提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


『うなぎいも』で浜松をもっと元気に! 地元への恩返しの気持ちから生まれた新たな浜松ブランド

2016年10月21日

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伊藤拓馬さん(左)(静岡県浜松市 有限会社コスモグリーン庭好)
(右は静岡県西部農林事務所地域振興課の山崎さん)


 浜松の代名詞ともいえる「ウナギ」。そのウナギの残渣を使用した堆肥で育てたサツマイモ「べにはるか」を、『うなぎいも』と命名し、数々のヒット商品を生み出してきたコスモグリーン庭好(にわよし・以下、庭好)。平成26年は6次産業部門で売上6600万円を達成した。

 もともとは創業100年を超える老舗造園業者で、6次産業化への挑戦は、初収穫した規格外のサツマイモがはじまりだった。「栄養たっぷりで甘くて濃厚な『うなぎいも』を一人でも多くの方に味わってほしい」。そう熱く語る、取締役部長の伊藤拓馬さんに、これまでの道のりや今後の展望について聞いた。


地元貢献の思いでスタート
 造園の事業活動では大量の草木廃棄物が生じる。庭好では、それらを堆肥化するための施設建設を計画。その際、多くの地元の方にご理解ご協力を頂く。そこで、「地元に貢献し、恩返しをしたい」という気持ちが生まれ、耕作放棄地を再生するため農業参入を考える。


べにはるかとの出会い
 試験栽培を経てサツマイモ作りに手応えを感じた伊藤さんは、品種や作り方を相談するために訪れた先で、まるで蜜漬けにしたような濃厚な甘みの「べにはるか」と出会う。そして平成22年、静岡では初となる「べにはるか」の本格的な生産に取り組む(農地面積60aのうち、30aが耕作放棄地)。前年の農地法改正で、一般企業の参入が緩和されたことも背中を押した要因の一つだ。
 しかし、初収穫したイモのほとんどは、形の悪さや虫食いで出荷できず、規格外品が大量に残った。


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 :甘くて濃厚なうまみのうなぎいも。ミラノ万博では、ニョッキに大変身して参戦した
 :「うなぎいもで浜松の耕作放棄地を緑の大地に!」うなぎいも試験圃


さつまいもプリンの大ヒット
 「べにはるか」の味に絶対の自信を持っていた伊藤さんは、規格外のイモを地元ホテルに持ち込み、スイーツの試作品を依頼。すると、いくつかのレシピの中に、後に大ブレイクする「さつまいもプリン」があった。
 庭好ではプリンの製造をホテルに依頼し、イベントなどで販売。そのおいしさからファンの数を増やしていった。しかし、人気上昇のスピードに製造が追いつかず、ホテルが撤退。その際に「プリンは比較的簡単に作れるので、自分で作ってみては」と提案される。

 そこで、伊藤さんはさつまいもプリンを携え、西部農林事務所の門を叩いた。6次産業化への第一歩だ。その後、農業者、観光業者、地元食材とのマッチング、商談会の開催など、「さつまいもプリン」を売り出すためのさまざまな取り組みが始まった。そして、平成23年春、「さつまいもプリン」は大手ネット通販サイトの部門別ランキングでナンバー1に輝くことに。


ついに誕生、浜松の『うなぎいも』
201609_yokogao_cosmo_g_14.jpg 通販での大ヒットの中、伊藤さんは、「もっと浜松らしさを」「浜松のものを食べたいと思わせる何かを」と考えていた。なぜなら、さつまいもプリンには、浜松ならではのブランド力が欠けており、いずれ売れなくなると予想していたからだ。
 そこでひらめいたのが、浜名名物の「うなぎ」と「いも」をミックスした「うなぎいも」という名前だった。名前にふさわしい商品にするため、最初はうなぎの粉末を何かの形で使おうと考えるが、コスト面で断念。次に、うなぎの残渣を使用した堆肥作りを思いつく。こちらはコストを低く抑えられるうえに、廃棄物の再利用で地域貢献にもなる。さらに、堆肥作りのノウハウも施設も庭好にはあった。そこで、西部農林事務所に紹介された「しずおか農商工連携基金事業」によって「うなぎ堆肥」を開発。こうしてうなぎパワーで元気においしく育った「うなぎいも」が誕生した。
右 :うなぎいものつめ放題はとってもお得。地元の方への感謝をこめて


新施設の整備と販路の拡大
 うなぎいもの生産量拡大に伴い、庭好では、西部農林事務所に計画策定など多くの支援を受けて、ペースト加工と貯蔵施設を作る。また、多くの人とのつながりの中、「静岡のお菓子屋さんは地元の食材を欲しがっている」と確信。そこで、自社製品のためだけではなく、他社への販売も視野に入れた生産計画を立てる。
 そして、23年7月。「小さくてもいい、直接お客様と触れ合える場所を」との思いから、念願の直売所を自社敷地内にオープン。また、ネット通販でのブレイクを受けて、東名高速道路のサービスエリアから「ぜひ売らせてほしい」と依頼が入る。
 さつまいもプリンから生まれ変わった「うなぎいもプリン」は、着実に知名度をアップ。さらに、地元スーパー、道の駅、新東名サービスエリアなど、次々と販路を広げていく。


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 :社屋に隣接する直売所
 :6次産業化推進整備事業で整備した作業所


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 :まるで蜂蜜をかけたように、トロトロの蜜があふれ出る焼き芋
 :一番人気の「うなぎいもプリン」は、一つ一つ手作り


発足「うなぎいもプロジェクト」
 平成23年11月。うなぎいもの人気が高まると同時に、原材料の供給が困難になった庭好は、うなぎいもの産地化と商品のシリーズ化をめざし、「うなぎいもプロジェクト」を発足。
 一般企業50社(流通や広告業なども含む)、生産者30軒、個人会員150名が集まった。とくに、農業への新規参入が目立ち、「うなぎいも」に対する、地域の期待の高さを改めて感じた。また、同プロジェクトのイメージキャラクター「うなも」が公募により決定した。


うなぎいも協同組合設立
 プロジェクト発足により生産者が増えたうなぎいもだが、収穫されたイモの品質のばらつきや選別作業の負担などの問題が起こる。それを解消するために、平成25年に生産者組織「うなぎいも協同組合」を設立。粉末加工施設の導入も行う。
 組合設立により、品質の安定、生産者の収益性の改善、販路拡大、差別化の推進など、個々の生産者だけでは実現できない活動が可能となる。
 結果、庭好1社で取り組んでいた4年前に比べると、作付面積は80aから12haへ、収穫量も10tから210tへと増えた。

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 :イメージキャラクターの「うなも」。浜松を農業から元気にするのが生きがい
 :現在も数多くの商品が生まれている、うなぎいもシリーズ


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 :子どものおやつにも、酒の肴にもぴったり。後引くうまさが魅力
 :うなぎいもと白あんを合わせて炊き上げた、しっとり芋あんが大人気


今後の課題と展望
 現在のうなぎいも関連商品は、やや土産物にかたよっており、品目は増えてもイモを少ししか使わない商品も増えている。だからこそ、今後はイモそのもの、あるいは焼き芋のように原材料に近い形のものを販売したい、今は全体量の3~4割だけれど、それをもっと増やしたいと考えている。


「その実現には、販売に適した形の良いイモを作る技術を修得し、売り先までも一貫して考えないといけません。そのため、今も西部農林事務所さんの指導を受け、いろいろ相談に乗ってもらっています。ようやく普通の農家になってきました」と伊藤さんは笑う。


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浜松駅のお土産コーナー()やイベント()でも人気のうなぎいも。今では、ほとんどの浜松人がその名を知っている


 また、伊藤さんには、うなぎいも専門のショップや、畑仕事や収穫・加工など、うなぎいも作りすべてに参加できる、おいしくて楽しい体験型テーマパークを作りたいという大きな夢もある。
 浜松には「やらまいか(やってみよう!)精神」が息づいており、チャレンジ精神旺盛な風土がある。ホンダ、スズキ、ヤマハ、カワイなど世界的ブランドに成長した企業を生み出したモノづくりの町で、この「うなぎいも」もまた、その名の通り、うなぎのぼりの人気となり、地域活性化の大きな力になるに違いない。
(松島恵利子 平成27年6月10日取材 協力:静岡県西部農林事務所地域振興課、静岡県経済産業部農林業局農業振興課)
●月刊「技術と普及」平成27年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


(有)コスモグリーン庭好 ホームページ
静岡県浜松市南区安松町66―9
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