提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


地域に適応した新形質米品種

2009年6月12日

(2014年2月 一部改訂)
(2020年11月 一部改訂)
 

はじめに

 従来のうるち米やもち米にはない、新しい特性を持った「新形質米品種」の開発が進み、各地域向けに、様々な品種が育成されています。ここでは代表的な品種を紹介します。

粘りの強い米:低アミロース米

●炊飯米の粘りが強い低アミロース米(※)は、北海道向けの「彩」を皮切りに、全国的に知名度を高めた「ミルキークイーン」以降、数多く開発されてきました。
●従来粘りの少なかった北海道米では、低アミロース米品種「おぼろづき」が食味改良の母材として育種に用いられるようになり、後の「ゆめぴりか」などの育成にもつながりました。
●作期、収量性等の栽培特性を改良も進められ、北は北海道から南は沖縄まで、低アミロース米が作付けされています。
●最近では、その特徴からチルド米飯等への利用も検討されている他、「ゆめふわり」のようにパンに向く低アミロース米も育成されています(「ゆめふわり」の詳細については、米粉用の品種の項をご参照ください)。

 ご飯の粘りは、米に含まれるデンプンによって生じます。このデンプンには、アミロースとアミロペクチンの2種類があります。アミロースの割合が低いと粘りが強く、高いと粘りが弱くなります。日本のうるち米(コシヒカリ、あきたこまち等)のデンプンは、一般にアミロース含有率が17~23%です。

「北海道向け」
●登熟期の気温が低く、アミロース含有率が高くなりやすい北海道では、適度な粘りの強さと柔らかさをもつ低アミロース性が、食味の改良には効果的でした。
●特に北海道の食味を飛躍的に改良した「おぼろづき」、その血を受け継いだ「ゆめぴりか」が有名であり、北海道では新形質米というより、通常の良食味米のカテゴリーで扱われています。
●アミロース含有率は、北海道の一般米よりやや低く約14%前後です。
●最近ではアミロース含量の変動の少ない「ゆきさやか」、直播栽培にむく「さんさんまる」なども育成されています。

2014_09ine02_image21.jpg
低アミロース米品種「おぼろづき」(左)と一般米品種「ほしのゆめ」(右)
(提供 :農研機構北海道農業研究センター) 


「東北向け」
●多収の「スノーパール」、「シルキーパール」が育成されています。
●両品種とも多収で、特にシルキーパールは倒伏に強く、肥沃地に適しています。
●アミロース含有率は6~8%と低く、玄米は白く濁ります。

玄米(左 :シルキーパール /右 :スノーパール)
東北向けの低アミロース米品種の玄米 (左 :シルキーパール /右 :スノーパール)
(提供 :農研機構東北農業研究センター)


「関東以西向け」 
●ミルキークイーン」はコシヒカリの突然変異から作られ、特有の粘り強い食感により  低アミロース米の名を全国に知らしめました。
●アミロース含量は10%前後であり、その特徴を受け継いだ品種として、草丈を短くし多肥栽培に向けとした「ミルキープリンセス」や、早生化品種「ミルキーサマー」、晩生化品種「ミルキーオータム」等があります。

●「ヒノヒカリ」よりも20%以上の多収で縞葉枯病抵抗性を有する「さとのつき」等が育成されています。
●この品種も「ミルキークイーン」の低アミロース性を受け継いでおり、アミロース含量は10%前後でチルド米飯、ブレンド用等業務用米としての利用も期待されています。

2020_09ine02_image1.jpg
「ヒノヒカリ」と低アミロース品種「さとのつき」と「姫ごのみ」
(左:さとのつき /中:ヒノヒカリ /右:姫ごのみ)
(提供:農研機構西日本農業研究センター)


「沖縄向け」 
●本州では「ミルキークイーン」よりかなり早生化する「ミルキーサマー」は、沖縄県の一期作条件では、「ミルキークイーン」よりもやや晩生で多収になります。
●「ミルキークイーン」と同等の食味・品質を示し、沖縄県の奨励品種として普及しています。

「栽培上の留意点」 
●低アミロース米のアミロース含有率は、登熟期の気温に影響を受けます。
●気温が高いとアミロース含有率が下がり、米飯の粘りが強くなり過ぎる傾向があります。 

粘らない米:高アミロース米

●高アミロース米はアミロース含有率の高い米で、粘りが少なく、普通に炊飯するとポロポロのご飯となります。
●カレーやピラフ、エスニック料理、米粉麺向きです。

「北海道向け」
●アミロース含有率が約30%の高アミロース米品種として、「北瑞穂」が育成されています。
●ライスパスタや米粉クッキーなどへの加工に適しています。

2014_09ine02_image23.jpg
「北瑞穂」を用いて製造したライスパスタ (提供 :農研機構北海道農業研究センター)

「関東以西向け」 
●米麺に適する米はアミロース含有率が30~35%の高アミロース米で、麺離れが良く、サッパリとした食感となる特徴があります。
●コシヒカリ熟期の「越のかおり」が育成され、これを改良した日本晴熟期で多収の「亜細亜のかおり」が育成されました。
●また、アミロース含有率が27~33%の「夢十色(ゆめといろ)」は、レトルト粥やドライカレーなどの調理・加工米飯に適しています。

09ine02_image5.jpg  2020_09ine02_image2.jpg
 :「越のかおり」の米粉麺(左 :越のかおり/右 :一般米)
:「夢十色」で調理したクスクス (提供:ともに農研機構中央農業研究センター)


「西日本向け」
●やや晩生品種の多収高アミロース米として、「ふくのこ」が育成されています。
●アミロース含量は27%前後と高く、「ヒノヒカリ」よりも20%程度も多収で、縞葉枯病抵抗性を有します。
●既存の高アミロース品種「ホシユタカ」と違い、粒大粒形は「ヒノヒカリ」と大きな差がありません。
●米粉麺などへの利用が期待されています。

2020_09ine02_image3.jpg
「ヒノヒカリ」と高アミロース品種「ふくのこ」と「ホシユタカ」
(左:ふくのこ /中:ヒノヒカリ /右:ホシユタカ)
(提供:農研機構西日本農業研究センター)


「栽培上の留意点」 
●高アミロース米は、米粉麺用や調理加工用米として利用されるため、販売先の確保に十分留意する必要があります。

米粉利用に向くお米:損傷デンプンのすくないお米

●近年では、米を粉砕して米粉に加工した上で、パンやクッキー向けに利用するケースも増えています。
●米粉にした場合の粒子が細かく、損傷デンプンが少ない品種が米粉パン等の加工適性に優れていると言われており、このような特性を持つ品種が育成されています。

「北海道向け」
●粉質米と呼ばれる、胚乳のデンプンに空隙(すきま)がある形質を導入した「ほしのこ」が育成されています。
●胚乳デンプンがもろいため米粉への加工が容易です。粒子が細かく、損傷デンプンの割合が低い米粉ができるため、膨らみが良いパンが製造できます。

2020_09ine02_image4.jpg
粉質米「ほしのこ」と親品種「ほしのゆめ」
(左 :ほしのこ /右 :ほしのゆめ)
(提供:農研機構北海道農業研究センター)


「東北向け」
●低アミロース米の性質を生かした米粉用品種として、「ゆめふわり」が育成されています。
●「ゆめふわり」を湿式気流粉砕した米粉は粒径が小さく、損傷デンプンが少ないため、パンの比容積がやや大きくなります。
●また、アミロース含有率が「あきたこまち」よりも10%程度低いため、「ゆめふわり」の米粉を原料として、もっちりしっとりとしたパンを製造することができます。

「九州向け」
●多収米「ミズホチカラ」は米粉を製造した場合、パンの膨らみやキメ・白さが普通の食用米よりも優れています。
●「ミズホチカラ」は、晩生のため、作付地域が限られますが、最近では熟期を早めた「笑みたわわ」が育成されています。
●「ミズホチカラ」は、パンケーキ等の製菓加工に適していると評価されており、今後の生産拡大が期待されています。

2020_09ine02_image5.jpg
「ヒノヒカリ」と米粉向き品種「笑みたわわ」の白米
(左 :ヒノヒカリ /右 :笑みたわわ)
(提供:農研機構九州沖縄農業研究センター)


2020_09ine02_image6.jpg
「笑みたわわ」の米粉で作ったパンケーキ
(提供:農研機構九州沖縄農業研究センター)


「栽培上の留意点」
●「ほしのこ」には収量性が低い欠点があります。
●生産を始める前に、米粉の調整・加工にたけた販売先の確保に十分留意する必要があります。

色のついたお米:有色素米

●玄米の表面が、赤色(赤米)や黒色(紫黒米)の米です。
●古代米などとして販売されることもあります。
●紫黒米は玄米の表面に抗酸化活性を示す紫色の色素(ポリフェノールの一種)を含んでいますが、ヒトに対する機能性は明確ではありません。

「東北向け」
●紫黒米品種として、うるち米の「おくのむらさき」と、もち米の「朝紫(もち米)」が育成されています。熟期はあきたこまちとほぼ同じです。倒伏に強く、在来種の紫黒米より多収です。
●紫黒米としては、さらに「紫こぼし」という極小粒のもち米品種が育成されています。この品種はプチプチとした特徴的な食感があり、調理飯の素材として利用できます。
●赤米品種としては、うるち米の「紅衣」と、もち米の「夕やけもち」が育成されています。両品種とも倒伏に強く、一般品種並の収量があります。

09ine02_image8.jpg
東北地域向けの色素米品種 (左 :紅衣(赤米)/右 :朝紫(紫黒米))
(提供 :農研機構東北農業研究センター)


2014_09ine02_image24.jpg
「紫こぼし」と「朝紫」を混ぜた赤飯
(左 :紫こぼし /右 :朝紫 それぞれ10%ずつ玄米を混入)
(提供 :農研機構東北農業研究センター)


「九州向け」
●赤米品種として、うるち米の「ベニロマン」と、もち米の「紅染めもち」が育成されています。
●両品種とも、赤米としての着色がよく、倒伏に強く栽培しやすい品種です。
●赤色の色素を利用した赤飯や赤酒、和菓子などとして、商品化が進んでいます。

2020_09ine02_image7.jpg
九州地域向けの赤米品種
(左:紅染めもち /右:つくし赤もち)
(提供:農研機構九州沖縄農業研究センター)


夕やけもちの加工品 左から赤米餅・赤米酒・米粉麺  ベニロマンの赤米酒
 :夕やけもちの加工品 左から赤米餅、赤米酒、米粉麺 (提供 :農研機構東北農業研究センター)
 :ベニロマンの赤米酒 (提供 :農研機構九州沖縄農業研究センター)


「栽培上の留意点」 
●有色素米が周辺の一般品種に混入すると除去が難しく、大きな問題になります。
●隔離した地域で栽培する、地域で栽培している品種と出穂期が重ならない品種を利用するなどの注意が必要です。

胚芽の大きい米:巨大胚米

●胚芽が大きな米です。
●玄米を水に浸漬すると、胚芽内にγ-アミノ酪酸(ギャバ)が多く蓄積されることから、発芽玄米や胚芽精米として期待されます。

「北海道向け」
●「ゆきのめぐみ」という、一般品種に比べて倍近く胚が大きい巨大胚品種が育成されています。
●北海道での熟期は中生の早です。

ゆきのめぐみ籾玄米
ゆきのめぐみの籾(左)と玄米(右)  (提供 :農研機構北海道農業研究センター)

「東北向け」
●「恋あずさ」という巨大胚品種が育成されています。
●熟期は「あきたこまち」並で、倒伏に強く、耐冷性も非常に強いため、東北地域で安定的に栽培できます。

09ine02_image12.jpg09ine02_image13.jpg
 :恋あずさ発芽玄米 /  :恋あずさ(ファインフーズ梓川)
(提供 :農研機構東北農業研究センター)


「関東以西向け」
●「めばえもち」というもち米の巨大胚米品種が育成されています。
●こがねもちと同じ熟期で、胚芽入り餅や団子、甘酒などに使われます。おかきにする場合、胚芽のプチプチとした食感が特徴となります。
●西日本向けには、胚芽が精米時に落ちにくく、胚を残した分搗き米にして普通の精米と同様の炊飯ができる、「はいいぶき」、「はいごころ」が育成されています。
●「はいいぶき」はうるち米で、「はいごころ」は低アミロース性も兼ね備えています。

09ine02_image19.jpg09ine02_image20.jpg
 :「めばえもち」(左)と「コシヒカリ」(右)の玄米 (提供 :農研機構中央農業総合研究センター(北陸))
 :めばえもちを使った「おかき」 (提供 :農研機構中央農業総合研究センター(北陸)) 


2014_09ine02_image25.jpg 
西日本向けの巨大胚米品種(左 :はいごころ /右 :はいいぶき)
(提供 :農研機構西日本農業研究センター)


「栽培上の留意点」
●巨大胚米は苗立ちが不安定な品種が多く、育苗には注意が必要です。
●籾すりの際に胚が落ちやすいので、機械の速度を落として、収穫調製する必要があります。

粒が薄く甘いお米:糖質米

●水溶性多糖類を多く含む、ほのかに甘いお米です。
●玄米を水に浸漬すると胚芽内にγ-アミノ酪酸(ギャバ)が多く蓄積されることから、発芽玄米入りおにぎり、おはぎに向きます。

「関東以西向け」
●「あゆのひかり」という糖質米は、発芽玄米にすると一般品種の3倍程度のギャバを含みます。
●コシヒカリと同程度の熟期で、栽培できます。

2014_09ine02_image26.jpg
「あゆのひかり」と「コシヒカリ」の玄米(左:あゆのひかり /右:コシヒカリ)
(提供 :農研機構中央農業研究センター)


「栽培上の留意点」 
●糖質米は極端に穂発芽しやすいので、穂発芽が生じにくい出穂後25-30日をめどに収穫する必要があります。
●また、千粒重が低いので、収量は低いです。

いろいろな料理に向くお米:調理加工用米

「東北向け」
●精米後に胚芽が残りやすく、胚芽の栄養成分を利用しやすい品種として「きんのめぐみ」が育成されています。
●「あきたこまち」と「ひとめぼれ」の間の熟期の品種で、耐倒伏性に優れ、いもち病や冷害にも強い品種です。

「関東以西向け」 
●寿司には、口の中でばらけやすいように、表面の粘りが少なめのお米が向くと言われています。
●この条件に適した、炊飯米の粘りが少ない「笑みの絆」という寿司用品種が育成されています。
●高温に強く、近年の高温条件下でも外観品質が落ちにくい特徴も有しています。

2014_09ine02_image27.jpg2014_09ine02_image28.jpg
左 :「笑みの絆」と「コシヒカリ」の玄米(左:笑みの絆 /右:コシヒカリ)
(提供 :農研機構中央農業研究センター)

右 :「笑みの絆」を用いたにぎり寿司 (提供 :農研機構中央農業研究センター)

●イタリア料理のリゾットには、アルデンテの食感が残るように大粒のお米が適しています。
●本場イタリアでリゾット調理に使われている「CARNAROLI」を交配母本として、日本で栽培しやすくした「和みリゾット」というリゾット用品種が育成されています。
●「ひとめぼれ」と同等の早生品種で、大粒で歯ごたえがあり、煮崩れしにくい特徴があります。

2014_09ine02_image29.jpg2020_09ine02_image8.jpg
左:「和みリゾット」と「コシヒカリ」の玄米(左:和みリゾット /右:コシヒカリ)
右 :「和みリゾット」で調理したリゾット(提供 :農研機構中央農業研究センター)


●「華麗舞」は、日本のとろみのあるカレールウに合うように育成された品種です。
●「コシヒカリ」よりタンパク含量はやや高く、アミロース含量もやや高めで、表面の粘りは少ないものの、内部がコシヒカリ並に柔らかい特徴があります。
●「コシヒカリ」よりもやや長粒で、細長いお米です。

2014_09ine02_image30.jpg
「華麗舞」と「コシヒカリ」の玄米(左:華麗舞 /右:コシヒカリ)
(提供 :農研機構中央農業研究センター)


「栽培上の留意点」 
●調理加工用米については、生産を始める前に用途に合わせた販売先の確保に十分留意する必要があります。

執筆者 
根本 博
農研機構 作物研究所 稲研究領域長

一部加筆(2014年2月)
一部改訂(2020年11月)
後藤 明俊
次世代作物開発研究センター 稲研究領域 稲育種ユニット 上級研究員

(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)  


◆稲編もくじはこちら