水稲の省力・低コスト・安定生産技術に関する現地検討会の開催(山形県寒河江市、庄内町、鶴岡市)
2011年10月14日
9月15日、16日の2日間、山形市内において水稲の省力・低コスト・安定生産技術に関する現地検討会が行われた。水田の効率的利用が急務となる中、水稲栽培において新規需要米、主食用米ともに販売価格は低迷しており、省力・低コスト・安定生産がキーワードとなっている。全国農業システム化研究会ではこれらのキーワードに着目した実証調査を行っており、今回、この実証調査に取り組んでいる山形県において、現地検討会が開催された。
初日の15日は実証圃場での現地検討を行った。
1カ所目は寒河江市の圃場。品種は「はえぬき」である。クボタ「鉄まきちゃん」による鉄コーティング直播(点播)の実証を行っている。生育は順調で、隣接のカルパーコーティング直播と比べて、差はみられなかった。担当農家からは、鳥害が少ないとの評価があった。
山形県農林水産部生産技術課 瀬野氏から県内の直播取組状況の説明
続いて2カ所目は庄内町の圃場。品種は同じく「はえぬき」。ここでは鉄コーティング直播の条播と点播を比較した試験を実施している。
左上 :山形県庄内総合支庁産業経済部農業技術普及課 阿部氏から実証ほの説明
右下 :黄金色に色づいた稲
最後に、鶴岡市内にある水田農業試験場。ここでは水稲新品種「つや姫」誕生までの育成経過やブランド化戦略の説明を受け、「つや姫」の試食も行われた。その後、場内の試験圃場へ出向き、品種育成状況等を確認した。
左上 :水田試験場長の大渕場長から「つや姫」の説明
右下 :水田農業試験場内の試験圃場
2日目の16日は、室内での講演及び事例報告等による検討会が行われた。
●鉄コーティング直播の概要と取り組みについて(株式会社クボタ 機械営業総括部 宮越彊氏)
鉄コーティング直播の概要やメリット、普及状況について報告があった。平成19年の時点ではまだ7県で76haの取組みしかなかったが、近年急速に拡大し、平成23年には43府県2931haにまで広がっている。
●省力・低コスト・安定生産技術に関する近年の研究動向について(農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 稲研究領域 吉永 悟志氏)
直播栽培の安定化をテーマに、①出芽苗立ち安定化②点播水稲の特長③直播水稲の品質特性について、具体的な研究データを示しながらの報告があった。
農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 稲研究領域 吉永 悟志氏の話題提供
●庄内地域での水稲省力・低コスト栽培取組事例(山形県庄内総合支庁農業技術普及課 阿部 誠司氏)
庄内地域における、水稲直播栽培の取組状況および、鉄コーティング直播実証調査試験の中間成績の発表が行われた。JA余目町管内では、当初はカルパーコーティングが主流であったが、今では鉄コーティングで統一されている等の報告があった。
山形県庄内総合支庁農業技術普及課 阿部 誠司氏による事例発表
●飼料用米の省力・低コスト・多収穫技術の実証調査(H22~H23年度)(滋賀県農業技術振興センター 谷口 真一氏、滋賀県大津・南部農業農村振興事務所 吉田 貴宏氏)
平成22年~23年度にかけて取り組んでいる実証調査について、鉄コーティング直播の点播栽培、散播栽培、疎植栽培と慣行区の比較結果の報告があった。慣行区よりも作業時間が短縮され、家族労働報酬を加味すれば、純利益が向上することが明確になった。また、収量の安定確保への課題も報告され、今年度行っている施肥方法の比較試験の状況説明があった。
滋賀県大津・南部農業農村振興事務所 吉田 貴宏氏による事例発表
その後、兵庫県立農林水産技術総合センター 企画調整・経営支援部 鍋谷氏の司会による総合検討会が行なわれ、各県から鉄コーティング直播取組状況に関する報告があり、情報交換が進められた。また、鳥害に関する質疑や事例報告等、現場の課題解決に直結する検討が行われた。
左上 :総合検討会
右下 :総合検討会では熱のこもった議論が繰り広げられた
今回、2日間で北は青森から南は鹿児島まで、全国各地から普及指導員、機械メーカーなど約70名が参加した。現地視察や室内検討、総合検討等では皆、来年の作付けに向けて熱心に検討を行った。(みんなの農業広場事務局)