提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


魅力あるサトウキビ農業のためKSAS導入により経営の効率化をめざす~(有)南西サービスの新たな取り組み~

2017年11月15日

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千葉茂さん  (有)南西サービス 代表取締役
松林福光さん 南西糖業(株) 徳之島事業本部原料統括部原料対策課課長代理


(株)南西サービスの概要とサトウキビ産地の状況
201711_yokogao_nansei_3.jpg 鹿児島県徳之島の特産であるサトウキビは、南西糖業(株)(本社:東京)が徳之島事業本部を置き、砂糖製造およびその加工販売を行うための原料として、自社農場でのサトウキビ栽培および協力農家のサトウキビを買い上げ、島内2工場を操業している。
 (有)南西サービスは、平成19年に南西糖業の子会社から農業事業を引き継いで以来、業務の整理と経営改善を行い、農場経営(30ha)、農作業受託、肥料・農薬等の販売等を柱として事業を行ってきた。平成28年9月に農地所有適格法人となり、経営的にも独立。従業員は、代表取締役の千葉社長以下、社員5名(取締役含む)、準社員5名、臨時雇用20名(管理作業、収穫作業等に従事)。
 徳之島のある南西諸島は台風の常襲地帯で、サトウキビの収量は天候に左右されるところが大きい。南西サービスの平成28/29年期は、サトウキビ栽培面積22ha、生産量1147t、単収63.1t/haという状況だ。


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導入の契機~圃場の見える化が必要だった
 (株)クボタのKSAS(クボタスマートアグリシステム)を知ったのは、約20年使い続けたトラクタを更新した際のことで、さっそく導入を検討。サトウキビ経営に生かせると判断し、28年6月にシステムを導入して圃場データの入力を始めた。


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 南西サービスが自社農場30haに加え、作業を請け負っている農家は約242戸(計約250ha。延べ面積では300ha)。徳之島のサトウキビ農家の平均面積は1.8haで、農機を所有しない小規模農家が多い。それら農家の機械作業を受けており、圃場の数は約1500筆。その上、直前の作業依頼が少なくなく、そのたびに現場に出向いて場所や現状確認をする。場合によっては片道40kmかかるところもあり、時間とコストが発生している。
 KSAS導入前は、紙の台帳の地図を色分けして圃場管理をしていた。KSASを使ってグーグルの地図と連動させれば、現地に行かなくても確認ができる。もっとも、徳之島のグーグル地図は約10年更新されておらず、地図上は農地になっていないところもあり、「地図の更新を求めたい」と千葉社長は希望する。


どのようにKSASを使っているか
① 手書きの圃場図に代わるものとして現状確認に利用
 かつては地元を良く知る調査員21人を雇用し、彼らが足でかせいだ情報を活用していた(担当員制度)が、コスト削減のため、26年6月に廃止された。そのため現場のデータ(調査員による現場確認、栽培の有無、生育状況等の調査)に代わるものとして、ドローンによる撮影をおこない、位置情報を地図に関連づけて、KSASと組み合わせて使っている。


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②モバイルの使用――オペレーターが抵抗
 オペレーターは20歳代の若手から50歳代まで約11名。それぞれが自分のモバイル(スマートフォン)にアプリをダウンロードして、KSASのモバイルとして使うように、研修をおこなった。毎日のミーティングでも使用を促しているが、ほとんどの人が正しく使ってくれない。現場確認には使うけれども、作業の開始と終了時にボタンを押さないため日誌の代わりにならない。
 ではどうしているかというと、その日の作業終了後か翌朝に、ほとんどのオペレーターが紙に書いて作業日誌として提出している。紙データを入力する必要があり、担当一名が入力作業にかかりきりになる。モバイルを利用すれば不要の作業に時間をとられるばかりでなく、せっかくのシステムがうまく利用されていない。「モバイルの使用を進めたい」と松林課長代理は話す。

③登録状況
 KSASの今年7月現在の登録圃場は、180ha、700筆。約半分が済んだという状況。未登録のところも進めていきたいとのこと。


KSASの活用による今後の計画
①圃場管理の簡略化
 手書き台帳からデジタルデータ管理へ移行し、圃場管理の効率化、コストダウンをはかる。

②圃場ごとの履歴を栽培に活かす
 圃場ごとの作業(栽培)履歴を記録する。これを複数年、蓄積していくことで、適正な施肥設計等に活かせると見込んでいる。経営に活かせる『適正な管理モデル』を作りあげたい。
 圃場の中には、30数年間、化学肥料のみ施用し続けた結果、完全に酸化しているところもある。正しい土づくりをして収量を上げるにはどのような肥培管理をすればよいか、まずは履歴をみながら適正な管理に持っていく。

③ドローンによる栽培状況の把握
 ドローンを活用し、春と夏(2作型)、台風被害調査、収穫前の計4回、ドローンによる撮影を行うことで、人が中まで入れない圃場内側の生育診断ができるようになるなど、栽培状況の把握が進むことを期待している。


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④島内全体の収量向上につなげる
 適正な生育管理が見えてくれば、自社圃場の収量向上はもちろん、島内の他の営農集団への生育管理指導、栽培の見える化にも応用できるのではと考えている。また、それ以外にも、もっと良い使い方により経営に活かすことができないかを模索中だ。

⑤圃場ごとの収量の把握
 収量は現在、収穫物を積んだトラックの計測を工場で行うことで把握しているが、あくまでもトラックごとで、圃場ごとではない。ケーンハーベスタにはかりをつけることで、圃場ごとの収量がわかり、圃場の生育管理(履歴)と関連づけて施肥等を改善することができるようになる。


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⑤製糖工場稼働の向上
 サトウキビは作型が多く、栽培体系が複雑だ。苗の春植え、夏植えと株出しの3作型があるので、それぞれの面積(作付)を把握できれば、工場の稼働計画を立てやすい。


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これからの課題と展望
 直近の年度は農業部門の営業収益確保が予想されており好調だ。今後とも、「営業利益の確保」「経営の効率化」「人材育成とコスト意識の高揚」に努めたいとのこと。
 作業の機械化が島内全体で進んでいるためか、受託作業は減る傾向にある。ただし現在の自社農場面積30haが将来的に40haになると思われるので(個人農家に委託している10haが返ってくる見込み)、きちんと管理して収量を上げていきたい。担い手の高齢化や引退も問題で、後継者育成も必要だ。製糖工場の黒字ラインである年間100日稼働に向けて、原料サトウキビの収量をあげることが求められており、そのためにも「KSASを活用していきたい」と、千葉社長は語る。
 サトウキビへのKSAS利用第1号として、今後も注目していきたい。(水越園子 平成29年9月15日取材 協力:鹿児島県農業開発総合センター大隅支場農機研究室)