シオデ
由来と特徴
●サルトリイバラ科(旧分類ユリ科)シオデ属のつる性多年草で、日本各地に自生しています。
●シオデと形状が似ている近縁種で、つるが細く食味が劣るといわれる「タチシオデ」も山菜として採取されます。地域によっては、シオデを「本シオデ」と呼称しています。
●群落を形成することはなく、排水が良く落葉が堆積した林間に分散して自生します。
●茎はつる性で、他の植物に巻きつき枝分かれして長く伸びます。
●葉は互生し、卵形か円形で葉肉の薄いのが特徴です。
●雌雄異株で、雌株は葉の基部から雌花を伸ばし、夏に開花します。果房状に10個程度の液果には、2個の種子が秋に成熟します。
開花直前のシオデ(撮影地:最上産地研究室)
●根はアスパラガスに似たひげ根で、やや太く、根量が多いのが特徴です。
●晩秋には地上部が枯れ、地下部に新たな芽を形成し、越冬します。
●シオデの営利栽培はあまり多く行われていません。株養成期間が長く、収量が低く、かつ、収穫期間が短いため、経済性に課題があるためです。
●人気のある山菜で、「山菜の女王」と称されます。おひたし、和え物などに調理されます。
●品種や系統の区分はありませんが、赤みを帯びるものや緑色のものなどの変異はあります。
●種苗は流通していないので、栽培者から分けてもらう必要があります。
●自生地から採種する場合は、山菜シーズンに選定し、秋に採種するようにしましょう。
繁殖方法
●繁殖は実生繁殖です。
「種子の特徴」
●種子は直径3mm程度の黄~赤色の球形で、硬質です。100粒重は6g程度で、山菜類の種子としては大きい方です。未成熟状態では黄色で、成熟するにつれて赤みが強くなる傾向があります。
●種子は成熟すると強い休眠状態になり、発芽しにくくなります。
●自生地で地面に落下した種子は、翌春に地下発芽、発根し、そのまま地中で越冬し、地上に芽が出るのは翌々春になります。
「採種」
●秋になり、液果が黒化したころが採種適期です。
●ただちに水洗で果肉を除き、ぬめりを除くようにします。
●水洗後、軽く影干ししますが、乾燥しすぎると発芽能力に影響するので注意します。
●種子表面の水分が乾燥したら、湿らせた砂やバーミキュライトでパッキングし、冷蔵庫で保管します。
「播種」
●播種時期は、秋播きの場合は採種後に播種します。春播きの場合は、種子を土中または冷蔵庫に保存しておき、翌春に播種します。
●育苗期間が2年半になることや、地上部の生育に比べ根は長く伸びる性質があるため、播種容器は深めのプランターが適します。
●育苗用土は、排水が良く水持ちの良い用土を使用します。
●種子間隔が約2cmになるように散播し、2~3cmに覆土します。
●乾燥防止のために、プランターは畑に播種面の高さまで埋め込み、わらを載せておきます。
●翌春は地下発芽のみです。かん水や雑草などの管理を継続してください。
●翌々春に地上部に出芽します。葉が3~4枚、つる長10cm程度に生育し、真夏からは生育が停止状態になります。葉色が淡い場合は、500~1000倍程度の薄めの液肥を追肥します。
●温度処理(高温→中温→低温処理)により、育苗期間が1シーズン短縮する技術が開発されていますが、説明は割愛します。
定植
●定植は、3年目の秋または4年目の春に行います。
●栽培が長期にわたるため、定植する圃場は耕土が深く、乾燥しにくい場所を選びます。
●完熟堆肥は、1a当たり500kg以上を施用し、土づくりが必要です。
●施肥は、元肥は窒素・リン酸・カリとも成分で1a当たり1.0kg程度を施用します。
●栽植密度は、うね幅120cm、株間20cm、2条植の場合、1a当たり800株の苗が必要です。
●定植時には、できるだけ根を切らないように注意してください。
定植後の管理
●定植初年目のシーズンは、50%程度の遮光が必要です。
●定植2、3年後には、生育がおう盛になり、つる状に生育するようになるため、つる誘引用のネットの設置が必要です。
●施肥は、三要素とも成分で1a当たり1.0kg施用します。
ネットへのつる誘引(撮影地:最上産地研究室)
公益財団法人 やまがた農業支援センター
阿部 清
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