提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


常識を変える!「50℃洗い」で広がる野菜の可能性

2012年11月08日

~提唱者、料理研究家、生産者が可能性や実践を報告~


 最近、注目を集めている「50℃洗い」をご存じだろうか。
10月26日、NPO法人野菜と文化のフォーラムが主催した講演会『「50℃洗い」で広がる野菜の可能性』が開かれ、平山一政(スチーミング調理技術研究会代表)、タカコ・ナカムラ(料理研究家)、波部和実(農業生産者)の3氏が、それぞれ「50℃洗い」との出合いと実践を発表した。



 平山一政氏は、50℃洗いの効用を知るに至った経緯をまず紹介。専門は蒸気の利用。調理加熱に蒸気を利用する際に、どのような温度や状態が野菜に最適かを求めたところ、省エネの観点からも、蒸す温度を下げていくと、野菜がおいしくなることを発見。そして蒸すよりも洗う方が野菜の汚れや土がとれ、水より温水のほうが、汚れが落ちやすく、50℃前後の温水に一定時間浸すと、しおれた野菜が甦る(※1)とわかった。なぜ50℃なのか。細胞の酵素が関係しているとみられている。

 科学的な裏付けはこれからだが、「50℃洗い」を調理前の野菜の下処理に利用すると、おいしくなる、鮮度がよくなる(甦る)、保存性がよくなる等を、試した人の多くが実感しているという。レストランのシェフ等が食材に利用を始めたところもあるという。また、野菜に限らず、肉、魚、花にも有効ということだ。
※1 野菜の状態による。全ての野菜が甦るわけではない


  
タカコ・ナカムラ氏(左)と波部和実氏(右) 


 タカコ・ナカムラ氏が50℃洗いを知ったきっかけは、7年ほど前に知った低温スチーミング(90℃以下)されたニンジンの甘さだったという。その後、50℃洗いすると野菜がおいしくなるという、それまでの料理の常識に合わない事実に直面。もともとプロの料理家ではなく、先入観がなかったことで50℃洗いを積極的に試し、鮮度アップ、日持ちアップ、あくが取れて苦み酸味等が消えること等を確かめた。「料理は科学だ! と感じている。50℃洗いは、まだ発展途上の技術。これからも発見があるだろう」


 波部和実氏は、50℃洗いを農業の現場で実践。兵庫県丹波篠山で黒豆を中心に栽培する。夏場のトウモロコシ栽培でのお湯の利用を紹介。土作り、苗づくりから湯を散布し、生育段階でもお湯をかける。作物は順応するので購入苗は50℃、自家苗は55℃から始めて慣らし、63℃まで耐えるようになる。収穫時にはトウモロコシを50℃で洗う。「土作りにもお湯を使う。密植栽培が可能となり、稲では分けつ数が格段に上がる。トウモロコシでは糖度が上がり、保存性もよい。なにより、食べる人の健康によいものを作りたいと思っている」。

 野菜の成長が早まり、防虫効果もみられた。また、畑の地温が真冬でも3℃高いのは、微生物の活動が活発だからではないかとのこと。
右写真 波部氏(左)と平山一政氏(右) 


 まだわからないことが多い50℃洗いであるが、実践が進むとともに科学的知見も深まっていくことが望まれる。(みんなの農業広場事務局)