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野菜づくりの基本

2023年の天候と野菜の生育状況を振り返って

気温上昇の推移と2023年の気象

 2023年は、世界的にも有史以来、最も気温の高い年になったとの報道がありました。異常気象災害も世界各地で発生し、地球温暖化から沸騰化の時代に入ったと言われています。
 近隣の高層気象台(茨城県つくば市館野)では、西暦1921年から気象観測をしていますが、当地では、この間に気温が2.2℃ほど上昇しています。特に1991年以降、気温上昇が顕著になっています。

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 2023年の年平均気温は16.1℃と、観測以来、最高となりました。
 毎月平年値を上回り、特に3月、4月、8月、9月は1921年以降、最も高い月平均気温となりました。
 降水量は1274.5mmで、平年の1326mmよりも少なく、1月、4月、7月、10月、12月が特に少なくなっています。
 日照時間は2389.7時間で、1月、6月を除いて平年の2014.5時間よりも多く、7月、8月が特に多くなっています。

 表1 2023年の月別気象データ(平年は1991年~2020年の月平均気温)
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※降水量、日照時間は小数点以下四捨五入

2023年の野菜の生育状況

 露地野菜の生育の良し悪しは、天候に大きく影響を受けます。
 2023年は、高温、土壌の乾燥、日照等が原因と思われる、過去に例を見ないような生育障害が発生しました。これを記憶に留め、今後に活かしていきたいと思います。

(1)冬越し~春野菜
 1~2月は平年並みの寒さでしたが、3月に気温が急上昇したため、春収穫の野菜は10日ほど生育が早まりました。
 降水量は冬から少なめに推移し、土壌は乾燥していたので、週間天気予報を参考に、ダイコン、ニンジンのタネまき、ジャガイモ、サトイモ、キャベツ、ネギなどの植付けも1週間ほど早めました。
 4月11日が終霜日でしたが、ジャガイモの葉が一部枯れる程度で、他の野菜への影響はありませんでした。

 その他、気づいた点を以下に記します。

①冬越しのタマネギは、生育期の乾燥に加え、白色疫病、紅色根腐病の発生により小球であった。貯蔵中も、7~8月の高温下で腐敗が多く発生した。腐敗の症状から、乾腐病が原因と考えられた。
②11月上旬にタネをまいたコマツナは、冬の厳寒期の生育に関わらず、ハクサイダニの被害を受けた。
③ソラマメ、スナックエンドウにとっては好適な気候だったためか、作柄が良かった。

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左 :収穫期を迎えたスナックエンドウ
右 :健全な根(左)と紅色根腐病に侵された根(右)


(2)夏野菜
 春野菜の収穫と並行して、果菜類などの夏野菜の植付けがはじまります。
 苗の植付けは4月中旬~5月上旬に行いました。有孔ビニールをトンネル掛けにしましたが、高温日には葉焼けの恐れがあったため、裾換気を併用。植付けの際は地温を上げるため、透明ポリマルチを使用しました。
 土壌が乾燥していたため、灌水を心がけ、追肥は溶解性の高い肥料を溶かして施用しました。

①スイカの草勢は、例年より弱かった。7月の日中は、高温・土壌の乾燥と強い日射しで葉巻症状が出た例もあった。
(スイカは、品種により耐暑性が異なり、黒皮種は耐暑性があるといわれています)
②ピーマンは奇形果や日焼け果、尻腐れ果が多かった。
(ピーマンは果菜類の中でも乾燥、強光に弱いといわれていますが、奇形果の発生は品種間差が見られました)
③トマトは、高温・乾燥下で尻腐れ果の発生が多かった。着果も少なく、着色も悪かった。
④西洋カボチャの葉の黄化や枯れ上がりが早く、早目に収穫した。キュウリの草勢の衰えも早かった。
⑤サトイモ、ショウガは、土壌の乾燥で生育が抑えられた。
⑥極早生のエダマメを6月に収穫したが、いつもより草丈が低く、着莢数も少なかった。7月収穫の早生種は草丈、着莢数は普通であったが、豆の肥大が悪かった。8月初めにタネをまき、10月10日頃に収穫した早生種は、3分の2が空莢であった。
⑦高温下での蔓性インゲンマメでも落花や不稔莢が多く、正常な莢は見られなかった。

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左 :スイカのトンネル換気
右 :収穫時のカボチャ


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左 :エダマメのポリマルチ効果。マルチ栽培(左)と無マルチ(右)
右 :品種の違いによるピーマンの奇形果


(3)秋・冬野菜
 8月のタネまきや植え付けは、高温による発芽不良や枯死株の発生で、まき直し・植え直しをした例も多くありました。また、あまりの暑さで、作付けを例年より5日から7日程遅らせました。育苗では、細心の注意を払っても、発芽や成苗率の低下が見られました。特にレタス、ブロッコリーでの影響が大きかったように思います。

①長ネギは生育期の高温・土壌の乾燥で肥大が悪く、欠株も発生した。
②適温(気温10~20℃)下に入るとホウレンソウ、コマツナ、ダイコン、ハクサイなども生育が進み、大きくなった。
③ホウレンソウ(10月18日)、ニンジン(8月23日)、ダイコン(10月1日)、ハクサイ中生種(9月9日)なども生育が進み、予想に反して12月上~中旬には収穫期になった。
※( )内は播種日

④台風の襲来がなかったので、病気の誘発や株の損傷や欠株は出ず、11月以降、秋野菜の作柄は、過去に例を見ないほど良かった。
⑤ブロッコリーは9月の高温で花芽分化が遅れ、早生種や中生種の収穫は2週間程度ずれ込み、逆に高温で花芽分化が誘起されたレタス類は、抽だいが早かった。

 12月に入ると、第1半旬の気温が平均気温5.5℃、最高12.4℃、最低-0.6℃と冷え込み、生育にブレーキがかかると思えましたが、第2半旬の平均気温は9.3℃に上昇、乱高下しました。
 12月中旬までは晩秋のような気候で、野菜の生育が進みました。
 また、害虫(アブラムシ、アザミウマなど)の発生も続いています。
 野菜は気温が4~5℃に低下すると生育が止まり、地温8℃以下になると、根からの吸水が止まるとのこと。寒さに耐えるために体内に糖分を蓄えるので甘くなりますが、暖冬下では、この寒締め効果は出るのでしょうか。
   生育が進み、収穫・貯蔵調整ができない野菜は収穫が早まります。そのため、2~3月は品薄になる野菜が多くなるのではと、気になっています。

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左 :高温下での育苗
右 :花芽分化が遅れ生育旺盛になったブロッコリー


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いつもより生育が進んだ野菜

執筆者
瀧本 健雄
元 茨城県普及指導員 野菜専門技術員

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