提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


そばをはじめ食材はすべて地元産。地域を活性化する行列のできるそば店

2016年11月15日

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谷上健次さん (富山県富山市 株式会社清水そばそば峠)(写真右)


 富山市街から車で約50分。緑に囲まれたのどかな中山間地に、客足の絶えないそば屋「清水(しょうず)そばそば峠」がある。そば粉は100%山田清水産。製粉からそば打ちまですべて自社で手がけている。また、店舗には直売所を併設し、地元でとれた新鮮な野菜や山菜を販売。人気メニューの天ぷらの素材にも活用している。おいしいそばの味を求めて、県内外から多くの人が訪れるこの店は、地域を活性化し、農業の振興に貢献。平成26年にはその功績が評価され、「富山県農村文化賞」(富山県・富山新聞社主催)を受賞している。


地域活性化を目指したそば栽培とそば粉を使った店づくり
201610_yokogao_syouzu_4.jpg 「何かを始める時というのは、いくつかの要素やタイミングがうまい具合に重なって、動き出すものです。もちろん、その根底には、『地域を活性化したい!』という強い思いがあったわけですが・・・」。株式会社清水そばそば峠の代表取締役社長である谷上健次さんは、そば店を開業したきっかけを、そのように振り返る。
右 :清水そばそば峠全景。店頭には直売所を併設。右の小さな屋根の下は加工場


 「清水そばそば峠」の店舗は、すぐ横を走る県道25号線が作られる際に、清水集落が買い取った土地にある。当時、集落の活性化委員でもあった谷上さんは、「場所的にも、集落のちょうど真ん中にあり、地元のためになるものを作りたい」と考えるようになった。

 そこで、現在、そば屋の店長を務める山藤エミ子さんを含め、総勢7人の活性化委員会のメンバーで、周辺地域の視察を始めた。「小さい村でも、活性化に力を入れているところは結構あって、刺激を受けました。そんな折、隣の集落が、そば栽培とそば打ちをしていることを知りました。それで、自分たちも耕作放棄地になっていた場所に、そばを栽培してみることにしたのです」。


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 :清水集落のそば畑
 :数年前まで、地元産のそばを水車小屋で挽いていた


 さらに、同集落には、中山間地域等直接支払制度など、活用できる交付金もあったことから、村おこしの一環として水車小屋を建設。そこで地元産のそばを挽き、そのそば粉を使った店を作ろうという気運が高まった。「集落の土地と、そば栽培の技術があり、活用できる交付金もある。このタイミングを逃してはいけないと思いました」。


本格的な味が評判を呼び、毎年、訪れる人が増加
 平成16年1月に、清水集落の有志10名が出資をして、「清水そばそば峠」を組織化。そばに関しては、各家で伝えられた方法でそばを打つ習慣があったものの、より本格的な味を提供しようと、そば打ち名人から高い技術を教わり、習得をした。「また、この地域では、雉(きじ)などの山鳥は貴重なタンパク源で、昔から料理などに利用していました。そこで、なじみのあるそばと雉で、地域色を出すことにしたのです」と谷上さん。山藤さんたちは、雉肉のうまみを引き出しただしつゆを、試行錯誤しながら完成させた。


 店の建設にあたっては、谷上さんや地元住民がボランティアで関わり、同年11月、「清水そばそば峠」は、開店を迎えた。席数は14席。「雉そば」と「かけそば」の2種類のメニューでのスタートだった。「当初は、平日で10食、土日で50食をめざしてがんばろうと話していました。今考えれば、店をもう少し大きく作ればよかった」と、谷上さんは笑う。
 というのも、開店初日から長い行列ができるほど、たくさんの人がそばを食べにきてくれたからだ。現在も店の人気は健在で、売上高も毎年、順調にアップ。平成25年には、日中3時間だけの営業にも関わらず、販売金額1800万円、来客数は1万5000人を超えた。そのうちリピーターは7割。魚津市や石川県など、遠方から訪れる人も多いという。そして平成21年には、経営のさらなる発展をめざし、株式会社を設立した。


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 :地元産の野菜や山菜を使った天ぷら、そば豆腐が付いた「天ざるそば」
 :客足が絶えない店内。遠方から訪れる人も多い


女性の感性を活かした経営。新たに加工部門を設立
 店の運営は、山藤店長をはじめ集落の女性(4名)がおもに行い、仕入れ、そば打ち、調理、接客など経営全体を担当。そばの味もさることながら、心のこもった接客や衛生管理など、女性ならではの細やかな気配りが評判を呼び、集客数増加の大きな要因になっている。

 メニューも、「とろろそば」や「雉ざるそば」、「十割そば」などが加わり、地元の野菜や山菜を使った「天ぷら」を提供すると、これが第2の看板商品になった。「そばムース」などのデザートも開発し、平成21年には、同女性グループが中心になって、加工部門を設立。「おこわ」や「草餅」、「漬物」等、加工品の製造・販売を開始した。


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 :そばの香りが口の中で広がる「そばムース」
 :開店当初からの看板メニュー「雉そば」


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 :草餅やおこわ、漬物などの加工品も人気
 :店頭の直売所では、野菜や加工品などを販売


 また店舗では、開業当初から、農産物の直売所を併設。清水および近隣集落の野菜や山菜を販売したり、それらを天ぷらの素材や加工品に活用することで、高齢化が進む中山間地を活性化し、農業所得の向上にも大きく貢献した。清水集落におけるそば栽培面積も、平成20年は7.0ha、平成25年には15.4haと、2倍以上に拡大。さらに、そばの質の良さが人づてに伝わり、東京や京都などにも販路を広げている。


課題は若手の育成。店のさらなる発展を目指す
201610_yokogao_syouzu_3.jpg 開業以来、経営が好調な「清水そばそば峠」だが、今後の課題は、人員を確保し、若手を育成することだと、谷上さんは語る。「そばは生ものなので、挽き方、打ち方、ゆで方でさえも、感覚をつかむのが難しい。常連のお客さんのなかには、そばのブレンドの仕方や、ゆでる人が変わるだけでも、『わかる!』という人がいて、こちらも気が抜けないですね。3年ぐらいかけて、じっくり人を育てたいと思っています。しかし、人員を増やすには、もう少し売上を上げなくてはいけません。席数には限りがあるので、そばだけで上げるのは困難。お土産に最適な加工品を開発することが必要だと考えています」。
右 :調理から接客まで、営業時間は常にフル回転


 同店はこれまでも、女性スタッフたちが加工部門を立ち上げ、加工品製造に取り組んできた。その背景には、県が行う「農村女性スキルアップ講座」や「農村女性起業拡大支援事業」などをタイミング良く活用し、施設整備や技術向上を図るなど、富山農林振興センターの担当者による継続的なフォローがある

 そして今、谷上さん自身も、オリジナル商品のアイデアを練っているところだと言う。また近々、予約客専用の棟も建設する予定だ。「新しいことにチャレンジして、まずは、販売金額を2000万円にするのが目標です。いずれは5000万円をめざしたい。店を発展させていくためにも、目標は大きく持たないと」と谷上さん。この先、「清水そばそば峠」が、どんな進化を遂げていくのか楽しみである。(北野知美 平成27年7月13日取材 協力:富山県富山農林振興センター担い手支援課)
●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


株式会社 清水そばそば峠
富山県富山市清水山田10-15
TEL 050‐3433‐5500


清水そばそば峠
営業時間:11時~14時
定休日:水曜日