提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


耕耘同時畝立て播種技術により大豆の安定栽培をはかる

2007年04月04日

はじめに

 大豆は、種子が短時間でも湛水すると、発芽率が著しく低下するとともに、生育に適する地下水位は、30~40cmといわれており、湿害に弱い作物である。一方、大豆は稲やトウモロコシ等に比べて種子が大きいため、発芽時に必要な吸水量が多いという特徴がある。そのため、特に北陸や東北などの排水不良の重粘な土壌で、水田転換畑を中心に栽培が行われている大豆では、播種時には湿害による発芽不良、生育時にも湿害による生育停滞が発生する。

図1 耕耘同時畝立て播種作業機の爪配列

 一方、梅雨に入る前の土壌が乾燥する時期に播種を行う場合は、有効水分範囲が少なく砕土性が低下しやすい重粘土では、乾燥による発芽不良も問題となる。
 大豆は発芽から初期生育までをスムーズに行うことが、後半の生育、雑草の抑制等に効果があるため、気象条件に影響されず安定して発芽をさせ、その後湿害を回避しながら生育させることが重要である。

 これらの課題を解決するために、播種時から「畝立て」を行うことで種子の湛水回避と生育中の湿害回避を行い、「耕耘同時播種」により乾燥による発芽不良を防ぎ、「アップカットロータリ」で砕土性を確保し、作業性を向上させる「一工程」作業機を開発した。


作業機の構造

図2 耕耘同時畝立て播種作業機

 作業機はアップカットロータリの耕耘爪取り付け方式をホルダー型にし、爪の曲がり方向を播種位置に揃えることにより、耕耘と同時に畝立てを行う構造である(写真1)。後方に施肥播種機を装着して、すべてを一行程で行うことが可能である。一度耕耘した後に成型板等で畝を立てて播種する方法もあるが、重粘で湿った土壌条件では、土壌の練り返し等が発生する場合がある。そのため、開発機は未耕耘圃場に対し、トラクタによる一回の作業で耕耘・畝立てから播種作業までを行うことができる。
 整地板の位置は、畝を崩さないように少し上げた状態で固定し、畝高さの調整も整地板の位置で行う。施肥播種機に加え薬剤散布機等も取り付けられる。作業機は、耕耘幅により二条用と三条用の耕耘同時畝立て播種が可能となっている(図2)。


技術の特徴と効果

図3 耕耘同時畝立ての生育状況

 アップカットを使用しているため、ダウンカットに比べ作業速度を速くしても表層の砕土率は比較的高くなる。適応トラクタは、2条用で30~45PS、3条用で60~85PS程度。作業能率は、装着するトラクタや土壌条件等により異なるが、2条用では1ha/日、3条用では1.5ha/日が目安となる。
 これまでの試験では、降水量の多い年でも少ない年でも苗立ちは安定している。生育途中は、特に常に地下水位が高い地域、大きな降雨があった場合等に湿害が回避され、生育が安定する(図3)。畝立て栽培は播種位置が高いため、地下水位が相対的に低くなり、土壌水分も低下する。さらに、土中の酸素濃度も畝立てを行うことにより、降雨時の低下の程度が小さくなり、根粒活性に有効な状態が保たれている。

 本技術は、中央農業総合研究センターが実施する『出前技術指導(実演、実証等)』により、全国各地で実証を行っている。平成16年度は3県19カ所42ha、17年度は9県44カ所141ha、18年度は市販化と出前技術指導を合わせて、200ha以上(集計中)で本開発機が稼働している。17年度の実証地域における坪刈り収量調査では、多くの地点で収量が増加している(図4)。

 
おわりに


図4 実証圃場における収量

 地域により土壌条件や気象条件が異なるため、本技術の適用により効果が認められる地域を、今後の実演や実証を通じて、さらに明らかにしていく予定である。
 また爪配列の変更で様々な形の畝を作ることができるため、大豆の密植栽培や、麦、ソバ、野菜等へ拡大するための技術開発と実証を行っている。

 技術に興味を持たれた方は、お気軽にご連絡下さい。電話025-523-4131(大代表)
(中央農業総合研究センター北陸水田輪作研究チーム チーム長 細川 寿)
(月刊「日本の農業」2006年8月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載)