秋野菜の畦立てとタネまき・植付け作業
秋野菜の生育期間は、春野菜とは逆の気象条件で、気温は高温から低温に下降し、日長も短くなり、日射量も弱まります。そのため、冷涼な気候を好み、低温や弱日照にも比較的強い葉物や根菜類が中心の露地栽培になります。秋から冬にかけては寒さで食味も良くなり、"旬"の野菜と言えます。
野菜の種類により、じかまきするもの、苗を植付けるものがありますが、適期に行い、冬の寒さが来る前に収穫、または、一定の大きさに育てておくことがポイントになります。
畑の準備作業としては、施肥、耕うんと整地、畦立てがあります。
1.必要な農具と資材
畦立て用鍬、レーキ、定規ロープ(テープで代用)、ポリマルチ(5条孔あきマルチ)、移植ごて、水とじょうろ、植付け用苗、タネまき用種子、ラベル、遮光ネット、トンネル支柱、防虫ネット、鉄杭、トンネルパッカー、マルチスティック、シート押えピン、直管(すじ播き溝つくり)、スケール など。
2.畦立て
畦の種類は、その高さによって、平畦(畦の高さが地平面とほぼ同じ)と、高畦(畦の高さが地平面より高い)などがあります。
どのような畦にするかは、
①野菜の種類
②降雨量の多少
③畑の排水状況
④作土層の深さ
⑤病害の発生状況 などから判断します。
○平畦 :畑の利用面積を広くとることができ、畦づくりの労力がかからない。中耕・培土を行なう時に除草もできる。
○高畦 :(長所)土を高く盛ることにより作土を深くすることができる、低地の湿害や病害軽減になるなど。
(短所)土壌が乾燥した状態では乾燥を助長し、植付け後の生育不良を招きやすい、労力がかかることなど。
平畦+ポリマルチ
平高畦(平畦と高畦の折衷型)
表1 畦の種類と作付けする野菜
●本畑の作土層の深さは20cmです。下層土は硬い粘土質土壌です。
●平高畦は畦の上に土を盛り、少し高くしたものです。
●平畦は耕耘したままの状態で植えたものです。
●シュンギク、ダイコン、コカブ、チンゲンサイは、本葉2~4枚時に間引きをして1株とします。
●ホウレンソウは、本葉1~2枚時に間引きをして株間を3~5cmにします。
3.ポリマルチの張り方
ポリマルチには沢山の種類がありますが、用途に応じて、黒の有孔ポリマルチ規格9515(孔径45mm)を使用します。幅95cmで、条間14cm×株間15cm間隔に5条の孔が開けられています。
(1)張り方の手順
●張る場所・マルチの幅に応じて、地表面を均平に整地します。
●マルチ幅に応じて、畦面が72~75cmになるように両端に溝を切ります。
●溝にマルチの裾(4隅)を合わせ、マルチスティックで固定します。
●マルチ面が地表面に密着するように土を溝に埋め戻していきます。
●埋めた部分の土は足で踏み固めます。
(2)マルチを張る際の注意点
●土壌が適度に湿っている状態が理想です。
●ポリマルチ面にしわができず、5条の孔がまっすぐ並ぶように張ります。
●風で飛ばされることがありますのでマルチの裾はしっかりと押さえます。
●高温期の使用では、植えた孔から暑い空気が出たり、マルチに接した葉が熱で枯れることがあります。透明や黒色のマルチの使用は控えた方が良いでしょう。
4.播種量の決定
購入した種子の小袋には発芽適温、1袋当たりの数量、発芽率、採苗本数が記入されており、それらを参考にしてください。
表2 植付け種子の例
●数量は市販されている小袋当たりの量です。
●シュンギクは好光性種子で覆土は薄くします。種子の吸水能力も劣るため発芽率が他の野菜に比べて低いため、密に播きます。
5.タネまき・植付け後の管理
(1)灌水を行ないます。
植付け後の灌水
(2)地温が低い場合は不織布(ポリプロピレン製)、高い場合は遮光ネット(ポリエチレン製)を地表面に発芽始めまで直がけします。
今回は遮光ネットを使用(タネまき後)
●使用する遮光ネットは幅1m、遮光率は70%です。遮光ネットの効果は、以下の通りです。
・地温を下げる。
・乾燥を防止する。
・強い雨から覆土した土壌面の保護などで発芽が安定する。
●畦面に直がけしたネットは"シート押さえピン"で飛ばされないように固定します。
●発芽後もネットを掛けたままにしておくと徒長するので、出芽初めにはネットをはずします。
(高温期に不織布を使用すると被覆面が高温になり、発芽不良となります)
(3)害虫防除には防虫ネット(ポリエチレン製)をトンネル掛けにします。
●畦幅は約80cmです。幅150cm、目合い1mmの防虫ネットをトンネル状に被覆します。
●支柱は120cm幅の畦にも対応できる210cmの長さのものを使用します。
●ネットは通気性が良いため、風の抵抗をほとんど受けないので、簡単に張ることができます。ネット押さえはトンネルパッカー、裾の押さえは鉄杭を利用すると便利です。
●1mm目合いのネットでは、微小なアブラムシ、キスジノミハムシなどの害虫の侵入防止効果が劣るので、注意が必要です。