提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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農作業便利帖


稲作経営の改善

(2014年8月 一部改訂)
(2021年1月 一部改訂)

経営活動の記録をつける

「経営データを記録する」 
●経営改善を進めるためには、生産記録や会計記録(簿記)、販売記録などの経営データを記録することが重要です。
●生産記録には、土地台帳、作物作付台帳、圃場図、作業日誌、収量一覧表などがあります。

「作業日誌」
●手書きの作業日誌は、時刻を先に記入した様式を準備しておきます。
●作業者別に作業を行った時間に線を引き、そこに作業内容や作業を行った圃場名を記入します。
●その日にどのような資材(肥料、農薬など)をどれだけ使用したかも記入します。
●このような作業記録を付けることにより、誰が、どの圃場に、いつ、どれだけの時間、何の作業をしたか、また、その際に資材をどれだけ投入したのかを記録できます。

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東北地域のある稲作経営が記帳している作業日誌

●作業の記録は汎用的な表計算ソフトも利用できます。また、専用ソフトも市販されています。

「圃場図を作成する」
●圃場図を作成し、作物や品種、栽培方法ごとに色分けしておくと、土地利用計画や作業計画が立てやすくなります。
●特に、作業する圃場枚数が100筆を超えるような大規模経営においては、GIS(地図情報システム)等ICTを活用した圃場管理を実施していくことは不可欠の課題となっています。
●圃場別の作業管理や生産管理を支援するソフトは様々に市販されています。農研機構でも、作業計画・管理支援システム(PMS)を開発しており、このシステムは、次のホームページから無料でダウンロードして利用することができます。
 ▼「作業計画・管理支援システム(PMS)」はこちら

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ある法人経営が作業計画・管理支援システム(PMS)により作成している圃場図

●圃場にいながら手動で作業時間を記録できるソフトもあります。
●作業機械にGNSS(全地球航法衛星システム)を装備すれば、機械作業の時間を自動で記録することもできます。

経営記録を整理する

●作業や栽培の記録には、圃場ごとに、いつ、何の作業を行い、どの資材を用いたかを整理しておきます。
●日々の栽培管理の内容が確認できるとともに、栽培履歴としても活用できます。
●収量コンバインの利用や、乾燥調製作業での工夫など、圃場別の収量を把握するようにしておきます。
●圃場の良し悪しや、品種や栽培方法の収量への影響などが把握でき、収量に関する実績を翌年の作物・品種配置や、栽培方法の改善に活かすことができます。

ある集落営農組織が作成している圃場別資材投入量の整理表
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ある法人経営が作成している圃場別収量の一覧表(大豆の例・一部)
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「労働管理などに生かす」 
●作業日誌から作業者別や作物別の労働時間を集計して、それらを時期ごとに整理します。
●どの時期に最も作業が競合しているのか、また、新しい作物を導入する場合にどの時期がねらいとなるかが、視覚的に分かります。

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ある稲作経営の年間の労働時間の状況

経営診断・分析を行う

●簿記データをもとに作物ごとの費用を計算し、同じ地域や同じ規模の経営の数値と比べてみます。
●これによって、どの費目に多く費用がかかっているか、また、どこがコストダウンのターゲットになるかが分かります。
●比較する費用(生産費)は、農林水産省のホームページなどからも情報を得ることができます。

米生産費の全国平均及び大規模層平均との比較
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●年に1回は、簿記データを用いて経営診断を行ってみましょう。
●農林水産省では、以下のホームページにおいて、経営改善に必要な取組みの実施状況や経営データを自らチェックすることで経営改善を促し、農業所得の向上等に資することを目的とした新たな経営指標を作成するとともに、経営改善実践システムを提供しています。
 ▼農林水産省:新たな農業経営指標

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指標による評価結果シート

●農研機構のマネジメント技術プロジェクトでは、農業法人に対する経営診断を行う際の判断材料として、経営類型別の標準財務指標とランク区分を作成し、公開しています。
●この標準財務指標等は、法人経営や指導機関が、経営診断を実施する際の目安として利用できます。
▼「農業法人における経営類型別の標準財務指標とランク区分

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「農業法人における経営類型別の標準財務指標とランク区分」の稲作抜粋

●経営診断の結果は、それを踏まえた改善案を検討し、次年度への改善に活かすことが重要です。
●農研機構のマネジメント技術プロジェクトでは、改善案を検討を支援できる「営農計画策定支援システムZ-BFM」を開発しています。
●このシステムは、農研機構の次のホームページから無料でダウンロードして利用することができます。
 ▼「営農計画策定支援システムZ-BFM

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営農計画策定支援システムZ-BFMの出力例(一部)

合理的な経営管理を行う

「客観的な評価で経営をみる」 
●経営の良し悪しは、売り上げや所得に、まず表れます。
●加えて、そのような数字で示されることだけでなく、経営管理における一つ一つの取り組みや、経営運営に当たっての心構えについてもチェックを行っていくことが望まれます。
●上記の農林水産省の「新たな経営指標」のページでは、「経営改善のためのチェックリスト」を提案しています。

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経営改善のためのチェックリスト

●また、農研機構のマネジメント技術プロジェクトでも、経営管理の実践事例や、経費削減のためのチェクリスト、複合化を進めていく際のチェックリスト、経営管理の合理化のためのチェクリストなどを公開しています。
 ▼「経営改善に向けた経営管理の実践事例とチェックリスト

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ホームページの中の「経営管理の合理化のためのチェックリスト」(一部)

●このような定性的な側面と、収益や費用など定量的な側面の両面から、経営内容や経営改善に向けた取り組みのチェクを行っていくことが望まれます。

執筆者 
梅本 雅
農研機構 理事

松本 浩一
農研機構 企画戦略本部農業経営戦略部 経営計画ユニット長

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