種(タネ)について
はじめに
近年、新しい品種の育成に力を入れるメーカーが多くなり、抵抗性や耐病虫性の品種や家庭菜園向きの品種が増えつつあります。
また、栽培する時期に合わせた品種や、品質(形状、色、味、ビタミン、ミネラル等)の良いもの、作りやすい品種が多く出まわっています。
野菜をつくる場合、良いタネを選ぶことと、タネの性質をよく知っておくことが大切です。
よいタネの条件
●品種固有の特性をもっていること
●発芽率が高く、発芽がよく揃うこと
●よく充実して、乾燥・調整が正しく行われていること
●古いタネが混ざっていないこと
●ゴミや土・砂・雑草のタネが混っていないこと
●病害虫が付着していないこと
タネの発芽
タネの発芽には、温度と水分・光などが関係しています。
作物によっても異なりますが、発芽しやすい環境をつくりましょう。
「温度」
●15~20℃ の比較的低温を好む種類は、春と秋に栽培するホウレンソウ、キャベツ、ネギ、レタス類など、たくさんあります。
●20~30℃ の比較的高温を好む種類には、ナス、トマト、ウリ類、マメ類などがあります。
「水分」
●水分が足りないと、発芽力が弱くなります。発芽が揃うように、タネに十分水分を吸わせます。
「光」
●発芽するときに明るい方を好むキク科(レタス、シュンギクなど)、セリ科(ニンジン、ミツバなど)、シソ科(シソ、バジルなど)は、タネがかぶる程度にうすく土をかけます。
●ただ、覆土が薄いと乾燥しやすいなどのほか、タネの吸水能力なども発芽に影響するので、乾燥防止をするとともに、種子の発芽率などを参考に播種量を決めます。
タネの保管
まき終わったあとに残ったタネは、茶筒やのりの空き缶などを利用して、乾燥剤を入れ、低温・低湿の状態で冷蔵保管します。
タネは常に呼吸をしています。保管状態には注意しましょう。
コート種子などの加工種子は保存性が劣るので、使い切るようにしましょう。
いろいろなタネ
「使いやすく加工されたタネ」
●コート種子
小粒のタネを、播きやすいように、一定の大きさ、形状に加工したもの。ペレット種子・造粒種子とも呼ばれます。
●ネーキッド種子
かたい殻を取り除き、裸状にしたタネ。水分の吸収がよくなり、発芽がしやすくなります。
●シードテープ
パルプや綿、不織布や紙などのテープに、一定の間隔でタネを挟み込んだもの。畑にテープを引いて、土をかぶせるだけで、簡単にタネまきができます。
左上 :コート種子(左は普通のタネ) / 右下 :シードテープ
「F1と固定種」
●タネには自分の花粉で実る品種(=固定種)と、人工的に他品種と交配させて作る一代限りの交配種(=F1)があり、近年、F1のタネが増えています。
●F1のタネは、固定種に比べて作物の揃いがよく、収量や耐病性にも優れていますが、出来たタネをまいても同じものはとれないため、毎年タネを用意する必要があります。
●一代交配種は、タネの小袋の表面にF1と表記されているもののほか、種苗会社名を入れた「○○交配」と表記されているものもあります。
栄養繁殖
●「栄養繁殖」とは、挿し木、挿し穂、接ぎ木、取り木、株分け、組織培養などで繁殖する方法をいい、種子繁殖とは異なります。
●(たとえ、種子ができたとしても)種子から育てたものは、収穫までにある程度の期間が必要ですが、栄養繁殖の場合は、比較的短い期間で収穫することが可能です。
●交雑が起こるなど、純系(固定種)の維持が難しい野菜は、親にする植物体の一部(栄養体や根株)を元に栽培し、親と同形質の個体(クローン)を生産することができます。
●自家どりしたものを次作に使用することができます。
●「栄養繁殖」の短所には、以下があげられます。
①一度に大量の個体を生産することが困難。
②長期間(数年)保存することができない。
③ウイルスや菌に感染・保菌してする場合がある。
栄養繫殖野菜の例