提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


果樹王国山形からニューフェイス誕生! 四季成り性イチゴ「サマーティアラ」

2011年01月25日

 山形県では四季成り性イチゴ新品種「サマーティアラ」(右下写真)を育成し(平成20年12月品種登録出願公表)、夏秋どりイチゴの産地化を目指しています。今回はこのオリジナル新品種「サマーティアラ」の育成経過と品種の特徴について紹介します。


はじめに
四季成り性イチゴ新品種「サマーティアラ」 イチゴは、生食はもちろんケーキなどの業務用にも多く利用され、一年中需要のある品目です。しかし、6月~10月の夏秋期は国内の出荷はほとんどなく、輸入イチゴが使われています。一方で、国産イチゴに対する需要は強く、夏秋期のイチゴ生産への期待は大きくなっています。


-四季成り性品種とは-
お馴染みの「とちおとめ」など一季成り性品種では、日長が短くないと花芽分化しないため、長日となる夏に開花させて果実を収穫することはできません。
これに対して、四季成り性品種は、日長が長い場合に花芽分化し夏でも開花するため、夏秋期に果実が収穫できます。 


山形県におけるイチゴ育種

 山形県庄内産地研究室(旧砂丘地農業試験場)では、昭和60年からイチゴ育種を始め、当初は県内で生産が多い低温カット栽培に向けた一季成り性品種の育種に取組んでいました。この成果として、平成15年に「おとめ心」を開発しましたが、本県での低温カット栽培は、収穫時期が4月~6月上旬となり、イチゴ価格が低迷する時期にあたるため、これ以上の発展が難しいことが課題となりました。


●新たな可能性を求めて四季成り品種の育種に挑戦

 そこで、新たな可能性として、四季成り性品種を利用した夏秋どり栽培に着目しました。
しかし、四季成り性品種を利用すれば、夏秋期にイチゴを出荷できるかというと、必ずしもそうではありません。イチゴは17~23℃付近の温度を好むため、夏の暑い条件下での栽培は難しいのです。山形県は、東北地域の太平洋側に比べると夏の日射量が多く気温も高くなります。既存の四季成り性品種を用いた山形県での栽培は、かなり困難な状況がありました。また、四季成り性品種は一季成り性品種と比べて食味が劣るという課題もあります。

 これらの課題を解決して、山形県で夏秋どりイチゴの産地を育成するために、平成14年から本県での四季成り性品種の育種を始めました。育成に当たっては、果実硬度と大果性、一季成り性にせまる糖度を目標としました。


●「サマーティアラ」誕生

 「サマーティアラ」は平成14年に四季成り性品種「Selva」と一季成り性品種「紅ほっぺ」の交配により誕生しました。その後数年をかけて調査を重ねた結果、優れた特徴をもっていると判断し、平成19年に試行No.(砂丘S6号)を付与し、市場や実需者から多数のご意見をいただいた上で、平成20年に品種登録出願を行いました。
 

サマーティアラの特徴

●果実の特徴


果実は鮮やかな赤色で光沢があります。
また、長距離輸送にも耐える硬さです。



こちらは「サマーティアラ」を使ったショートケーキです。果実を切ったときの断面も鮮やかな紅色をしているため、クリームに色が映えます。

 実需者からは「サマーティアラは果実の色がキレイ。味も濃く、生クリームとの相性も非常に良い」と好評価を得ています。


果実の糖度はこれまでの四季成り性品種に比べて高く、酸味とのバランスも優れています。
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表 果実品質(H20)


●収量
6月~11月の期間を通して収穫することが可能です。果実も大きく9~18gの果実の収穫比率が全体の6~7割程度あり、多収が期待できます。

summertiara_zu1.jpg
可販収量の推移(H21 現地試験)


●生育特性
花房の発生は穏やかですが、連続して発生します。また、発生が多すぎないため、心止まりになることが少ない特徴があります。

summertiara_zu2.jpg
月別にみた株あたりの花房数(H20)
各月30日に収穫実績のある花房をカウント


花房当たりの花数も多すぎず、摘果作業の労力が軽減できます。


ランナー発生は他の四季成り性品種に比べて同等以上であるため、ランナーによる安定した増殖が可能です。


今後の計画

 平成22年度は、「サマーティアラ」のデビューの年となり、県内各地域で栽培が始まりました。しかし100年に1度といわれる猛烈な高温に見舞われ、期待通りの特性が発揮できない圃場が多数ありました。

 このため、県内の試験研究機関と連携して、「サマーティアラ」による夏秋どりイチゴの産地確立を目指して安定生産技術の開発に取組んでいきます。


なお、「サマーティアラ」の種苗譲渡は、現在のところ山形県内の集出荷団体のみに限られています 


執筆者 
山形県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室
上田七瀬

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