提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


浮き楽栽培法による水稲育苗について

2014年03月14日

研究の背景とねらい
 近年、全国的に集落営農の法人化が進み、稲作体系の大型化に対応できる低コスト省力育苗技術と、育苗ハウスの遊休期間を利用した園芸品目栽培技術が求められています。そこで、広島県農業技術センターでは、これらの両方の要望を満たす技術として、「浮き楽栽培法(旧名:半浸水フロート式栽培法)」を開発しました。


技術の概要
 「浮き楽栽培法」とは、縦61×横92×厚さ2.5または3cmの発泡スチロール製フロートに、培地を充填し、発芽・緑化処理済の水稲育苗箱3箱を搭載し、育苗箱全体の自重により底面が5mmほど浸水した状態で、プールに浮かべて管理する方法です(図1)


201403hiroshima_ukiraku_z1.jpg
図1 浮き楽栽培法 模式図(断面)


特徴とメリット
●育苗箱底面が常時浸水した状態(半浸水状態)なので、かん水作業は不要です。
●浮かんでいるので、わずかな力で水面を滑らせるように育苗箱を移動させることができ、運搬作業を省力化できます。
●フロートが浮かんで水平を保つので、プール設置地面を精密に整地する必要がありません。
●すべて市販の資材を用いるので、低コストで簡単に取り組めます。
●同様の設備で、葉菜類栽培も可能です。


技術の内容
(1)プール、フロートの準備
 C型軽量鉄鋼、塩ビパイプ、木材等の枠と0.1mm厚のビニルフィルムを用いて、水深5~7cmを維持できるプールを作製します(枠の高さは10cmが良い)。
 発泡スチロール製フロートは、市販の断熱材を上記の大きさにカットして使用します。


(2)培地の量
 育苗箱底面が5mmほど浸水した状態で浮かぶ培地重量(床土と覆土を合わせて)は、フロート厚が2.5cmの場合は3.8kg/箱、3cmの場合は4.5kg/箱です(表1)


201403hiroshima_ukiraku_h1.jpg


(3)育苗
 慣行育苗と同様に、塩水選・消毒・催芽処理済みの種籾を育苗箱に播種し、28℃に設定した育苗器で出芽させます。
 しっかり出芽・緑化した苗を、順次フロートに載せてプールに浮かべます。この時、ハウス入口からプール内へローラーコンベアを設置し、育苗箱を載せたフロートを滑り入れる方法で行うと、作業姿勢が楽になります(図2)。また、浮いているフロートは、棒で操作するだけで整列できます(図3)
 夜間の気温次第では不織布等をべた掛けして保温しますが、日中は必ず取り除きます。均一な給水とプール水の比熱効果により、慣行育苗よりも成長が早く、ルートマットも十分に形成されます(表2、図4)


201403hiroshima_ukiraku_z2.jpg  201403hiroshima_ukiraku_z3.jpg
 :図2 ローラーコンベアを利用した搬入方法
 :図3 フロートの整列方法


201403hiroshima_ukiraku_h2.jpg


201403hiroshima_ukiraku_z4.jpg
図4 ルートマット。頭上かん水(左)と浮き楽栽培法(右)


(4)葉菜類栽培
 同様の設備で、リーフレタスやコマツナ等の葉菜類栽培が可能なので、水稲育苗終了後のハウス利用に有効です(図5)。基本技術は同じですが、葉菜類栽培用の培地を作製し、酸素欠乏を軽減するために、水中ポンプによるプール水の循環を行う必要があります。


201403hiroshima_ukiraku_z5.jpg
図5 浮き楽栽培法によるリーフレタス栽培


【参考資料】
浮き楽栽培法マニュアル (広島県農業技術センター掲載)
水稲育苗編
葉菜類栽培編 


執筆者
広島県立総合技術研究所 農業技術センター
柳本裕子

(それぞれの図表はクリックで拡大します)