提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


南国フルーツと多種多様な島野菜を、家族経営で生産・販売・加工

2016年07月01日

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神谷美枝子さん(右から2番目)、大城自子さん(右から3番目)(沖縄県八重瀬町 農業生産法人(有)白川ファーム)


 沖縄本島南部の位置する八重瀬町にあるしらかわファームでは、熱帯果樹10種類と、100種類以上の島野菜やハーブを栽培している。代表の神谷美枝子さんと、長女大城自子(よりこ)さんの夫、常明さんが栽培を担当し、自子さんは収穫した農産物をジャム、洋菓子、ジュースとさまざまに加工する。
 売店では、自子さんが自家製の酵素ジュースとパパイヤでもてなしてくれた。しばらくすると、美枝子さんが汗を拭き拭き、農場から戻ってきた。


農業女性リーダーの先駆け
 「主人はサラリーマンで、私も保険会社で働いていて、最初は兼業でサトウキビを作っていたのよ」と美枝子さん。昭和52年には、農業近代化資金を借りて花き栽培へ。昭和57年には農業構造改善事業を活用して栽培施設を整備し、デンファレ・アンスリウムの栽培を手がけた。

201606_yokogao_shirakawa_9.jpg 沖縄県南部農業改良普及センターの儀間宏美さんは言う。「美枝子さん名義で、はじめて事業導入をしようとしたときに、女性の前例がないという理由で受け付けてもらえなかったそうです。その時の悔しさもあって、次男夫婦が就農すると、すぐに家族経営協定を締結されました。女性の社会参加のためにと地元でも家族協定の締結をすすめ、おかげで南部地域一体に家族経営協定が広がったんですよ」。

 それに応えて、美枝子さんは、「嫁いだ時から、生活改良普及員さんとは二人三脚で歩いてきました。お嫁に来たら生活研究グループと婦人会には自動的に加入することになっていたし、長女が2歳の時には婦人会の役員をしていました。集落の活動と農産加工は一緒にやるのが当たり前という感じで。みんなで勉強して、公民館祭りで賞をもらうのを励みにしたりしてやってきました」と語る。本土復帰後、オクラの栽培を手がけた際には、商工会女性部を牽引し、地域で規格外品の粉末商品化にも取り組んだという。
右 :普及指導員と語りあう美枝子代表


マンゴー栽培を機に直売所を開設
 夫の清次郎さんは、定年退職後にマンゴーなどの果樹園をはじめた。甘さを追求するために自家製のぼかし肥料をつくって栽培したが、最小限の農薬散布でつくるため、形はなかなかよくならない。少量しかとれず、農協に出してみたら、2キロで手取り1000円。これは自分で売るしかないと直売所設立をめざすが、農地指定地区に直売所を立てることの許可が下りない。美枝子さんは先に受講していたグリーン・ツーリズム実践者養成講座の修了証書を持って、「補助金は要りません、自己資金でやりますから」と町長に直談判し、なんとか建設にこぎつけた。自己資金300万円の手作り直売所は、近隣の人々の島野菜等の売り先にもなって大変喜ばれたという。

 今でも、しらかわファームの売り上げの6割は、マンゴーを中心とした南国フルーツの青果販売だ。他にもドラゴンフルーツ、グァバ、パッションフルーツ、カーブチー(沖縄県のカンキツ類)を、直売とネット通販で販売している。以前よりジャムやお菓子、酵素ジュースなどの加工品の割合が増え、結果として経営の安定にもつながっている。


 美枝子さんに、マンゴーと島野菜の農場に案内してもらった。マンゴーは今が花盛り。そして、酵素ジュースづくり体験の一環で、お客さんも案内するという島野菜&ハーブ農場は、約130種類もの植物が植物園さながらに整備されて植えられている。


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左 :マンゴー畑を案内する神谷さん / 右 :パッションフルーツの果実


「農業が好きなのよ。去年亡くなった主人も好きだった。畑のまわりの花も、全部思い出があるから、種類は増える一方よ。新しいものを栽培するときには、こぼれ種の出具合をみて時期をはかってまいていく。畑を見ていたらわかるさ。除草剤をかけなければ、たいていのものは自家採種でできていく」。
 島野菜や野草は昔から当たり前に使ってきたが、売り物にはならなかった。近年、やっとボタンボウフウなどの栄養価の高い野菜が注目されて、粉末加工で売れるようになったと美枝子さんはいう。


まるごとジャムに、酵素ジュース。女性の目線で時代をつかむ
 しらかわファームの加工責任者が、長女の自子さん。調理師、栄養士の資格を持ち製菓店を経営していたが、実家で果樹栽培が主力になったため、身につけたスキルを家業で生かすことに決めた。

 有機肥料をふんだんに使って栽培した完熟の果物100%の「手づくりまるごとジャム」は、酸味に沖縄ならではのカンキツであるシークァーサーを加え、リンゴ由来のペクチンの代わりに、自家製のタピオカデンプンで粘度を出しているものもある。甘さを控え、素材の風味を生かしたさっぱりしたジャムは好評で、自社のネット通販はもちろんのこと、県内外に販路を広げている。ジャムのほかには、クッキー、マンゴーケーキ、女性に人気の酵素ジュースや、染毛剤のヘナなども加工、販売。これだけの品目を展開するのは、豊富な自家製素材のほかに、地元農家のフルーツの売り先にもなっているからだ。台風で落ちてしまったマンゴーなども買い取る。
 予定外だったのが、製品にするまでの在庫管理にコストがかかるということ。そこで、平成24年に、県のアグリチャレンジ6次産業化支援事業の補助事業を使って、急速冷凍庫と真空包装機を整備した。酵素ジュースの材料の保管も、真空にすることで鮮度が保て、冷凍保管するスペースも3分の1に減った。


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左 :カウンターに立つ大城自子さん。ショーケースに並ぶのは果物たっぷりのパウンドケーキ
中 :「手づくりまるごとジャム」。マンゴージャムは今年度の「モンドセレクション」で銀賞を受賞
右 :自家製フルーツ入りの焼き菓子も人気商品の一つ


 現在の主力商品は、同じ補助事業を活用して商品開発した酵素ジュース「野草木果(やそうもっか)」である。美枝子さんが栽培する、ありとあらゆる野草や島野菜、そして果物を使って、今女性を中心に人気が出ている「酵素ドリンク」を作る体験をはじめると大盛況。素材になる酵素材料セットの通信販売も始めた。お客さんから出た「自分でつくるのは大変」「手軽に飲める酵素ドリンクを作ってほしい」という声を受けて商品化を決めた。
 商品化に至るまでは、菌検査や製造許可などのハードルを、ひとつひとつクリアしなければならなかった。生の酵素として発売したかったが、発酵の途中でアルコールが発生するため、最終的には加熱殺菌した清涼飲料水として許可を取った。


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左 :酵素ジュース「野草木果」
中、右 :「酵素ドリンク」づくりの体験イベント。女性を中心に大好評


 開発を支援した沖縄県農林水産部営農支援課の根路銘(ねろめ)利加さん、南部農業改良普及センターの儀間さんと自子さんで、開発の苦労話にも花が咲く。「88種類の野草の食歴を、それも、新芽と花にわけて調べる作業は本当に大変でしたね」と儀間さんが言えば、「おかげで、今は文献などすべて揃えて、どんな質問にもファイルを提示できます」と自子さん。「いくらいい商品をつくることができても、商談を進める上では、きちんとした企画書や仕様書を揃えることが大事なんです。ここは、そこをきちんとできるから、私たちも販路開拓のお手伝いができるんです」と根路銘さんは言う。


将来を見据え、新たな課題に着手
 自子さんの目下の課題は、加工品の製造工程のマニュアル化と、原価管理である。需要の波に応じた在庫管理など、原材料栽培から加工、販売までようやく一連の流れが見えてきた。増えていく取引先に対応するためにも、また、事業を次の世代へ継承するためにも大切な作業だからだ。「母には、ずっと現役で社長をしてもらいたい」という自子さんは、栽培部門の後継者の育成も視野に入れ、新規就農者の研修受け入れにも積極的だ。

 「マンゴーの次に何が来るか、まだまだ新しい作物を育てますよ。でも、修学旅行の受け入れをはじめて、楽しいから、農家民宿の許可も申請しているよ」という美枝子さん。しらかわファームの夢はまだまだ広がる。(森千鶴子 27年3月26日取材 協力:沖縄県農林水産部 営農支援課農業革新支援室、南部農業改良普及センター)
●月刊「技術と普及」平成27年7月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


農業生産法人 (有)白川ファーム ホームページ
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