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米粉用の品種

(2021年 1月 一部改訂)

米粉用の品種とは

●国内の自給率を高めるために、パンや麺に米粉を利用することが進められています。
●米粉用の品種に求められる特性として、パンや麺への加工適性が高いこと、収量性が高いことが挙げられます。
●近年、パン用や麺用に適する米粉用品種が育成されました。これらのうちのいくつかの品種を紹介します。

パン用の品種

「米粉パンに適した米粉の特徴」
●米粉にした場合に、粒径が小さいものが適しています。
●米粉にした場合に、デンプンが損傷すると吸水性や酵素感受性が高まることから、損傷デンプンの割合が低いものが適しています。
●米粉の粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低いと膨らみが良く、型くずれしにくい米粉パンができます。

◆「ほしのゆめ」熟期の品種「ほしのこ」 (農研機構北海道農業研究センター育成)
●栽培適地は北海道です。
●収量は「ほしのゆめ」より少収(500kg/10a)です。玄米の大部分は不透明な白色で、表層は硝子質です。軟らかく砕けやすいのが特徴です。
●米粉の粒子が細かく、損傷デンプンが少ない良質の米粉ができます。パン・洋菓子・麺用として小麦粉の代わりに使える米粉が、一般品種より容易に製造できます。

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「ほしのこ」(左)、「ほしのゆめ」(右)の玄米
(提供 :農研機構北海道農業研究センター)


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「ほしのこ」の米粉で作ったパン (提供 :農研機構北海道農業研究センター)

◆「あきたこまち」熟期の品種「ゆめふわり」 (農研機構東北農業研究センター育成)
●「あきたこまち」とほぼ同じ熟期で、冷害の危険性が少ない東北中南部、北陸、関東以西に適します。
●稈長は「あきたこまち」より短く、倒れにくい品種です。
●収量は「あきたこまち」と同程度で、白米のアミロース含有率は登熟温度で変動し(3~12%)、玄米は白く濁ります。
●米粉の粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低いため、米粉パンに適しています。小麦粉70%+米粉30%にグルテン添加の米粉混成パンは比容積がやや大きくなり、膨らみが優れます。

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「ゆめふわり」(左)(上)、「あきたこまち」(中)、「スノーパール」(右)(下)の玄米
(提供 :農研機構東北農業研究センター)


◆「ヒノヒカリ」熟期の品種「こなだもん」 (農研機構九州沖縄農業研究センター育成)
●「ヒノヒカリ」を栽培している西日本の広い地域で栽培できます。
●収量は「ヒノヒカリ」とほぼ同じで、白米のアミロース含有率は、「ヒノヒカリ」よりやや高い19%程度です。
●米粉の粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低いため、米粉パンに適しています。米粉80%+グルテン20%で焼成した「こなだもん」のパンは、側面のへこみが「コシヒカリ」のパンより少なく、全体の断面積も大きくなっています(写真)。

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「こなだもん」(左)(上)、「コシヒカリ」(右)(下)の米粉パン
(提供 :農研機構九州沖縄農業研究センター)


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「こなだもん」()、「ヒノヒカリ」()の草姿
(提供 :農研機構九州沖縄農業研究センター)


◆「ヒノヒカリ」よりやや遅い熟期の品種「笑みたわわ」 (農研機構九州沖縄農業研究センター育成)
●「ヒノヒカリ」より10日ほど遅く成熟する品種で、暖地および温暖地に適しています。
●収量は「ヒノヒカリ」より標肥栽培で51%多収(677kg/10a)、多肥栽培で43%多収
(692kg/10a)です。玄米千粒重は22.7gで「ヒノヒカリ」より重いです。
●白米のアミロース含有率は21%程度で、「ヒノヒカリ」より米粉の粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低いため、製粉適性に優れます。
●除草剤成分ベンゾビシクロン、メソトリオンおよびテフリルトリオンに感受性のため、使用する除草剤には注意が必要です。

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「ヒノヒカリ」(左)、「笑みたわわ」(右)の玄米
(提供 :農研機構九州沖縄農業研究センター)


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「笑みたわわ」の草姿
(提供 :農研機構九州沖縄農業研究センター)


◆「ヒノヒカリ」より1週間程度遅い熟期の品種「ミズホチカラ」 (農研機構九州沖縄農業研究センター育成)
●「ヒノヒカリ」より出穂が1週間程度、成熟が20日程度遅い品種で、暖地の普通期栽培地帯と温暖地平坦部の早植え地帯に適しています。「笑みたわわ」より10日ほど成熟が遅いです。
●収量は「ヒノヒカリ」より41%多収(686kg/10a)で、「笑みたわわ」と同程度です。玄米千粒重が23.1gと大きく、稈長が短くて倒伏に強いです。
●白米のアミロース含有率は22%程度で、米粉パンのふくらみが良く、製パン適性に優れます。
●除草剤成分ベンゾビシクロン、メソトリオンおよびテフリルトリオンに感受性のため、使用する除草剤には注意が必要です。

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「ミズホチカラ」(左)、「レイホウ」(右)の籾と玄米
(提供 :農研機構九州沖縄農業研究センター)


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「ミズホチカラ」の草姿 (提供 :農研機構九州沖縄農業研究センター)

麺用の品種

「米粉麺に適した米粉の特徴」
●粘りが少ない高アミロース米が適しています。
●アミロース含有率が高いと、米粉麺に加工した場合に麺離れが良くなります。

◆「きらら397」熟期の品種「北瑞穂(きたみずほ)」 (農研機構北海道農業研究センター育成)
●「きらら397」に近い熟期で、北海道で栽培できます。
●耐冷性は「きらら397」より優れ、収量は「きらら397」より14%程度多収です。
●白米のアミロース含有率は約30%あり、米粉麺に適しています。
●貝殻型のライスパスタ(写真)、50%米粉クッキーにも加工適性が高く、食味評価も良好です。

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「北瑞穂」(左)、「きらら397」(右)の玄米
(提供 :農研機構北海道農業研究センター)


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「北瑞穂」で試作したライスパスタ
(提供 :農研機構北海道農業研究センター)


◆「ひとめぼれ」熟期の品種「あみちゃんまい」 (農研機構中央農業研究センター育成)
●「ひとめぼれ」に近い熟期で、冷害の危険性が少ない東北中南部、北陸、関東以西に適します。
●収量は標肥では「ひとめぼれ」並ですが、多肥では「ひとめぼれ」より多収です。
●白米のアミロース含有率は30%程度あり、米粉麺に適しています。
●高アミロース米ですが、「コシヒカリ」等と同様の粒形であるため、選別、精米など従来の日本型品種に対応した調整方法が適用できます。

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「あみちゃんまい」(左)、「ひとめぼれ」(中)、「あきたこまち」(右)の籾と玄米
  (提供 :農研機構中央農業研究センター)


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「あみちゃんまい」(左)、「ひとめぼれ」(中)、「あきたこまち」(右)の草姿
  (提供 :農研機構中央農業研究センター)


◆「コシヒカリ」熟期の品種「越のかおり」 (農研機構中央農業研究センター育成)
●「コシヒカリ」に近い熟期で、冷害の危険性が少ない東北南部、北陸、関東以西に適します。
●倒伏には「コシヒカリ」より強く、収量は標肥で「コシヒカリ」よりやや低く、多肥で「コシヒカリ」並です。
●白米のアミロース含有率は33%程度あり、米粉麺に適しています。製麺適性は、標肥栽培、多肥栽培で差がありません。
●高アミロース米ですが、短粒の日本型品種であるため、選別、精米などに既存の設備や機械での調整方法そのまま適用できます。

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「越のかおり」()、「コシヒカリ」(中)、「キヌヒカリ」()の籾と玄米
 (提供 :農研機構中央農業研究センター)
 

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「越のかおり」()と「春陽(一般米)」()の米粉麺
 (提供 :農研機構中央農業研究センター)
 

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「越のかおり」を使った米粉麺
(提供 :農研機構中央農業研究センター)


◆「日本晴」熟期の品種「亜細亜のかおり(あじあのかおり)」 (農研機構中央農業研究センター育成)
●「日本晴」とほぼ同じ熟期で、「コシヒカリ」よりも収穫期が2週間以上遅くなるため、「コシヒカリ」との作期分散が可能です。北陸から東海、関東以西に適しています。
●収量は「越のかおり」に比べて標肥栽培で20%(789kg/10a)、多肥栽培で27%(817kg/10a)多収です。玄米は大粒で、千粒重は「越のかおり」よりも3g程度大きく、26.5gあります。
●白米のアミロース含有率は32%程度で、米粉麺に適しています。米粉麺の食味は「越のかおり」と同等です。

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「亜細亜のかおり」(左)、「日本晴」(中)、「越のかおり」(右)の籾と玄米
 (提供 :農研機構中央農業研究センター) 


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「亜細亜のかおり」(左)、「越のかおり」(右)の草姿
 (提供 :農研機構中央農業研究センター)


◆「ヒノヒカリ」熟期の品種「ふくのこ」 (農研機構西日本農業研究センター育成)
●「ヒノヒカリ」と収穫時期がほぼ同じです。「ヒノヒカリ」の栽培が可能な関東以西の平坦地に適しています。
●収量は「ヒノヒカリ」より20%ほど多収です。「ヒノヒカリ」より倒伏に強く、いもち病にも強く、縞葉枯病にも抵抗性があります。
●白米のアミロース含有率は27%程度で、米粉麺への加工が可能です。粒形や粒大は「ヒノヒカリ」と同等なので、選別や精米などは従来の施設、機械等がそのまま利用できます。

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「ふくのこ」(左)、「ヒノヒカリ」(中)、「ホシユタカ」(右)の籾と玄米
 (提供 :農研機構中央農業研究センター) 

執筆者 
山口 誠之
農研機構 九州沖縄農業研究センター 水田作研究領域

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