水稲フロート育苗技術に関する現地研修会を開催(広島県神石高原町)
2013年05月15日
水稲移植栽培において、育苗に関する労働時間の削減や労働強度の軽減、資材費の低減を図ることは、収益性の改善を進めるうえで極めて重要である。近年は、疎植栽培の普及が全国的に進み、使用苗箱数は低下傾向にある。また、箱当たりの播種量を増やし、大幅に箱数を減少させる、密播疎植栽培の実用化が進められている。そんな中、省力育苗技術として普及が進んでいるプール育苗は、密播条件においても、苗質の安定向上に有効とされている。
そこで、広島県神石郡神石高原町の株式会社 ヴィレッジホーム光末の圃場では、今年度から全国農業システム化研究会の実証調査事業として技術実証を行い、密播種とプール育苗、疎植を組み合せた苗箱削減技術の育苗作業における省力・低コスト効果と、水稲の苗質や移植精度、移植作業、生育・収量・品質に及ぼす影響から、密播疎植栽培技術の実用性を明らかにする。
プール育苗については、広島県立総合技術研究所農業技術センターで開発された「半浸水フロート式栽培法(浮き楽栽培)」を採用しており、5月1日、東部農業技術指導所主催による、水稲フロート育苗技術に関する現地研修会が行われた。
苗箱数低減を行うにあたり、メリットは以下の5点。
①育苗用資材費(培土等)の低減
②育苗用ハウスの建設・維持コストの低減
③育苗器の購入・維持管理コストの低減
④育苗管理労力(苗箱運搬、水管理、温度管理)の低減
⑤田植え時の苗運搬作業・補給作業時間の低減
今回の実証では、べたがけ被覆による平置き無加温出芽技術も取り入れ、育苗管理労力の、さらなる低減も図る。出芽までに少し時間を要する難点はあるが、育苗運搬労力の低減、育苗器不要、さらに苗質の向上等のメリットが期待できる。
また、浮き楽栽培のポイントは、以下の4点である。
①フィルムと角材、C型鋼などで作成したプールに浮かばせるのみ
②灌水作業が不要
③浮かんで水平を保つので均平な整地作業が不要
④同一設備で水稲育苗と葉菜類栽培が可能
広島県立総合技術研究所農業技術センター 柳本氏から浮き楽栽培の説明
通常のプール育苗と異なるところは、均平作業が不要となり、省力化が図れることに加え、苗箱の移動が棒で軽く突く程度で済むこと、プール内へはローラーコンベアで滑り入れるため、腰をかがめる作業がなくなり、軽労化が図れることだ。
また、同じ設備を使って、青ジソ、コマツナ、リーフレタス等の葉菜類を浮き楽栽培で生産することができ、育苗ハウスが有効活用できる。
左上 :発砲スチロール製板(フロート)
右下 :発泡スチロール製板(フロート)の上に並べた苗箱が半浸水状態で浮かんでいる
左上 :左側が密播区(催芽籾246g/箱)、右側が標準播種区(催芽籾161g/箱)
右下 :熱心に観察する参加者
浮き楽栽培が行なわれている事例はまだ多くないため、東部農業技術指導所では、事例を重ねて、今後の普及拡大を図る。(みんなの農業広場事務局)