農薬を削減する虫害防除法
耕種的方法
「考え方」
●一般的に、肥料を抑えると、病害虫の発生は低下します。
●超晩期栽培(現在はほとんど行われていない)で、トビイロウンカによる坪枯れを防ぐことができます。
●九州では、7月に移植すると、トビイロウンカはあまり侵入しません。また、ウンカが増殖する期間が短くなります。
●イネが過繁茂になると害虫が増えやすく、また殺虫剤も株元にかかりにくくなります。
●なるべく疎植にするほうが、害虫の発生を少なくすることができます。
●斑点米カメムシ類は、水田周辺の雑草から飛来します。
●出穂2週間前頃まで、水田周辺の雑草をこまめに防除すると、出穂期以降に飛来するカメムシ数が減少します。
「品種を選ぶ」
●アジアでは、トビイロウンカ抵抗性品種の作付けが、一般的です。
●日本で初めて開発されたトビイロウンカ抵抗性品種「関東BPH1号」(写真)は、ウンカが増えにくく、生育、品質は「ヒノヒカリ」とほぼ同じです。
関東BPH1号とヒノヒカリの圃場における草姿(提供 平林秀介)
●カスミカメ類の防除が重要な地域では、割れ籾が発生しにくい品種を選びます。
●カスミカメ類は内外頴(えい)の隙間から籾を吸汁するので、割れ籾になりやすい品種では、斑点米が多発します
●たとえば「ほしのゆめ」は割れ籾が発生しやすく、「きらら397」は割れにくい品種です。
生物的防除法
「考え方」
●アイガモによる害虫防除が代表的です。(【19】農薬に頼らない雑草防除法、参照)
●アイガモは、水田内の多種多様な生物を食餌し、ウンカ類の坪枯れを防ぐ技術として、有機農家で定着しています。
●アイガモ導入田は、翌年の田植え時のスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)密度を著しく低減できます。
●薬剤防除を行う場合も、目的の害虫に特異的な殺虫剤(例えば、昆虫成長制御剤)を用いることで、水田内の多くの天敵を保護することができます。
農薬散布のコストを考えよう
●病害虫防除所から、発生予察情報が随時発表されます。年次変動が大きい飛来性害虫などは、予察情報を参考にして、不要な防除を削減します。
●しかし、予察情報はあくまでも平均的な発生予測で、過度の信頼は禁物です。
●地域や個々の水田で、害虫の発生は大きく異なります。過去の経験などを考慮し(発生の多寡は毎年同じ傾向)、防除要否を決定します。
●害虫を観察し、増えたこと確認したうえで防除しましょう。
●コブノメイガやフタオビコヤガなど、葉を加害する害虫による減収は、みかけほど大きくありません。薬剤防除が本当に必要かどうか、よく考えましょう。
●コブノメイガの場合、出穂期に被害葉率が30%で(水田は真っ白)、5%の収量減になります(被害許容限界)。
●コブノメイガの常発地域(南九州と西九州)を除くと、防除が必要なケースはあまり多くありません。
コブノメイガによる稲の被害(収量減は軽微)
和田 節
(独)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター専門員
松村正哉
(独)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター上席研究員
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)
◆稲編もくじはこちらへ