう。
兵庫県神戸農業改良普及センター提供
「施肥例」
●福岡県のキャベツの初冬出し栽培では、作畝前に圃場全面に10a当たり窒素成分10kgを施用します。
●その後、畝内局所施肥器を用いて、窒素成分16kg/10aを畝内局所施肥します。施用窒素合計は26kg/10aです。
●慣行の全面施肥+追肥の施肥法に比べて、窒素施用量が20%減でも、収量は同等となりました(表1)。
●本作型において畝内局所施肥に用いる肥料は、溶出期間が40日の被覆尿素と速効性肥料を1:1の割合で混合した肥料が良いと思われます。
表1 キャベツの畝内施肥栽培における施肥量と結球重(2001年)
※本技術は、キャベツの他にブロッコリー栽培でも使えますが、品種、作型、土壌の種類によって、吸肥反応等が異なります。実施の際は最寄の指導機関(農業改良普及センター等)にお尋ねください。
森山 友幸
福岡県農業総合試験場筑後分場 野菜チーム
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