提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農機メーカーの新たな挑戦。玄米ペーストで米の可能性を広げたい! コメノパンヤ玄氣堂で玄米ペーストパンを販売

2016年09月28日

201609_yokogao_genkido130.jpg 玄米パン専門店玄氣堂は、日本初の「玄米ペーストパン」専門店として、熊本県大津町に平成26年6月にオープン。毎日、60種類以上の玄米ペーストパンが並ぶ、地域で人気のパン店である。                             
 玄氣堂を経営する(株)熊本玄米研究所は、農機メーカー(株)クボタの販売会社である(株)中九州クボタのグループ会社。農業機械とパン、玄米ペーストとの関係とは。そこには、農業機械を通じてのつながりが深いがゆえの、地域や農業への思いがあった。


米の新しい可能性を。玄米ペースト製造を実現
201609_yokogao_genkido2752.jpg 平成22年に(株)中九州クボタは農業参入し、米や野菜の栽培を始めた。耕作放棄地の拡大や米消費の減少など、農業や地域の厳しい状況を少しでも解決できないかと考える中、業界関係者から「ペースト技術」を紹介された。米の消費拡大策として米粉の利用拡大が進められ認知されているが、玄米をペースト化したら米粉よりもおもしろそうだと、開発に取り組んだ。

 平成25年10月には(株)熊本玄米研究所を設立。ペースト製造への本格的な準備を進めた。原料の米は、白米に比べて栄養価が高いことから、玄米を選択。「玄米ペースト」の試作を重ね、商品化の手応えをつかんだ。
 玄米ペーストおよび製パンの製造技術を確立し、平成26年6月、(株)中九州クボタ本社(熊本県大津町)の敷地に隣接した幹線道路沿いに、「コメノパンヤ玄氣堂」を開店し、玄米ペーストパンの販売を始めた。


菊陽工場を生産拠点に玄米ペースト、玄米パスタ誕生
 (株)熊本玄米研究所の社屋内にある工場で、玄米ペーストの製造工程を見学させてもらった。現在、菊陽工場では、洗米からペースト完成までの全行程を作業担当4名で分担、作業している。


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 玄米ペーストは、浸漬した米を水と一緒に粉砕し、ペースト状に仕上げたもの。これを小分けして、玄米ペースト(冷凍品)が完成する。

 「玄米ペースト製造の⼀番のポイントは温度管理。その技術確立がたいへんだった」と熊本玄米研究所の瀧尾部長は説明する。米を細かく粉砕する過程では熱が発生する。しかし、米のでんぷんを変質させないために温度を下げなければならない。温度を管理しながら粉砕した玄米をペーストにする機械と作業工程を、試行錯誤で作り上げた。


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 開発の途中で、産業技術及び農林水産物の加工に関する研究開発、指導及び支援を行っている熊本県産業技術センター食品加工技術室に試験を委託し、減菌技術と冷凍保存技術を確立した。試験を担当した山戸陸也氏(現熊本県農業研究センター高原農業研究所)は、「6カ月冷凍保存した玄米ペーストで作ったパンは、それまでの米粉パンでは考えられないくらい、よくふくらんだ。小麦のパンとほぼ同じくらいふくらみがよかった」と話す。


玄米ペーストから玄米パスタを加工
201609_yokogao_genkido088.jpg 玄米ペーストは玄氣堂のパンに使われるほか、原料としてパン業界に販売している。さらに玄米ペーストの可能性を追求したいと考え、玄米ペーストを原料としたパスタの製造に取り組んだ。
 パスタの場合、玄米ペーストと違って加熱が必要だ。高温で長時間練り上げることができる製造機を探したが、なかなか見つからず、熊本県産業技術センターに相談。アドバイスをもらい、特殊機械を導入することでパスタ麺の開発を進めた。製麺部門は、今年3月に稼働を始めている。

 パスタ用とパン用の玄米ペーストの違いは、原料米の種類だけで、製造工程は全く同じだ。


原料米は県内産を使用
 原料となる米は、農機の顧客とのつながりから、播種前契約栽培により熊本県内で確保。全量買取りで、面積契約をしている。品種は、パン用が「ミズホチカラ」、麺用が「越のかおり」。平成28年度は各品種を50tずつ収荷の予定。契約米は、工場に隣接する定温倉庫で保管されている。


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玄米ペーストパンの製造販売
 玄米ペーストパンには、小麦粉のパンにはない特長がある。米と小麦を比べると、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富。また、白米ではなく玄米を使うことで、より多くのビタミン、ミネラル、食物繊維を摂取できる。玄米の含有率は8割以上(一部グルテン使用)、玄米パスタは玄米100%でグルテンフリー。

 玄氣堂が開店するとすぐに、玄米ペーストパンは「おいしい」と評判になり、立地も良いことから順調に売上げを伸ばしてきた。取材当日は夏休み中で、家族連れがパンを選んでいた。店内で飲食も可能で、売り場の横にスペースが設けてある。


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 パンは、玄氣堂店舗内に併設された製造スペースで、毎日焼き上げている。玄米ペーストの生地としての扱いは、小麦のパンとほぼ同じという。
 店舗には焼きたてのパンが並ぶが、焼成冷凍パン(焼き上げたパンを冷凍)を業務用販売やインターネット販売して、販路を広げている。商品開発も店舗でおこない、試作品のうち評価が高いパンをラインナップしている。また、焼き上がったパンを、熊本県内の数カ所で委託販売もしている。


震災を乗り越えて、玄米ペーストの普及拡大を
 今年4月にあった熊本地震の被害を受け、玄氣堂では水道が止まり、3日間の営業停止を余儀なくされた。再開後に作ったパンは避難所へ運び、被災した人たちにわたった。営業再開後、通行止め等の影響でお客が7割に減ったというが、今は少しずつ回復しているという。

 (株)中九州クボタの西山社長は「まず、玄米ペーストのすばらしさを多くの方に理解頂き、米の消費拡大と共に事業をおこなうパートナーを増やしていきたい。また今年3月から新工場の操業を開始したが、さらなる品質・生産性の向上を図り、小麦に負けないコスト・栄養価競争力の確保と新商品の開発を進めていきたい」と語ってくれた。

 鹿児島県から近日、玄米ペーストパンでの開業をめざす人が、玄氣堂に見学に来ると聞いた。「40万haにもなる耕作放棄地解消に、少しでも役に立てば」という思いから始まった試みが少しずつ、実を結ぼうとしている。(水越園子 平成28年8月18日取材 協力:(株)クボタ、(株)中九州クボタ、(株)熊本玄米研究所、熊本県産業技術センター、熊本県農業研究センター高原農業研究所)