茨城県特認品種「あきだわら」による、鉄コーティング直播栽培の実証調査(茨城県龍ケ崎市)
2015年05月14日
4月30日、茨城県龍ケ崎市内の圃場で、水稲の鉄コーティング湛水直播作業が行われた。
茨城県南部に位置する龍ケ崎市は、水田が広がる県内有数の穀倉地帯。水稲経営の規模拡大や生産者の高齢化が進んでいることから、同市を所管する茨城県稲敷地域農業改良普及センターでは、関係機関や資機材メーカーらと連携し、水稲作業の省力化や作業分散効果が期待できる鉄コーティング湛水直播技術の実証調査に取り組んでいる。
龍ケ崎市内に実証圃を設置して今年で2年目を迎える。なお、平成27年度全国農業システム化研究会(事務局 (一社)全国農業改良普及支援協会)の現地実証調査事業を活用している。
左上 :鉄コーティング直播作業
右下 :関係者が一致団結して作業に望む。指揮を執る稲敷地域農業改良普及センターの安田主任(右端)
今年は、クボタ鉄コーティング用直播専用機「WP60D-TC」に殺虫殺菌剤施薬機(後述)を装備し、次の作業が同時処理された。
①播種
②側条施肥
③除草剤散布
④殺虫殺菌剤散布(新規取り組み)
左上 :クボタ鉄コーティング用直播専用機「WP60D-TC」に殺虫殺菌剤施薬機を装備
右下 :上段:肥料、中段:殺虫殺菌剤、下段:鉄コーティング種子、左上が除草剤
直播栽培で課題となる「苗立ち率」を確保するため、細かな水管理をおこなうなど、土壌表面のやわらかさには特に注意が払われた。1mの高さからゴルフボールを落下させて、半分程度埋まるぐらいが適当なやわらかさとのこと。なお、昨年は鳥害が発生したことから、コーティング作業時に「キヒゲンR-2フロアブル」の塗抹処理を行った。
左上 :鉄コーティングされた種籾(内側にはキヒゲンR-2フロアブルを塗抹)
右下 :ゴルフボールを落下させ、圃場の状態を確認する安田主任と矢越技師(右)
もう1つ重要なポイントが雑草対策だ。今年は、水稲用除草剤「プレキープ1キロ粒剤」を除草剤散布機「こまきちゃん」で播種同時施薬した。なお、入水後には、「ゲットスター顆粒」の流し込みによる体系防除を予定している。
そして、新たな取り組みが殺虫殺菌剤の同時施薬だ。イネミズゾウムシの防除を徹底するため、殺虫殺菌剤「スタウトダントツディアナ箱粒剤」を散布した。
作業に当たっては、㈱クボタが秋に発売を予定する、鉄コーティング専用殺虫殺菌剤施薬機「土なかくん」のモニター機を使用した。溝切り→殺虫殺菌剤散布→覆土→播種、といった流れで、さらなる省力化が期待される。
左上 :こまきちゃんに水稲用除草剤「プレキープ1キロ粒剤」をセット
右下 :土なかくんに殺虫殺菌剤「スタウトダントツディアナ箱粒剤」をセット
左上 :播種、施肥、除草剤散布、殺虫殺菌剤散布を同時処理する
右下 :播種された鉄コーティング種子。殺虫殺菌剤は覆土されて見えない
実証調査に協力する生産者からは「昨年は、育苗作業が省けるなど、省力化を実感できた。また、育苗ハウスの増設にはコストがかかるので直播栽培が上手くいけば」と期待の声も寄せられた。「昨年の結果を踏まえた上で、実証圃から得られるデータを収集・分析し、収量や品質の改善を図り技術確立をめざしたい」と稲敷地域農業改良普及センターの安田主任は実証調査に力を注ぐ。
左上 :播種の間隔や粒数など播種精度を確認
右下 :残った資材を計量し、使用量を逆算。散布精度を確認する
引き続き、生育状況や薬剤の防除効果をはじめ、作業効率やコストなど経営面を含む各調査が予定されている。龍ケ崎地域の水田農業の発展のためにも、今後の調査結果が注目される。(みんなの農業広場事務局)