提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ナス新品種「ひごむらさき」の産地を訪ねる(熊本県阿蘇郡高森町)

2008年11月10日

 熊本県が育成した、大きなナス「ひごむらさき」。いつか産地を見てみたいと思っていたが、このほどようやく生産者を訪ねることができた。


 「まずは生のままかぶりついてほしい。おいしさがよく分かると思う。」生産者の森田勝さんは、自信たっぷりにこう話す。


普通のナス(黒陽)と比べてみると大きさがよくわかる  生産者の森田勝さん
左 :普通のナス(黒陽)と比べてみると大きさがよくわかる /右 :生産者の森田勝さん


 トロッコ列車で有名な、熊本県阿蘇郡高森町。風光明媚なこの土地は寒暖の差が激しく、ナスの栽培に適しているという。農業試験場が県内に多くある在来品種を集め、交配・選択して育成された品種である「ひごむらさき」は、まだ新しい品種で、本格的に栽培を始めてから、まだ5、6年しかたっていないという。

 高森町の農家のうち、何人かが「ひごむらさき」に惚れ込み、地域や県を巻き込んで、うまく産地化が進んだ。メロンの栽培から、ひごむらさきに切り替える生産者も少なくないようだが、県内の栽培面積は3.5haで、まだそれほど多くはないという。


 ハウスに入ると、ナスの大きさにおどろかされる。遺伝的に角が出やすいのが特徴だと言うが、「角があるものは出荷がむつかしい」。


  

 箱詰めの際に、角の部分が折れやすく、またこの角を、農薬などによる奇形と思い、敬遠する消費者が多いと言う。メディアを積極的に利用するなど、角付きナスについていろいろとPRを試みたが、効果は出ていない。

 そのため、角が出そうなものは、花のうちに摘んでしまうそうだ。
 これだけ大きく育てるには、ホルモン処理や摘芯摘葉など、きめ細かな手入れも必要。夫婦二人で20aがやっとで、これ以上栽培すると品質が落ちてしまう。「ナスは本当に手間がかかる」。


 それでも、森田さんのハウスには、角付きのナスが多く見られる。
 「角ができるのはひごむらさきの特性。角をなくすような改良をすると、このナス特有のおいしさが失われてしまうだろう」と森田さん。「このナスのよさを、一人でも多くの人に知ってもらいたい」という。


  
 


 おみやげにいただいたナスにそのままかぶりつくと、ほのかにりんごのような香りがする。
 軽く塩を振り、生で食べるとみずみずしい味わいが楽しめ、加熱するとトロリと濃厚な味わいで、いくらでも食べられる。

 「都市近郊なら、もっと大規模に栽培できるだろうが、ここでは輸送コストの関係でむつかしい」とのことだ。近くの直売所では、あっという間に売り切れてしまうという。首都圏でも販売される日が来ることが待ち遠しい。(みんなの農業広場事務局)