提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


雑穀・山菜・その他

エゴマ作業体系のポイント

2008年11月12日

(2019年2月 全面改訂)

原産地と伝来

●エゴマ(荏胡麻 Perilla frutescens (L.) Britt.var. frutescens)は、シソ科シソ属の作物で、シソ(紫蘇 Perilla frutescens (L.) Britt.var. crispa)と同種の変種であり、容易に自然交雑します。
●原産地はヒマラヤ山麓から中国南部またはインドと言われており、古代から、東アジアを中心に、食用、薬用または油用として栽培されてきました。日本では、縄文時代前期から各地で栽培が行われてきました。縄文人はエゴマ(あるいはシソ)を料理に混ぜて食べていたと考えられています。
●エゴマは、地方により、ジウネ、ジュウネン、エ(荏)、エクサ、アブラエなどと称されています。

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図1 :開花期の花穂 /図2 :結実期の花穂

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図3 :栽培シソ(岩手県盛岡市)

栄養的価値

●シソが主に葉や花を香辛野菜として利用するのに対し、エゴマは主に子実を油用や食用に利用します。近年は、エゴマの葉を韓国料理の付け合せとして利用することも、多く見られます。
●エゴマ子実の栄養的な特徴は、必須脂肪酸であるα-リノレン酸の割合が、全脂肪酸の6割以上と非常に多く含まれていることにあります。α-リノレン酸は、人体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に合成されることが知られており、これらのn-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)は、現代人の健康維持や生活習慣病の予防に役立つことがわかっています。また、エゴマは、ロスマリン酸などの抗アレルギー作用や抗炎症作用などが期待できるポリフェノール類や、食物繊維を多く含むことからも、非常に高い栄養的価値を有していると言えます。

産地

●エゴマは、鳥獣害被害を受けにくく、栄養的に優れた特徴を持つことから、中山間地の遊休農地の解消、医食同源をキーワードとした特産化、加工品開発などを通じて、今日的課題を踏まえた地域おこしの取り組みに活用されています。
●主な産地は、岩手県(九戸郡軽米町、一関市)、宮城県(加美郡色麻町)、福島県(田村市、南会津郡只見町、下郷町、大沼郡金山町、三島町)、岐阜県(加茂郡白川町)、広島県(東広島市)、島根県(邑智郡川本町、仁多郡奥出雲町)、鳥取県(八頭郡若桜町)などです。
●各地の自治体や生産組織によって、盛んに振興が図られています。

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図4 産地での栽培状況(岩手県軽米町)

在来品種の特徴

●エゴマは、品種改良がほとんどなされておらず、各産地ごとに、長年にわたり受け継がれてきた在来種があります。気候に適し、収穫量や品質が良いことから大切に伝承されてきたものです。東北地方や高標高地では主に早生種、西南暖地では中晩生種が栽培されています。
●早生種は、主茎、分枝とも比較的短く、分枝の発生が多く、花穂数が少ない特徴があります。晩生種は、生育が旺盛で、主茎が長く、花穂数が多い特徴があります。
●粒色(種皮色)には、灰白(白種)、灰黒(黒種)、茶褐の3種類があります。白種と黒種で脂質含量に明らかな傾向はなく、また、脂肪酸組成は6割前後とほとんど変わりがありません。しかし、搾油率には、品種や収穫乾燥方法などにより差があります。
農業生物資源ジーンバンクには、160点ほどのエゴマ在来種が保存されています。特性データはインターネットで検索することができます。

各地方の在来種と特性(開花期は農業生物資源ジーンバンク特性データより)
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在来種の特性(場所:岩手県農業研究センター県北研究所 播種期:1994年6月6日)
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圃場の選定と準備

●エゴマは自殖性ですが、他花受粉も行います。シソと容易に交雑することから、隣接して栽培することは避けましょう。
●排水と日当たりの良い圃場を選定し、事前に堆肥や肥料を施し、耕起しておきます。堆肥は1~2t/10aが望ましく、また、施肥量は、窒素、リン酸、カリをそれぞれ成分量で4~6kg/10a程度を目安とします。播種、定植の前に、除草を兼ねて耕うん、整地を行います。

直播栽培

●エゴマは直播栽培、移植栽培ともに適しています。
●直播栽培での播種適期は、北東北の早生種で5月中旬、南東北の早生種で5月下旬から6月上旬、中生種では6月中旬です。
●エゴマは短日植物であり、日長が長いと開花が抑制されます。東北地方の在来種は、日長に敏感な早生種が多く、播種時期が遅れても開花期はあまり遅くなりません。このため、播種が遅れると、開花まで日数が短くなり、生育が小さく、収量が低くなる傾向にあります。また、早霜にあって収量が著しく低下することもあるので、適期播種に心がけましょう。
●関東、中部以西の晩生品種は、6月中旬以降の播種が適しています。播種時期が早いと、茎葉が繁茂し過ぎて収量が上がらず、強風で倒れやすくなります。
●栽植密度は、畦間75~90cm、株間30cm程度とし、1穴3~5粒ほどを播種します。直播では早めの除草が必要なことから、畦間は除草作業がしやすい広さに設定しましょう。覆土の厚さは、3~5mm程度とします。覆土が深いと出芽が遅れ、浅いと小鳥による食害のおそれがあります。
●出芽して、草丈が5cm頃に、1回目の間引きをします。その、およそ2~3週間後に2回目の間引きを行います。生育の不良な個体を除き、1株当たり1本立てにします。

移植栽培

●移植栽培では、128穴セルトレイ、またはみのる220穴ポットを用い、1穴3粒程度を播種し、苗丈10~15cmに育てます。播種適期は直播とほぼ同時期です。東北地方では6月中旬頃、中部地方では6月下旬~7月上旬となります。
●エゴマの発芽適温は20~25℃ですが、発芽は早く、苗丈の伸びも早いことから、播種と定植を、何回かに分けて計画的に行い、作業が集中することを避けると良いでしょう。苗丈が5cm頃から早めに間引きを行い、播種から25~30日程度で定植を行います。エゴマは発根が旺盛なことから、3週間ほどでしっかりした根鉢が形成されます。圃場が水分を適度に含んでいる頃合いを見計らって移植を行います。
●栽植密度は、畦間75~100cm、株間30~40cm程度とします。苗の定植は、半自動野菜移植機を使用すると省力的です。植え付け深さは苗の株元よりやや深くし、しっかりと植え付けします。株元の土がしっかり鎮圧されるように、移植機の鎮圧輪を調節します。
●全自動移植機を用いることも可能です。全自動移植機では、育苗は220穴ポット専用育苗箱で行います。なお移植機は若干改造する必要がありますので、以下の情報を参考にしてください。
ポット苗田植機を汎用利用した雑穀の畑移植技術

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図5 エゴマの栽培手順(移植栽培 及川2003より引用)

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図6 セル成型苗(左から 2葉期、1葉期、子葉期)

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図7 歩行型移植機による移植作業

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図8 雑穀移植用の全自動移植機(岩手県農業研究センター県北農業研究所)

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図9 移植時の畦間・株間イメージ

中間管理・病害虫対策

●中耕培土は、雑草の発生始めから、エゴマの草丈が50cm前後(ひざの高さ程度)までに2回ほど行います。2回目には、10cmほどの高さに、しっかりと培土し、倒伏を防ぐとともに雑草を防除します。エゴマは根張りが良く、生育が旺盛なため、基本的に追肥やかん水の必要はありません。
●畦間の除草には、アシュラム液剤(農薬名:アージラン液剤など)を、エゴマ展開葉4葉期以降、収穫45日前までに1回のみ使用することができます。雑草発生初期に畦間の雑草に対し茎葉散布します。
●摘心は必須ではありませんが、主茎の4~5葉節から上を摘心すると、茎長が短くなり倒伏軽減につながります。摘心しても、充実した花穂が多くなるので、収量はほぼ変わりません。
●さび病は、日当たりや風通しが悪い圃場に発生しやすい病気ですが、大きな被害にはつながりません。
●害虫では、ベニフキノメイガ、アブラムシなどが7月中下旬から発生することがあります。ベニフキノメイガの防除には、生物農薬のBT水和剤(農薬名:ゼンターリ顆粒水和剤、トアロー水和剤CT、サブリナフロアブルなど)を発生初期に散布します。
●なお、農薬の使用にあたってはラベルの記載事項を遵守しましょう(農薬に関しては2018年10月1日時点の情報を元にしています)。

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図10 中耕・培土のイメージと作業機

収穫

●開花後、1カ月ほどで収穫適期になります。茎葉が黄化し始め、手で花穂を握ると脱粒するようになったなら、すみやかに収穫を行います。この時期は遅咲きの花も残りますが、時期を失すると脱粒が激しくなり、強風でふるい落とされてしまうこともあるので、早めの収穫を心がけましょう。刈り取った株は、露地またはビニールハウス内でシマ立て、天日乾燥し、脱穀機で脱穀します。
●機械収穫する場合は、バースレッシャー型の「こき胴」を持つ汎用コンバインを選択すると、エゴマ表皮の損傷が比較的少なくて済みます。粒の損傷程度を良く確認しながら「こき胴」の回転数を抑え、ていねいに作業しましょう。汎用コンバインの底板やグレンシーブなどはエゴマに合わせて取り替える必要があります。

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図11 エゴマ収穫に適した汎用コンバイン(一例)

調整

●脱穀後は、唐みで風選し夾雑物を取り除いた後、細かな土やゴミを取り除くため、水洗浄を行います。少量であれば、水槽内で水を入れ替えながら、水の濁りがなくなるまで繰り返し洗浄します。大量のエゴマを一気に洗浄する必要がある場合は、穀物洗浄機を用いると、効率良く、きれいに洗浄できます。洗浄を十分に行うことで、搾油した油の色が澄んだ黄金色になります。
●洗浄後は良く乾燥し、ふるい選別機や比重選別機を用いて、ていねいに穀粒を選別します。乾燥が不十分だと、品質の劣化が早いので注意が必要です。
●乾燥、選別後の穀粒は、直射日光を避け、良く乾燥した涼しい場所で保管します。長期保管する場合は、密閉容器に入れ、10℃以下の低温庫内で冷蔵し品質の低下を防ぎます。

手刈り収穫
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コンバイン収穫
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図12 穀類洗浄機(例)

加工

●エゴマの搾油は、油圧機を使ってゆっくりと圧をかけ、油を摂りだす、「玉締め法」が一般的です。軽く焙煎して生搾りするので、非常に品質の良い高級な精油が得られる反面、搾油に時間がかかり一度に搾油できる量も限られていることから、非常に手間がかかります。

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図13 自動油圧搾油機

●多くの手間をかけて作られたエゴマ油は、健康機能性成分を損なわず、エゴマ油本来のおいしさを凝縮しています。その価値を食べてもらう方々にも十分に知ってもらう取り組みが不可欠になります。
●エゴマ油は不飽和度が高く、空気中で酸化しやすいため、直ちに打栓・密閉します。精油を入れる容器は紫外線による影響が少ないものを選びます。酸化を防止する手段として茶抽出カテキンなど抗酸成分の添加などが有効と言われています。
●エゴマ油は、加熱安定性が大豆油より低いことから、低温で利用するドレッシングなどへの利用に適しています。
●精油以外にも、エゴマ穀粒をすりつぶして料理や菓子に用いる、葉を刻んで薬味に用いるなど、幅広い用途があります。このことが、エゴマが縄文時代から食生活に根ざし、地域の食文化と切っても切れない食材であり続ける理由だと考えられます。

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左 :図14 高級エゴマ精油(福島県只見町特産)
右 :図15 搾油後のエゴマ粒を加えたドレッシング(福島県只見町特産)


引用文献。参考図書
古澤典夫監修(2000) エゴマ~つくり方・生かし方~
及川一也(2003) 雑穀 11種の栽培・加工・利用
石川和昭(2006) エゴマ油の栄養特性と利用
及川和志、遠山良(2008)エゴマ種子に含まれる栄養成分および機能性成分
Miyuki Nitta* and Ohmi Ohnishi(1999)Genetic relationships among two Perilla crops,shiso and egoma, and the weedy type revealed by RAPD markers

栽培をお考えの方に

●エゴマの産地において栽培をお考えの場合は、まずは各産地市町村の生産者団体に参加されると良いでしょう。種子の入手、栽培技術の習得、補助制度の活用などを円滑に行うことができます。事務局・連絡先はインターネット等で調べるか、または、各自治体、各農業改良普及センター等にお問い合わせください。

●問い合わせ先の一例(2018年現在)
○岩手県軽米町内の方 :軽米エゴマの会 事務局 :軽米町産業振興課商工観光グループ
○宮城県色麻町内の方 :色麻町エゴマ振興協議会 事務局 :色麻町産業振興課担い手センター(電話0229-65-2154)
○福島県田村市内の方 :田村市役所農林課 (電話0247-81-2511)
○島根県川本町内の方 :川本町エゴマ振興協議会 事務局 川本町産業振興課 (電話0855-72-0636)

●これらの産地以外で栽培を始める場合は、産地視察などによって事前に調査を行ってから、取り組むと良いでしょう。

種子の入手先

●各産地では、産地内の生産者に限定した種子供給を行っている例がありますが、供給先を限定しない種子の提供元もあります。平成30年4月1日現在の情報(一例)を以下に示します。在庫、包装単位、価格等に注意してください。

◯一般社団法人日本エゴマの会・ふくしまでは、田村種中生黒種、田村種中生白種、晩生黒種(以上、子実用)、韓国葉食(葉食用)の4種の在来種の種子を販売しています。
〒963-4543 福島県田村市船引町中山宇田代380−4 電話番号 0247-86-2319 ▼ホームページ

◯日本エゴマ普及協会では田村種中生(黒)、田村種中生(白)、白川種晩生(黒)の3種の在来種(いずれも子実用)の種子を販売しています。
〒509-1222 岐阜県加茂郡白川町下佐1592 電話番号 0574-76-2725 ▼ホームページ

◯民間の種苗会社では葉食用の種子を供給しています。サカタのタネ ガーデンセンター横浜では国内在来種(由来は不明、葉食種、粒色は茶褐色)を販売しています。 ▼ホームページ