コシヒカリ 安定多収・良質の稲栽培法の基本
倒伏させない「じっくり型稲作り」のポイントⅠ
「耕深15cmの確保」
●前年の収穫後に、秋耕を、耕深15cm以上で行います。
●秋耕によって、春までに稲ワラの半分は堆肥になり、雑草や病害虫を減らす効果もあります。
●最近は耕深が浅くなりがちで、作業は楽ですが、秋落ちしやすく、倒伏・登熟不良になります。
●耕深15cmの確保は、根張りを良くし、秋優り・登熟向上の前提条件です。
「薄播き・小苗植え」
●育苗箱への種籾播種量は、乾籾相当で130~150g/箱(稚苗。催芽籾重は、この1.25倍)の薄播きとして、太い健苗を育てます。
●田植時には、1株当たり平均4~5本植(小苗植え)とします。
●4%までの欠株は、収量に影響はありません。
●大苗植え(1株6~8本植)にすると、過剰分げつになって茎が細くなり、倒伏しやすく、登熟も低下します。
●小苗植えでは、150g播きで10a当たり18箱、130g播きで20箱が目安です。
稲の生育 (出典 『米の事典』 P42(幸書房))
「元肥窒素を減らす」
●かつては、元肥窒素をある程度施し、早めに分げつを確保する栽培でしたが、過剰分げつや倒伏を招くことが多々ありました。
●元肥窒素は思い切って減らし(栃木県では、4~5kg/10aを2~3kgに削減)、小苗植えと合わせ、じっくりと茎数を確保します。
●穂数は少なくなりますが、茎が太くなり倒伏しにくく、さらに1穂の籾数が多くなります。
●穂数をやや少なめにし、1穂籾数と登熟向上で、安定多収を目指します。
収量構成要素の考え方 (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』 P23(農文協))
注)安心イナ作=じっくり型稲作り
「水管理は間断灌水(飽水管理)で」
●田植後ほぼ1カ月で、必要な分げつが確保されますので、水管理を間断灌水(飽水管理)に切り変えます。
●間断灌水(飽水管理)によって、稲の根に水と酸素が供給され、根張りが良くなります。
●間断灌水(飽水管理)は、水田に水が無くなったら灌水する、最も簡単な水管理法です。
●稲の出穂後30日後まで、この水管理法を徹底します。
●毎年、倒伏しやすい半湿田などでは、最高分げつ期前後(関東の早植えでは6月下旬~7月上旬)に、7~10日間の中干しをします。
倒伏させない「じっくり型稲作り」のポイントⅡ
「適期の穂肥で登熟向上」
●出穂期前20日ごろに、葉色が淡くなってきます。
●この時期に穂肥を施用すると、籾数が増え登熟が良くなり、粒張りも良くなります。
●コシヒカリの場合は、施用時期は出穂前15日頃で、窒素成分で2~3kg/10aが基本です。
●その年の生育に合わせて、施用時期や量を変えます。
※「稲編 倒さないで多収を得るための生育診断と制御法」で詳述
登熟と食味の関係 (出典 『米の事典』 P51(幸書房))
「落水時期」
●米の粒が肥大するのに、4週間かかります。
●落水時期は、出穂期後30日を目安に、それまで田を固めながら、間断灌水(飽水管理)を続けます。
「適期収穫、過乾燥防止」
●穂の帯緑色籾率※10%程度が、収穫適期です。
●刈り遅れると、胴割や薄茶米が増えて、品質を落とします。
●乾燥は、玄米水分が14.5~15.0%になるようにします。過乾燥は胴割れや食味低下の原因になるので、注意します。
※ 穂の帯緑色籾率 :穂を5~6本束ねて握り、穂の基の方に薄緑色が残っている籾の割合を指す。
「堆肥の活用」
●完熟した堆肥の施用は、有機物の循環利用で土づくりとなるだけでなく、肥料の節約にもなります。
●牛ふんオガクズ堆肥を10a当たり1t施用すると、化成肥料を減らせます。
●減肥の度合いは、県や堆肥の種類によって違うので、もよりの農業改良普及センターにご相談ください。
「元肥一発施肥」
●最近、緩効性肥料が入った肥料で、元肥と追肥を一緒に兼ねた肥料が普及し、元肥のみの施用による栽培法も増えています。
●元肥一発施肥では、元肥分が少なめで、追肥分があまり早く溶出してこない、「じっくり型」に合ったタイプの肥料を選びます。
山口 正篤
栃木県農業環境指導センター 所長
改訂
佐藤 徹
新潟県農業総合研究所 基盤研究部 部長
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