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マコモタケ(マコモ)

(2023年12月 改訂)

マコモの特徴

「由来と特徴」 
●「マコモ」は、日本をはじめ中国の東部から東南アジアに広く分布しているイネ科の多年草で、沼や川に群生するヨシやガマと同じ抽水植物(※1)です。
●古くから日本に自生しているものは、小型で内部に黒穂菌胞子が充満していて食用には適しません。
●食用の栽培種として、中国などから導入し改良された系統が栽培されています。
●この系統は、茎の中の花芽に黒穂菌が寄生し、根元の部分が筍状に肥大して、「マコモタケ」になります。収穫適期を逃し収穫が遅れると、マコモタケは肥大しますが、内部に黒保菌胞子が充満します。

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マコモ

※1 抽水植物:根が水底の土中にあり、茎や葉が水面から植えに伸びている水生植物

「利用法」 
●「マコモタケ」の食感は、タケノコに似たふくらみを持ち、乳白色の茎は柔らかく、その淡白な味はどんな料理にも合います。
●主として中華食材として利用されてきましたが、現在では和食やイタリアン、フランス料理などの食材としても利用されています。

苗の入手方法


●初めてマコモを導入する場合には、栽培地から前年収穫株を譲り受けます。または、ネット通販で苗を入手することもできます。

栽培

「圃場の準備」
●栽培圃場は、基本的には水稲と同様に耕起、施肥、代掻きを行います。
●できれば水管理が容易にできる圃場が望ましく、秋(収穫期)まで水が確保できる圃場ならば最適です。

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定植前

●栽培種のマコモは、暖かい地域の植物です。気温が上昇してから植付けを始めます。
●水稲と同様に施肥を行います。
●マコモは多肥に強く、事前に堆肥を投入するなどして地力を高めるようにします。

「苗の準備」
●苗は、親株(前年の収穫株が萌芽したもの)を鎌などで縦に分割(分割し難い場合は芽を潰さないように鎌で割る)する方法と、昨年の株元から伸びたわき芽を一旦掘取り、仮植して育苗する、2通りのやり方があります。
●伸びた葉は、定植後の蒸散を押さえるため、30cm程度にカットします。
●苗の必要量は、10a当たり700~1000株程度です。

「定植」
●定植時期は、4月下旬から5月下旬(水がない場合は導水後できるだけ速やかに)の範囲で早生から晩生までの系統を組み合わせて収穫期間を延ばすように工夫します。
●株間、条間(畝間)は100cmとします。
●古芽付きの萌芽茎2~3本を1苗として、倒状しないよう10cm程度の深さに植えます。
●あまりに栽植密度を上げると、収穫時の作業性が悪くなります。

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マコモ植えの様子

「定植後の管理」 
●苗が活着するまで(数日程度)は浅水とし、その後は深水管理に努めます。
●深水状態を保つことは、雑草を抑えることにつながります。
●除草のための登録農薬はありません。 
●水が豊富にある圃場では水草やアイガモ、コイ、フナによる生物を使った除草も有効ですが、鳥による食害や、水草は圃場外への流出に注意します。
●水田雑草の可繁茂は、水稲(本田除草あり)との輪作や田畑転換を行うと軽減できます。

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 :活着後 /  :生育期(必要に応じて除草作業を行う)

「防除」
●マコモはイネ科に属する植物ですから、イネに発生がみられる病害虫はマコモにも発生します。

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さび病

●さび病は葉に黄橙色の小斑点が現れ、次第に広がって行きます。激発すると全葉が黄化し枯死します。防除するには、生育初期に適切なかん水を行って地温を下げ、枯葉と黄化葉は直ちに取り除き通風を良くします。
●紋枯病は水面近くの葉に長円暗緑色の病斑を生じ、次第に拡大して中央部が灰白色の紋状の病斑になり、下部から上部へ広がりながら増えていきます。この時葉は次第に灰緑色になります。高温多湿で可繁茂になり通風と採光不良になると発生しやすくなります。防除するには窒素の多用を控え、黄葉や枯れ葉など病葉を除去します。結筍始期に水位を下げないようにして、病気の蔓延を防ぎます。

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ニカメイチュウ

●ニカメイチュウ(マコモメイガ)は年2~3回発生し、収穫を終わった株内で越冬し、翌春大きな被害を及ぼします。第2世代の発蛾最盛期が8月になるため、この幼虫がマコモタケの生食部に侵入し食害を及します。ニカメイガの蛹はマコモ下部の根株近くで化蛹するので、深水灌水することで防除ができます。農薬による殺虫は収穫75日前までにパダン粒剤4が施用できますが、収穫前日数が長いので散布時期に留意します。散布日時を記録し、収穫時に確認しましょう。

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ウンカ

●ホソミドリウンカは、連作すると大量発生することがあります。防除薬剤はないので、古葉を除去して風とおしと採光を良好にすると大量発生を軽減できます。降雨によって減少することもありますが、散水して洗い落すこともできます。マコモタケに付着しているときは、収穫調整時に流水に浸し洗い流します。

施肥例(10a当たり)
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「収穫」
●収穫時期は、暖地では早生系で9月上旬からはじまり、中山間地域での晩生系の遅い作型でも11月下旬までとなります。
●水を早く切ると、収穫時期をやや早めることができますが、収穫期間が短くなります。
●収穫時期まで水を張った状態でかまいませんが、作業性を考えて、落水するのが一般的です。
●圃場が乾き過ぎると品質が低下するので、必要に応じて走り水をします。
●茎の株元が太り、収穫適期になったものから、順次収穫します。
●収穫は2~3日ごとにおこないます。
●収穫が遅れると、外皮が緑化し、黒穂菌が茸の内部を斑点状に黒色変化させ、商品価値を下げるので、注意します。

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 :収穫適期のマコモ /  :収穫遅れのマコモ内部

「調製」
●外葉をはがし、中心部の白い部分が見えるようにします。
●ニカメイチュウの食害に注意します。ニカメイチュウは根本から侵入します。
●長さ20cm程度に切りそろえます。
●外葉を1枚つけた状態で調製する場合もあります。
●数量がまとまらない場合は、冷蔵庫で保管します。根側を上にしたほうが鮮度を保ちやすいようです。

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 :収穫したマコモ /  :マコモの直売

マコモの栽培歴
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執筆者 
西嶋政和
元 三重県農業改良普及指導員
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)

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