ラズベリー(バラ科)
栽培のポイント
●栽培種は、フロリケーン結実性(一季成り性、夏季結実性)とプライモケーン結実性(プリモケーン結実性、二季成り性、秋季結実性) の2種があります。
●結実性の違いによって樹の特性、管理方法は異なります。
●成熟すると赤、黄、橙、紫、黒色になる様々な種類があります。
●多くは寒冷地での栽培に適します。
●多くは茎にトゲがあります。
●土壌酸性度は、中性からやや酸性が適しています。
●水はけと通気性がよく、やや湿り気のある土を好みます。
●1品種で結実します。
●地面から伸びる枝は、春以降に地下茎から発生する吸枝(プライモケーン)と前年に発生した吸枝が越冬した二年生枝(フロリケーン)から成り立っています。枝は最長でも2年までしか生存しないため、地上部が年々高く大きくなることはありません。
●地下茎が伸び、植えた場所から周辺に広がっていくので、不要な吸枝を取り除く必要があります。
品種
●赤色系
ラズベリー特有の芳香が強く、甘味と酸味の調和したすぐれた果実品質を持つ。
・フロリケーン結実性 :スキーナトップ、キャンバイ、チルコチン(チルコテン)など
・プライモケーン結実性:ナンタヘーラ、ヒンボートップ、ヘリテージ(ハリテージ)など
●黄色系
甘味が強く、酸味が少ないので、生食に適しています。豊産性です。
・ファールゴールド、ワインダーイエローなど
●黒色系
甘味があり、酸味が少ない。野性味のある独特な風味があります。抗酸化物質を多く含みます。
・ブラックキャップなど
植え穴の準備
●植え付けは、11月から12月(温暖地)、もしくは、3月萌芽前(寒冷地)に行います。
●地植えの場合、植え穴は、株(地下茎)が広がって欲しい場所に30cm×50~80cm、深さは20~30cmとします。
●地下茎で広がり、吸枝の発生範囲が広がりすぎるのが嫌な場合は、9~12号鉢やプランターに植えます。
植え付け
●腐葉土や堆肥などの有機物、肥料、用土を混合し、植え穴にすべて埋め戻し、盛り土状になった中央に再度、苗の根の容積に合わせて植え穴を掘り、浅植えになるよう植え付けます。
●異なる品種を地植えする場合は、伸びた地下茎によって隣の品種と混ざらないようにするため、5m以上離して植えます。
●異なる品種を育てる場合に、別々の鉢に鉢植えにすると、品種が混ざる心配はなくなります。
施肥
●地植え垣根仕立ての場合、垣根状の列1m当たり20g-20g-20g(窒素-リン酸-カリウム)を春先の芽吹く前に施用します。
●鉢植えの場合、1鉢当たり4g-4g-4g(窒素-リン酸-カリウム)を春先の芽吹く前に施用します。
・堆肥、腐葉土、ピートモスなどの有機質も一緒に施用するとよいでしょう。
・施用時には、土壌中に混入します。
垣根仕立てのほ場の様子
病害虫防除
●新しい茎葉が伸びる5~6月頃に、ケムシ類、シャクトリムシ類、ハマキムシ類が葉を食害します。エスマルクDFやバイオマックスDFなどのBT水和剤を散布します。
●灰色かび病の予防に炭酸水素ナトリウム(重曹)を開花期に散布します。雨よけがある場合は使用しません。
●収穫前から果実にアザミウマ類が発生し、果実の内部にも入り込みます。スピノエース顆粒水和剤を散布します。
●高温時にハダニ類が発生します。エコピタ液剤や粘着くん水和剤を散布します。
●収穫果実を取り残さないようにすることで、オウトウショウジョウバエの発生を抑制します。
整枝・せん定
「フロリケーン結実性とプライモケーン結実性に共通の事項」
●地面から発生している枝の合計本数を調整します。植え付け2年目以降は、地植えで垣根仕立ての場合6~8本/列・mに、鉢植えの場合2本/鉢にします。
●不要な吸枝と不要な場所から発生する吸枝を地面の高さ(できれば地中)で切り除きます。
●吸枝は、垂直方向に主枝のみを伸ばして、支柱に誘引します。収穫作業を効率的に行うことができます。
左 :不要な吸枝と不要な場所から発生する吸枝を地面の高さ(できれば地中)で切り除く
右 :吸枝は、垂直方向に主枝のみを伸ばして、支柱に誘引する
「フロリケーン結実性の事項」
●吸枝の本数は、植え付け1年目から、地植えで垣根仕立ての場合3~4本/列・m、鉢植えの場合1本/鉢にします。これで、2年目以降は、地植えで垣根仕立ての場合、春に地面から発生する吸枝(プライモケーン)3~4本/列・mと前年に伸長した吸枝が越冬した二年生枝(フロリケーン)3~4本/列・mとなり、合計で6~8本/列・mになります。2年目以降の鉢植えの場合は、プライモケーン1本/鉢とフロリケーン1本/鉢となり、合計で2本/鉢になります。
●収穫が終わったら、フロリケーンを地面の高さで切り除きます。
●落葉期に、残したプライモケーンをしっかりと誘引し、越冬させます。翌年の夏には果実が付く、結果母枝になります。
「プライモケーン結実性の秋果収穫のみによる一季成り栽培の事項」
●吸枝の本数は、植え付け1年目から、地植えで垣根仕立ての場合6~8本/列・m、鉢植えの場合2本/鉢にします。2年目以降は1年目と同じように管理し、プライモケーンだけで栽培を行います。
●プライモケーンの特定の節から先端部にかけて腋芽が伸長して、開花・結実します。
●プライモケーンに結実した秋果の収穫が終わったら、果実が付いていた節位まで切り戻します。
●落葉期に、約20cmの高さに切り詰めて越冬させます。
●春に新しい吸枝(プライモケーン)の発生を確認した後、越冬した枝(フロリケーン)を地面の高さ(できれば地中)で切り除きます。
「プライモケーン結実性の夏果と秋果収穫による二季成り栽培の事項」
●吸枝の本数は、植え付け1年目から、地植えで垣根仕立ての場合3~4本/列・m、鉢植えの場合1本/鉢にします。これで、2年目以降は、地植えで垣根仕立ての場合、春に地面から発生する吸枝(プライモケーン)3~4本/列・mと前年に伸長した吸枝が越冬した二年生枝(フロリケーン)3~4本/列・mとなり、合計で6~8本/列・mになります。2年目以降の鉢植えの場合は、プライモケーン1本/鉢とフロリケーン1本/鉢となり、合計で2本/鉢になります。
●プライモケーンの特定の節から先端部にかけて腋芽が伸長して、開花・結実します。
●プライモケーンに結実した秋果の収穫が終わったら、プライモケーンを果実が付いていた節位まで切り戻します。
●落葉期に、残したプライモケーンをしっかりと誘引し、越冬させます。翌年の夏には果実が付く、結果母枝になります。
●フロリケーンに結実した夏果の収穫が終わったら、フロリケーンを地面の高さで切り除きます。
ラズベリーの結果習性
今西 弘幸
秋田県立大学 生物資源科学部 准教授
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