提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


海を渡って来るやっかいなムシたち

2007年04月25日

はじめに
 トビイロウンカ(以下トビイロ、写真1)は坪枯れ(写真2)の、セジロウンカ(以下セジロ、写真3)は移植直後の生育抑制の原因となるため、それぞれ水稲の重要害虫と位置付けられてきた。

 アドマイヤー剤やアプロード剤など、効果の高い薬剤が使用されるようになり、被害は減少し、重要性も低下していた。しかし、平成17年から発生が増加し、再び問題害虫として取り上げられるようになっている。


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写真1 トビイロウンカの雌成虫


ウンカはどこから来るのか
 トビイロとセジロは北回帰線より南の亜熱帯でしか越冬できない。つまり、日本で越冬できない害虫である。では、どこから来るのか。

 日本に来るウンカの発生源はベトナム北部と考えられている。発生源から季節風に乗り、中国南部や台湾を経由しながら増殖を繰り返し、最後に日本へたどり着く。このため、トビイロとセジロは海を渡ってくる害虫、「海外飛来性害虫」と呼ばれている。

 日本へ渡ってくる時期(飛来時期)は、主に梅雨期である。これは、移動に利用する季節風が、日本上空の梅雨前線に向けて中国南部や台湾から吹き込むためである。


 現在、気象情報をもとに、飛来の有無を予測するシステムが作られており、その結果は、独)中央農業総合研究センターのHP(「リアルタイムウンカ飛来予測」のボタンから)で見ることができる。


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写真2 トビイロウンカによる坪枯れ


発生が多くなった理由
 原因の一つは、渡ってくるウンカの数(飛来量)が増加したことである。平成17年にベトナム北部で始まった多発生は、中国南部、台湾へも波及した。その結果、日本への飛来量も増加し、多発生のもととなった。
 飛来量が増えても、上手に防除できれば問題は発生しない。では、なぜ多発生したのか。


 現在の防除は、高い効果を長期間保つ箱施薬剤(以下箱剤)を中心に組み立てられている。このため、本田防除の必要性が薄れ、適期防除が実施されなくなっている。しかも、主要な箱剤のウンカに対する効果が低下しており、現行の防除体系で発生を抑えることができなくなってきている。

 この2年間に起こった多発生は、これら複数の要因が重なったことで起きたと考えられる。


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写真3 セジロウンカの雄成虫


今年は本田防除の準備を
 現在、使用されている箱剤の多くは、アドマイヤー剤またはプリンス剤が混合された薬剤である。これらの箱剤はトビイロ、セジロの発生を2カ月程度抑えることができた。

 しかし、平成17年からアドマイヤー剤のトビイロに対する効果、プリンス剤のセジロに対する効果が低下し、その残効は30日程度と短くなっている(図1、2)

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 このため、箱剤にアドマイヤー混合剤を選択した場合はトビイロに対する、プリンス混合剤を選択した場合はセジロに対する本田防除が不可欠となっている。

 ベトナム北部の多発傾向は現在も継続しており、ウンカの飛来は本年も多いと予想される。このため、使用した箱剤の種類を考慮して、本田防除を準備しておく必要がある。


 各県の病害虫防除所では、ウンカ類の飛来量と時期,防除適期の情報をホームページで提供している。トビイロ、セジロの被害を防ぐためには、これらの情報を利用しながら、個々の水田における発生状況を把握し、本田防除を適期に実施することが重要である。


執筆者  
熊本県農業研究センター生産環境研究所
行德 裕