提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


暖地向き無エルシン酸ナタネ新品種「ななはるか」

2014年06月13日

はじめに
 ナタネは、古来より日本における重要な油糧作物です。しかし、生産量は減少の一途をたどり、1991年東北農業試験場が、無エルカ酸(※)品種「キザキノナタネ」を開発し、また2011年からの経営安定対策にナタネが戦略作物として取り上げられたことから、食油として改めて見直されるようになりました。しかし、国内の西南地域に向く品種は品種としては温暖地向きの無エルシン酸品種「ななしきぶ」のみで、九州等暖地においては晩生であり、成熟期が梅雨期にあたり、収穫物に穂発芽等が見られ、ナタネ普及の障害となっており、梅雨を回避して収穫できる早生の新品種の開発が望まれていました。

従来の菜種油にはエルシン酸という心疾患に関係する脂肪酸が含まれていたため、この脂肪酸を含まない無エルカ品種が開発された。


育成経過
 「ななはるか」は、1995年、九州向きの早生の「チサヤナタネ」を種子親、早生で無エルシン酸の「盛脂148」を花粉親として交配し、九州沖縄農業研究センターにおいて初期世代の選抜を実施し、その後、系統育種法により選抜を継続し、2003年より「東北96号」の地方番号により、鹿児島県他で地域適応性を検討してきました。2012年はF17世代にあたり、2013年に品種登録出願をしました。


201405nanaharuka_1.jpg
写真1 「ななしきぶ」(左)と「ななはるか」(右)


品種の特性
 「ななはるか」の形態的特性は、「ななしきぶ」より、草丈が低く(写真1)、莢の長さがやや短くなっています。生態的特性として、開花期及び成熟期は、「ななしきぶ」よりやや早いです。(表1、写真2)


表1 育成地(岩手県盛岡市)における「ななはるか」の特性
201405nanaharuka_h1.jpg
(クリックで拡大します)


201405nanaharuka_2.jpg
写真2 「ななしきぶ」(左)と「ななはるか」(右)


 収量は鹿児島県東串良町における現地では、子実重が「ななしきぶ」と比べ、94%であるのに対し、含油率が「ななしきぶ」より高い42.8%であり、結果的に収油量が「ななしきぶ」と同程度の99%でした(表2)。また、菜種油中の脂肪酸におけるエルシン酸含有率は「ななしきぶ」と同様0.0%です。鹿児島県の実需者により搾油された生油の食味試験の結果、「ななしきぶ」に比し、味で良い評価が出ました(表3)


表2 鹿児島県東串良町おける「ななはるか」の特性
201405nanaharuka_h2.jpg
(クリックで拡大します)


表3 「ななはるか」の食味試験成績
201405nanaharuka_h3.jpg
(クリックで拡大します)


栽培上の留意点
 他のナタネ品種やアブラナ科植物との交雑防止のため、隔離された採種圃場で種子を増殖する必要があります。一般栽培では、購入種子を使用する方がよいと考えられます。
 菌核病は、ナタネの重要病害です。菌核病対策として、防除のほか、過度の密植及び多肥栽培を避け、輪作等の耕種的防除に努めてください。
 

成果の活用
 「ななはるか」は、九州地域の実需者1社及び種苗業1社他と許諾契約を結び、増殖中です。早生品種の「ななはるか」は、九州において梅雨期の収穫を回避することが可能なので、高品質の菜種油が生産可能になると考えられます。九州地域が国産菜種油の生産基地として復活することが期待されます。


執筆者
(独)農研機構 東北農業研究センター 畑作園芸研究領域 上席研究員
本田 裕