大豆栽培における高速畝立て播種機等を活用した湿害対策の実演会を開催(埼玉県鳩山町)
2023年07月31日
埼玉県鳩山町にある農事組合法人 須江機械化組合では3年1巡のブロックローテーションを導入し、大豆栽培を行っている。しかし、この地域は谷津田(谷地にある田んぼのこと)であるため、丘陵部からの浸透水により地下水位が上昇しやすく、また、播種期が梅雨と重なるため、土壌が加湿になりやすい等の影響で播種作業の遅延や出芽不良が起こり、大豆の収量は年々低下している。
そこで埼玉県東松山農林振興センターでは今年度、全国農業システム化研究会事業を活用し、播種様式の違いによる湿害対策を実証し、安定栽培技術の提案と定着化を図ることとした。なお、播種前には排水対策の基本である、明渠とサブソイラ(2連、5m間隔、深さ30cm)、本暗渠を施工している。
7月11日、試験ほ場において播種様式の異なる機械を準備し、現地検討会を開催した。今回準備した播種機は「部分浅耕一工程播種機」と「高速畝立て播種機」の2種類。それぞれの概要、特徴は以下の通り。
なお当日は、気温が37℃を超える中、県普及関係者、JA、資機材メーカー、生産者等、約50名を超える参加者があり、関心の高さがうかがえた。
左 :埼玉県東松山農林振興センターの佐野農業支援部長による開会挨拶
右 :試験の概要を説明する東松山農林振興センターの加藤主任(左)
■部分浅耕一工程播種技術
左 :浅く耕起したところに播種(5cm程度)
右 :播種横の切り溝は約10cm程度の深さで、排水の役割を担う
■高速畝立て播種技術
播種速度は5~6km/h出るため、規模拡大しても迅速に作業を終えることができる
(クリックで動画再生)
当日の作業は、明きょや弾丸暗きょ施工時には地表面まで水が溜まっていたほ場も、地下水位が明きょの底(約30cm)程度まで低下し、播種作業に支障が出なかった。また、トラクタにパワクロ(セミクローラータイプ)を使用したため、旋回時の土壌の偏りもなく、終了後のほ場がきれいに(平らに)仕上がった。
近年は突然の豪雨も増え、大豆播種の好適日は、より少なくなっている。また、作付面積の拡大(20~30ha)が進むと一連の作業をスムーズに進められず、播き遅れやその後の除草剤散布遅れまで影響が出てしまう。
事前耕起なしで平畝の「部分浅耕一工程播種」が良いか、高速に畝立て播種ができる「高速畝立て播種」が良いかは、その年の天候を確認しながらその都度選べる形が最も良いと思われる。また、無人仕様のアグリロボを使用することで、隣のほ場の耕起と高速播種との同時作業が可能なため、より効率的な作業体系も確立できる。その地域に最も適した作業体系を検討し、大豆の収量増加の一助となることが期待される。(みんなの農業広場事務局)