提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


大区画圃場で加工業務用たまねぎを栽培 収穫後の調製・貯蔵技術も確立

2017年12月04日

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横尾晃さん (長崎県諫早市 アリアケファーム株式会社) 


 平成20(2008)年から営農が開始された諫早中央干拓地にある58haの農地(リース借地)で、たまねぎを中心に現在、延べ56haの作付けをするアリアケファーム(株)は、平成17年の設立。干拓農地の開業とともに入植、営農を開始した。業務用加工食品製造会社の(株)アリアケジャパンが使用する野菜を生産し、そのほとんどをアリアケジャパン(佐世保工場)に供給。とくにたまねぎは、約40haの大面積で加工商品に合わせて約10品種を生産する。1シーズン約2000tの生産量はアリアケジャパンの年間使用量の3~4割に当たる。たまねぎのほかに、にんじん7ha、周年ネギ3ha、しょうが0.5ha、昨年から始めたきゃべつ6.5haを作る。


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左 :しょうがの収穫が行われていた。機械で土から掘り起こし、人海戦術で葉を落としていく
右 :きゃべつ収穫。きゃべつだけは一部市場出荷もしている


 ニーズが先にあり、その上に「たまねぎはあまり土を選ばないので、干拓のような土質が良いとは言えない土地でもつくりやすい作物です」という横尾晃さんは、諫早市出身で入社6年目。アリアケファームを立ち上げた山本社長(アリアケジャパン総務次長と兼任)から諫早湾干拓支店の経営を任され、社員6名、事務1名、作業員(周年雇用)20名、作業員(臨時雇用・農繁期2カ月×2)20名を統括している。


たまねぎを中心に農作業を組み立て
 横尾さんに圃場へ案内してもらった。「私どもの栽培の中心はたまねぎなので、作業がたまねぎに重なるような作物はつくりません」。収穫中のしょうが、きゃべつの圃場を見たあとに、たまねぎの育苗圃場へ向かう。
 9月15日から播種が始まっており、40haに必要な育苗面積1ha・育苗トレイ2万2000枚が、見渡す限り、圃場に敷きつめられていた。緑の芽がトレイから元気に伸びている。1日2回の灌水が必要で、横尾さんが用水の蛇口を開けると、パイプを通って水が行き渡り、トレイに向けて散水されるのが見えた。


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左 :たまねぎの苗。育苗床には1年寝かせた籾殻を使うと具合がよい
右 :育苗中は1日2回、灌水をする


 たまねぎの栽培暦はこのようだ。定植に先立って10月25日から、高畝を作りながら黒マルチを貼っていく。定植は11月上旬から1月いっぱいかけて行い、補植や防除等の管理作業をしていく。最低気温が昨年はマイナス15度まで下がったような厳しい冬季を経て、収穫が4月から始まり6月半ばの梅雨入り前まで、時には6月末まで続く。

 通年雇用をするためには、一年中仕事が必要になる。農閑期であるたまねぎ収穫後の夏場約2カ月、アリアケファームでは20名の作業員にどのような仕事があるのだろうか。「まずはたまねぎのB級品(規格外品)の皮むき。手作業なので、けっこう人手がいります。それから女性は草取り、男性は暗渠の清掃。これも面積が広いだけに人手がかかる作業です。8月20日頃からはにんじんの播種が始まります」と、農閑期といっても、作業には事欠かないことがわかる。


収穫から乾燥・調製まで効率的に機械化
 圃場1枚の広さが6ha。40haのたまねぎを2カ月かけて収穫する。このような大規模農業には、機械化・省力化が必須だ。収穫には国産(北海道)のピッカーを高畝仕様に改良した機械を使用して、適期を迎えた品種から収穫していく。


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左 :たまねぎ育苗圃場は、見渡す限り育苗トレイが整然と並ぶ
右 :敷地に山と積まれた収穫用コンテナ


 収穫後のたまねぎは干拓地内の作業施設にある乾燥庫に運ばれる。量が桁外れなので、通常の仕様では均一に乾燥ができず、中のほうのたまねぎが腐ってしまうなど不都合が生じたため、横尾さんが探し回ってたどり着いたのがオランダのメーカーが開発したアスパレーションシステムだった。このシステムは、外気を吸い込み、急冷した空気をガスバーナーで30℃に温め、倉庫内に流し、ファンで強制排気する。庫内の室温を管理するのではなく、たまねぎを積んだコンテナの温度と湿度を自動管理するところに特徴がある。この方法では一気に早くたまねぎを冷やすことが可能で、積まれた奥のほうのたまねぎ(最大530t収納可能)にも空気が当たり、1週間から10日間で20%の水分を飛ばすことができる。


 調製にも、横尾さんが探し出した機械が活躍する。ヨーロッパのメーカーのホームページを検索していくと、イギリス・ニコルソン社製、その名も「トップテーラー」がヒット。日本には代理店がなく、横尾さんが自分で手続きをして輸入したという調製用機械だ。たまねぎが1m幅ほどのラインを運ばれていくうちに葉と根の両方をきれいに落とし、サイズ分け、計量もできる。1tのたまねぎを4~5分で処理できる優れもので、処理能力は1日100t。このシステムに11人が張り付いて作業を進めていく。
 収穫量2000tのうち、約1200tをこの施設で、残りは諫早市内の外部倉庫に保管され、順次出荷される。


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左 :アスパレーションシステムが設置された倉庫内(アリアケファーム(株)提供)
右 :トップテーラー(アリアケファーム(株)提供)


干拓地ならではの試みと挑戦
201711_yokogao_ariake_64.jpg アリアケファームでは、毎年緑肥(カバークロップ)を育てては鋤き込んで土づくりをしている。長い目でみると化成肥料よりも堆肥が良いと考え、特製の肥料(カリ分なし)のほか、キトサン(蛎殻)をべと病対策で施用している。その効果か昨年、九州のたまねぎ産地で猛威をふるったべと病の被害を最小限に抑えることができた。
 各種認証も取得している。長崎県特別栽培農産物の認定をはじめ、JAS有機認証やGlobalGAP、JGAPも取得済みだ。
右 :アリアケファームのオリジナル肥料


 また、広い干拓地ならではの試みとして、実験的に行っているのが「農地の交換耕作」だ。酪農家と土地を1年交換し(農業経営基盤強化促進法に基づく利用権の設定が必要)、酪農家が緑肥を育てていた土地にたまねぎを作付けしたところ、たまねぎの収量が増えたという。収穫後は緑肥のタネを播いて持ち主に返し、相手の負担にならないようにしている。


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左 :GAPにのっとった道具の管理
右 :100m×600mという広大な圃場にはGlobalGAP取得圃場の看板。このあとたまねぎを定植する


 実家は米農家だけれども農業が嫌いで、アリアケファームに入るまでは営業等の仕事をしていたという横尾さん。入社してゼロからたまねぎ栽培を始めた。立場上、栽培技術だけでなく経営全体も見ている。中でも「いろいろな従業員がいてそれぞれに合ったやり方があるわけで、彼らを納得させるのも仕事のうち」と人を育てる大変さを感じている。たまねぎで日本初の企画を考えているというので内容をたずねると、「それは秘密です」と横尾さんは笑って答えた。(水越園子 平成29年10月25日取材)