提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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農作業便利帖


乾燥・調製

(2014年8月 一部改訂) 

機械乾燥と自然乾燥

「乾燥の目的」
●穀物の水分は、貯蔵性、加工性、品質に影響します。
●特に、コンバインで収穫した籾は、20~30%の水分があり、非常に変質しやすいので、すみやかに乾燥する必要があります。
●ただし、急激に乾燥すると、胴割れ米や砕米が増加して、品質や食味が低下するので、注意が必要です。

「機械乾燥と自然乾燥」
●籾の乾燥方法は、天日による「自然乾燥」と、穀類乾燥機を利用した「機械乾燥(人工乾燥)」があります。
●自然乾燥は、「はざかけ」や「かけぼし」による乾燥方法です。
●天候が良ければ、乾燥むらが少なくて品質が良くなりますが、天候が良くないと、乾燥むらができたり品質が低下したりします。
●地域によって特有の様式があり、色々な工夫がされています。
●機械乾燥は、乾燥速度が速く、機械の操作が適切でないと、乾燥むらや品質の低下を招くため、操作や制御の自動化が進んでいます。

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稲の「はざかけ(かけぼし)」風景 (提供 :近畿中国四国農業研究センター)

乾燥機による乾燥

「乾燥機の種類」
●平形静置式乾燥機は、張り込んだ籾に、金網(すのこ)の下から温めた(または常温の)空気を送って、乾燥させる方式です。
●簡単で安価ですが、設置に広い場所が必要です。
●下層が上層より先に乾燥するので、籾の層が厚い場合は注意が必要です。

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平形静置式乾燥機

●循環式乾燥機は、張り込んだ籾を乾燥させながら移動させる方式で、テンパリング乾燥機とも呼ばれています。
●自家乾燥用の乾燥機として、最も普及しています。
●「テンパリング」とは、穀粒内部の水分を拡散させ、穀粒全体の水分を均一化させることを言います。
●熱風を当てるので、穀粒の表面は乾きますが、内部の水分が表面に拡散するのに時間がかかります。
●熱風を当て続けるより、断続的に熱風を当てる方が、効率的に乾燥ができます。
●籾は上部の貯留タンクから除々に乾燥室へ送られ、短時間熱風が当てられます。穀温が35~40℃になったところで貯留タンクへ戻されるので、品質を低下させることなく乾燥時間を短縮できる方式です。
●最近では、循環式の乾燥機に遠赤外線放射体を組み込み、遠赤外線の放射と、放射体からの排熱によって乾燥させる、遠赤外線乾燥機も普及しています。
●連続移動式乾燥機は、主に乾燥施設用乾燥機で、ライスセンタ(RC)、カントリエレベータ(CE)、ドライストア(DS)などで使われています。
●複数の乾燥機とテンパリング用のタンクを組み合わせて、通風とテンパリングを繰り返して乾燥を行うものです。
●大量に乾燥でき、かつ低コストで均質に仕上げられます。 

「循環式乾燥機を手動で運転する際の注意点」
●循環式乾燥機は、ほとんどの機械が自動制御ですが、手動で品質を落とさずに乾燥する場合は、以下のことに注意しましょう。

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循環式乾燥機

●高水分籾を乾燥機に入れたまま放置すると、蒸れたり変質の原因になるので、張り込み後は、できるだけ早く送風を始めます。
●収穫直後の籾は水分むらが多いので、最初に5~6時間以上送風のみ行い、その後熱風を送ります。
●水分が19%以下になるまでは、できるだけ40℃以下の低温で乾燥させます。
●高水分状態で高温乾燥を行うと、品質が低下する可能性が高くなります。
●乾燥時間は、籾水分、張り込み量、熱風の温度等によって変わります。
●送風温度は、乾減率(時間当たりの水分の減少程度)が0.8%/h以上にならないように調節します。
●穀物の出荷時における水分の最高限度は、農林水産省の規定により決まっており、籾では14.5%となっています。
●これより高い水分では出荷ができないので、注意します。

「カントリエレベータ(CE)とライスセンタ(RC)とドライストア(DS)の違い」
●カントリエレベータ(CE)は、大規模な穀物の共同乾燥施設のことです。
●穀物を共同で乾燥・調製・ばら貯蔵します。
●設備は、主に荷受け・一時貯留設備、乾燥設備、精選・計量設備、貯蔵設備、籾摺り・出荷設備から構成されています。

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 :カントリエレベータの前で荷下ろしをするトラックのようす
 :カントリエレベータの内部の状況 (提供 :2枚ともに、九州沖縄農業研究センター)


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佐賀県のカントリエレベータ
(提供 :九州沖縄農業研究センター)


●ライスセンタ(RC)は、中・小規模な穀物の共同乾燥施設です。
●CEとの違いは、かつては貯蔵施設の有無でしたが、近年ではRCにも貯蔵設備が併設されるようになったので、規模の違いで区別する程度となっています。

●ドライストア(DS)は、欧米では、貯留用の容器(ビン)に通風装置を取り付け、半乾燥状態の穀物を貯蔵中に送風してゆっくり乾燥し、乾燥終了後はそのまま貯蔵する方式の施設です。
●日本では、この施設に仕上げ乾燥機(ヘッドドライヤ)や、調製・出荷施設を併設したものが一般的です。

●CEやRCに籾を搬入する場合には、品種によって搬入期間が決まっているので、その期間内に収穫するようにします。
●CEやRCが荷受けをする品種は、県や地域により決まっているので注意します。
「適期収穫」を参照のこと)

籾すり、選別、精米

「籾すりは乾燥が終わってから」
●籾すりは、籾から籾殻を取り除き(これを「脱ぷ」という)玄米を取り出すことです。
●十分に乾燥されていない籾を籾すりすると、割れたり、肌ずれが起きたりするので、注意します。
●籾すり機は、籾と玄米の選別方法によって、万石(まんごく)式、揺動式、ロータリ式、空気流式等に分けられます。

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籾すり機 

●脱ぷの方法には、「摩擦式」と「衝撃式」があります。
●「摩擦式」は、籾が回転数の異なる2個のロールの間を通過するときに、ロールの圧力と周速度の差による摩擦によって、脱ぷする方式です。
●「衝撃式」は、羽根車状の回転加速盤などによって籾に遠心力を作用させ、籾を壁面に衝突させて脱ぷする方式です。
●構造が簡単で能率が高く、取り扱いが簡単です。
●籾の水分が高くなると脱ぷ率が低下したり、肌ずれ米は出ないが砕け米が多くなるなどの欠点があります。

「様々な選別」
●一口に選別といっても、籾とゴミの選別、籾と玄米の選別、玄米とくず米の選別など、様々な選別があり、それぞれ異なる機械を使います。

●「パディクリーナ」は、CEやRCで籾と藁くずなどを選別する機械です。
●大きなゴミは回転ふるい(スカルパ)、軽いほこりは気流選別で機外に排出し、最後に振動ふるいによって精籾だけにします。

●「米選機」(ライスグレーダともいう)は、籾すり後の玄米とくず米を分ける機械です。
●玄米を粒径によって選別します。
●ピアノ線を平行に並べた形の縦線米選機が主流でしたが、最近では、主に回転式米選機が使用されています。

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縦形円筒回転式選別機

●「色彩選別機」は、玄米や白米から青米、茶米、乳白米、カメムシ斑点米等の被害粒を除去する機械です。
●光センサ・CCDカメラ等で被害粒を識別し、エジェクター(空気銃)で被害粒を吹き飛ばして分別する方法が一般的です。

「食味に関係の深い精米・精白」
●精米・精白は、玄米から果皮や種皮、糊粉層(ぬか)を取り除くことを言います。
●精米機は、玄米の相互接触によって精白する「摩擦式」と、玄米を砥石で研削する「研削式」とに大別されます。
●「摩擦式」は、主として炊飯用米の精米に使われ、円筒摩擦式や一回通し式などがあります。
●精白中に穀温が上昇しますが、その範囲は12~15℃が適当で、10℃以下だと白くて光沢のある精白米が得られません。
●一方、摩擦抵抗が大きすぎると、穀温が上昇しすぎて砕米が増加します。
●精白後は、常温まで冷やしてから包装しないと、結露して品質が低下するので注意します。
●高圧・低速で精米を行うので、比較的柔らかな糠層ははがれますが、米粒内部までは精米されないので、原形精白ができ、精米歩留まりは90%前後です。
●「研削式」は、高速・低圧で米粒を研削しながら、精米します。
●米粒内部まで精米が進行するなど、歩留まりの調節が楽にできる方式です。
●胚芽精米、長粒種の精米、酒米の精米等に使用されています。

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精米機

●近年、炊飯の際に水洗いを必要としない「無洗米」の生産・消費が増加しています。
●無洗米は、水洗いを必要としない程度に糠を取り除いた精米で、川や海など環境を汚染しない、などの特徴があります。

●米のうまみ成分は、糊粉層(糠層)とデンプン層の間にあるとされています。
●過度な精白は、米のうまみを損なうので注意しましょう。
●糠層の厚さや硬さは、品種によって異なり、同じ機械を同じ条件で使用しても、品種や水分によって精米歩留まりが変わります。
●自家精米する場合には、これらを考慮に入れて精米します。
●正しく精米をして、美味しいお米を更に美味しく食べましょう。

執筆者 
田坂 幸平
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター

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