機械除草法
除草作業の進め方
「機械の準備と調整」
●多目的田植機(機体後部に各種作業機を装着可能な乗用田植機:以下、本機)に、除草装置を取り付けます。
●植付装置が付いている場合は、一旦取り外し、代わりに除草装置を取り付けます。
多目的田植機の作業機の付け替え例(田植機から水田除草機へ)
多目的田植機(植付装置装着)から(左上)、植付装置を取り外し(右)(下)、
除草装置を取り付けると(左上)、除草機に(右下)
●圃場状態等(特に土壌性質)により、必要に応じて、本機の車輪を、除草作業用に変更します。
●必要に応じて、車輪側面のカバーを装着します(土壌巻上げによる欠株を減らすため)。
除草作業用車輪(前後輪とも車輪カバー付き)の装着例
左上 :田植用車輪(前輪カバー付き) /右下 :除草用車輪(前・後輪カバー付き)
「株間除草のしくみ」
●従来の歩行用除草機(中耕除草機)は、条間のみをロータで除草します。
●歩行型除草機でも株間の除草機構を備えているものもあります。
歩行用除草機の除草作用
●それに対して、この除草装置は、水稲の条間を除草爪がついた高速で回転するロータで除草し、同時に、株間を水平左右に揺動するレーキで除草します。
回転・揺動式除草機構による除草作用
●6条用と8条用の機種があります。
●条間除草ロータは、条間ごとに1個(幅約20cm)と左右の最外側に1個ずつ(幅約15cm)あり、本機の走行速度により、毎分100~200回転します。
●株間除草レーキは、水稲の植付条ごとに1組(幅は約15cm)あり、本機の走行速度に応じて毎分220~440回揺動します。
●除草装置の作業深さは、条間ロータが田面に対して40~60mm、株間レーキが20~40mmの範囲で、4段階に設定することができます。標準は、条間ロータ50mm、株間レーキ30mm程度です。
●作業深さの設定は、専用のレバーで行います。作業中は、止まって操作します。
●除草装置中央にあるセンサフロートが田面の凹凸を検知して、油圧昇降装置が働くので、設定した深さが保たれます。
多目的田植機装着式除草装置(回転・揺動式除草機構)
多目的田植機装着式水田用除草機の主な仕様
「圃場の準備と田植作業」
●田植と除草などで計4回程度、圃場の同じ位置を走行するので、これに耐える耕盤が必要です。
●凹凸の少ない耕盤を作ることが重要です。凹凸が多い場合、除草機による欠株が増加します。
●代かき後、できる限り早く田植を行うことで、雑草を抑えます。
●雑草の発生密度を下げるには、代かきを2回以上行います。
●田植作業は、除草機の作業条数に合った条数の田植機で行います。
●行きと帰りの植付け行程の間隔が、できるだけ同じになるように田植えを行います。これは、除草作業の時に、条間除草ロータの爪などが接触して、稲を傷つけないためです。
「除草作業」
●植え付け後の稲が活着したら、早めに1回目の除草をします。
●雑草の発生状態を見ながら、その後2回ほど除草します。
●田植え後、1回目の除草まで日数が開きすぎると、雑草が増えて以後の除草で十分な効果が出ないことがあるので注意します。
●ヒエ類の除草が可能な葉令は2.5葉程度、との結果(新潟県等での試験による)もあります。
●ヒエ以外でも、発生初期に除草するようにします。
標準的な除草作業のスケジュール
●作業時の水深は3~6cm程度にします。
●水深が浅いと、車輪に泥が付き、除草機への負荷が大きくなるとともに、土壌の巻上げによりイネ苗をつぶしてしまいます。
●深すぎると、水の抵抗で除草効果がでないことがあります。
●作業深さは、稲を傷つけないため、深くなり過ぎないように注意します。特に、1回目の除草では、稲の活着程度と除草作用の強さを考えて決めます。
●作業速度は、速すぎないよう、0.4~0.6m/秒程度に設定します。特に、活着が十分でない1回目の作業では注意します。
●除草機が旋回する枕地では、車輪が通過する部分の踏み倒し等が発生します。急旋回や切り返し等を避け、できるだけ大きな半径で旋回し、損傷を少なくするよう注意します。
●除草作業時期以外は、可能な限り深水管理をすることにより、雑草の発生を抑制します。
●米ぬかなどの有機物を水田に散布することで、雑草の発生を抑制することが知られています。
●田植時、1回目除草時、必要であれば2回目除草時に、10aあたり80kg程度の米ぬかを同時散布することで、3回必要な除草作業を2回に減らすことが可能です(生研センターにおける試験による)。
除草作業の状況
左上 :1回目(宮城県・田植え10日後) /右下 :2回目(埼玉県・田植え20日後、米ぬか同時散布)
3回目(秋田県・田植え30日後)
●軟弱圃場で除草する場合には、後輪に補助車輪をつけることもあります。
補助車輪を使用しての除草作業(新潟県の事例)
「特に注意する点」
●除草作業は、田植え後十分稲株が活着したことを見はからって、できるだけ速やかに1回目の作業を行います。
●雑草の発生状況を見ながら、7~10日程度の間隔で、さらに2回程度の作業を行います。
●必ず、田植時と同一の条数(6又は8条、条間30cm)で作業するようにします。5条植や33cm条間には対応していません。
●田植時に、行きと帰りの植付け行程の間隔が、極端に変わらないように注意します。条間(30cm)が極端に狭い場合、除草作業による欠株発生の原因となります。
●収穫直後から代かきまでの間に、何回か耕起を繰り返すか、代かきを複数回行う等の作業を組み合わせると、機械除草の効果が高くなると思われます。
●アオミドロなどの藻類が多く発生する水田では、株間除草レーキに藻類が絡まり、そのまま除草作業を行うと欠株が大幅に増加します。藻類発生が多い水田では、株間除草レーキを取り外して作業するか、または作業中に頻繁に除草機を空回りさせて、藻類を取り除くことをおすすめします。
宮原佳彦
農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター 生産システム研究部長
吉田隆延
農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター 生産システム研究部 生育管理システム研究
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