提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


栄養価の高いドラゴンフルーツでみんなを健康にしたい

2017年02月07日

201701_yokogao_scre1.jpg
大内盛勢さん(岡山県岡山市 有限会社スコレー) 


 "Scre"の看板がかかる店のドアを開けると、鮮やかな洋ランの花々が目に飛び込んできた。ここは岡山市郊外にある有限会社スコレー。颯爽と登場した取締役の大内盛勢(しげなり)さんは、大学時代まで剣道一筋のスポーツマン。名刺には「美・遊・潤・想」とあり、スコレーがめざす農業への思いがうかがえる。洋ランハウス、ブドウの温室ハウス、ドラゴンフルーツのハウスが「D CAFE」に併設され、スコレーの生産現場が体感できる作りになっている。広くて静かな農園のたたずまいの店内でお客さんがくつろいでいる。

 スコレーの創立は平成6年。盛勢さんの父で社長の巌(いわお)さんが、洋ランとブドウ生産の大内園芸と大内農園を合わせて設立した。大学を卒業した盛勢さんが経営に参画し、ドラゴンフルーツの生産を新規導入した。


201701_yokogao_scre14.jpg  201701_yokogao_scre13.jpg
 :店頭のドラゴンフルーツ /  :美しく咲き誇る洋ラン


ドラゴンフルーツとの出会い 
 大内さんは東京農業大学出身。農業実習で沖縄県の宮古島へ行き、ドラゴンフルーツに出会う。しかし、まさか自分がこの南国の果実を生産することになるとは、この時は思わなかった。「何だこのトゲトゲしいフルーツは? って印象でした」と笑う。


201701_yokogao_scre15.jpg 大学卒業後、アメリカへ農業研修に。規模の大きさを肌で感じ、家業を引き継ぐことを決意。「以前から会社の経営や生産状況などは見ていました。曽祖父が育んだブドウ、父の洋ランの二本柱でしたが、洋ランが右肩上がりの時代から少しずつ下がっている状況だったんです」。そこで、健康につながるともいわれる果実に着目した。「ブドウを生産していましたから、その線で行く方法もありましたが、何か新しいことをやりたい。食べるものでと考えたとき、思い出したのがドラゴンフルーツだったのです」。


みんなが健康になってほしい!
 ドラゴンフルーツは、ピタヤ、ピタハヤなどと呼ばれる中南米原産のサボテン科の果実。国内では沖縄・鹿児島で多く生産されている。スコレーでは、洋ランやブドウの温室を使い、農薬を使わずに栽培。栽培土壌、堆肥、肥料などもすべて吟味した有機物主体の自家製で、苗木の植え付けにも3年間寝かせた水田の土に完熟堆肥を混ぜた用土を使っている。大内さんの「健康」へのこだわりだ。「私のテーマは"健康"。食べることで人に健やかになってもらいたいという思いが強いのです。売れることだけを考えて果物の種類を選択したら、ドラゴンフルーツは選ばなかった」と語る。


 ドラゴンフルーツは生食需要もあるが、カレー、チョコレート、お茶、米粉ケーキ、ジュースなど、誰もが気軽に食べられる加工品づくりにチャレンジ。「とりわけカレーはドラゴンフルーツを入れることで"まろみ"が出ますし、種のプチプチした食感が喜ばれます」。D CAFEのメニューでも、ドラゴンフルーツのカレーは、紫苑(しえん)ブドウのカレーと並んで人気商品だ。


201701_yokogao_scre6jpg.jpg  201701_yokogao_scre4.jpg
 :人気のレトルトカレーはドラゴンフルーツ、紫苑(ブドウ)、マスカットの味
 :ドラゴンフルーツカレーをはじめとした人気のメニュー


 フルーツレトルトカレーの開発では、生産者ならではの果実の特徴を活かした商品にしたいと、何度も加工業者とやりとりを繰り返した。ドラゴンフルーツは甘みとまろやかさを出すように、紫苑カレーはブドウの酸味を生かした味覚になるように仕上げた。店頭はもとより通販、市内大手デパート、首都圏のアンテナショップでも販売。フルーツジュースやシフォンケーキ、ドライフルーツはカフェ内の加工場で作られている。


 また、平成27年から加工専用ブドウ園で生産した「ブドウジュース」の商品化を果たした。ブドウのうまみが濃縮されたジュースとして、高級感あふれるボトルでの販売となった。「お酒が飲めない人や、飲めないときなどにワイン代わりに楽しんでもらえるとうれしいですね」と大内さん。


201701_yokogao_scre9.jpg  201701_yokogao_scre5.jpg
 :農園のブドウで作った、うまみが凝縮されたブドウジュース
 :ドラゴンフルーツを使ったシフォンケーキもD CAFEで味わうことができる


6次産業化を目指した背景
 平成20年にドラゴンフルーツの苗を導入し、栽培3年目に果実が初収穫された。加工品に着手するにあたり、6次産業化認定の支援をしてくれた商工会等と全国の加工施設を巡り、セミナーにも積極的に参加。岡山県下で6次産業化に取り組む農業者がまだ少なかったため、他県の先進事例を見学し、加工品製造のノウハウを学んだ。計画を立てる際、県商工会連合会の6次産業化サポートセンターの支援を受け、平成24年2月に認定、同年8月に「D CAFE」がオープンした。「建物やメニューに関しては専門家にお願いしましたが、広報宣伝はしませんでした。口コミで広がり、何より地元の人々に喜んでもらえるのが一番だと思っていました」。


201701_yokogao_scre3.jpg  201701_yokogao_scre2.jpg
ゆったりとしたD CAFEの店内()とカフェ内の販売コーナー(


 現在、生産・加工・販売スタッフは13人で笑い声がいつも響く。大内さんの家は古くからブドウの生産に関わったこともあり、普及指導センターとの付き合いは長い。果樹・花の栽培から、祖父も父も県の農業士。大内さんも農業後継者クラブの代表を務めている。
 6次産業化の認定を受けてからは、より普及指導センターとの関わりも増え、商品アイテムの検討、ドラゴンフルーツを使ったドレッシングの企画と試作、商品パッケージや消費者の意向を把握するために一緒に取り組んでいる。6次産業化をめざす異業種交流会や、地域農業の活性化を図る研修会で事例発表を行い、啓発にも貢献している。


201701_yokogao_scre10.jpg  201701_yokogao_scre11.jpg
 :ハウス内でランを選んで購入することもできる
 :スコレーの皆さん


ドラゴンフルーツ、洋ラン、ブドウの3本柱で明日を拓く
 大内さんの曽祖父は山の芋や温室ブドウ栽培の地域の第一人者。祖父も県内のマスカット・オブ・アレキサンドリア栽培の中心的存在だった。父の巌さんは洋ランの生産を始めるなど、代々大内家では各世代が新しい作物を生み出す伝統があった。ドラゴンフルーツを導入した盛勢さんはこの家伝を踏まえ、ブドウ、洋ラン、ドラゴンフルーツの3本柱で農業を盛り上げ、消費者に喜んでもらえるものを提供したいと語る。そして、その指針のキーワードは「健康」。5年、10年先を見たとき、「健康」こそが何より大きな農業のテーマになると考えている。


 スコレーとは、ギリシャ語起源の「スクール=学校」語源で、「心のゆとり、癒し、閑暇」という意味がある。「晴れの国おかやま」のすこやかな大地で育った作物を全国へと届けたいとがんばっている。(上野卓彦 平成27年11月9日取材 協力:岡山県備前県民局農林水産事業部 備前広域農業普及指導センター)
参考資料 :岡本五郎(岡山大学名誉教授)「御津町吉尾・スコレーのドラゴンフルーツ」、『果樹』2015年10月号、JA全農おかやま園芸部
●月刊「技術と普及」平成28年1月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


有限会社スコレー ホームページ
岡山市北区御津吉尾447番地
電話 086-724-4390


農園カフェ「D CAFE」
 営業時間 10:00~16:00 
 定休日 水曜日
 駐車場あり