提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


真心を込めて作る惣菜、弁当が評判に! 越前の輝く女性たち

2016年02月29日

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川崎美智子さん (福井県南越前町 (企)そまの恋姫サラダ会)  


 福井県の中央部に位置する南越前町は、日本海に面し、内陸部には豊かな里山がある自然あふれる地域。歴史をひもとけば、南北朝時代に南朝の越前国の拠点となった杣山城(現在城はない)があり、武将新田義貞の夫人であった勾当内侍(こうとうのないし)が敵方から身を隠した「姫穴」や、城主瓜生保の戦死の報を受け、夫人や侍女が身を投げた「袿掛(うちかけ)岩」などが残っている。

 こうした歴史を踏まえて名づけられたのが『そまの恋姫サラダ会』だ。戦に出陣する夫の無事を祈り、いつか帰還するであろう夫へ真心を込めて食事を作ったお姫様たち。その健気でひたむきな恋心を伝え残そうという思いである。  
 企業組合としての法人化は平成23年1月からとまだ歴史は浅いが、代表理事の川崎美智子さん以下12名の姫たちが、南条農作物直売所「四季菜」で、30種類を超える加工品の製造販売に取り組んでいる。


直売所構想から加工グループを結成
 平成12年、10年以上続いていたテント張りの野菜や花の販売所「無人市」の規模を広げ、固定した有人の農作物直売所にしたいと計画が持ち上がった。

 この直売所では地域の野菜だけではなく、魅力的な加工品があれば集客が望めるのではないかという意見が出され、中心的な役割を担っていた花農家から、川崎さんに加工グループができないかと相談があった。もともと料理が好きで加工に興味があった川崎さんは早速一緒にやってくれそうな5人に声をかけ、結成したのが"サラダ会"だった。

 当時のことを川崎さんは、「地元の農作物を使った加工品を作るため、加工所建築の相談を町長へお願いにあがると、『実はいま、直売所を作る計画がある、道の駅にするか直売所にするか考えている』とおっしゃるので、それならぜひ加工場を作ってくださいと申し上げたんです」と振り返る。結果、南条農作物直売所「四季菜」に併設して"サラダ会"の加工場が作られることになった。


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 :南条農作物直売所「四季菜」 /  :「そまの恋姫サラダ会」のみなさん


「加工品? 売れるのか?」と言われて......
 平成16年のオープンに向けて、「四季菜」の建設委員会が作られた。メンバーの中で女性は川崎さんただ1人。男性メンバーからは、お惣菜やおにぎり、餅類が「本当に売れるのか?」と疑問の声があがった。そこで、建設委員会主催の研修で各地の農作物直売所を視察した後、川崎さんたちは地元で試食会を開き、実際に食べてもらうことで加工品製造販売への理解を深めてもらった。「そしてようやく加工所建設のゴーサインが出たんです。初年度の売上げ目標800万円を掲げると、『それは無理だろう』と言われました」と川崎さん。

 ところが「四季菜」オープン1年目、予想をはるかに超える2000万円の売上げを計上する。「驚きましたが、直売所にたくさんのお客さんが来られたので、私たちの加工品もよく売れたということだと思います」と、川崎さんは謙遜する。


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 :「四季菜」の店内
 :歯ごたえのあるソバが人気。昼時にはお惣菜やおにぎりと一緒に食べる人が多い


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「四季菜」併設の加工所での作業


法人化に向けて
 初年度は順調なスタートを切ったが、その後、販路拡大や労働力確保のために法人化が必要だと感じていた。「フルタイムで働けるのは私だけで、他のスタッフは午前中だけ、午後だけという状況。それでも注文が増え続けるので、これは何とかしなければと思いました」。牽引役の川崎さんは組織改革の必要に迫られていた。「販路拡大には、スーパーや百貨店との取り引きになるので、"サラダ会"では信頼関係も築けないし、スタッフの社会保険や給与面など、フルタイムで働ける環境づくりが必要です。でもどうすれば法人化できるのか分からなくて」。


 そこで福井県丹南農林総合事務所・農業経営支援部技術経営支援課の協力を得て、法人化にむけて動き始めた。
 現在(平成26年)の担当である村野美智代普及指導員は、企業組合の設立を支援する福井県中小企業団体中央会に協力を依頼、必要に応じて福井県農業試験場高度営農支援課の協力を得て、平成22年4月から月1回のペースで検討会を開き、(1)社会保険、配偶者控除等の整備、(2)雇用体制、(3)販売実績を踏まえた新商品開発、(4)事業計画、(5)役員、出資金、(6)グループ名称の考案、といった項目を話し合った。その結果、平成23年1月に「企業組合そまの恋姫サラダ会」として法人登記する。「もし私たちだけなら絶対に法人化は無理でした。村野さんがぐいぐい引っぱってくれたんです」と川崎さんは振り返る。


法人化はゴールではなく出発点
 法人化1年目の平成23年度、売上げは伸びたものの、人件費等の経費増加で赤字を計上する。そこで村野普及指導員の協力を得て経営改善の例会を開き、(1)既存商品の増産、(2)新商品開発、(3)弁当販売等の営業活動、(4)消耗品の削減策など、見直しがおこなわれた。「法人化したことで安心はしていられませんでした。やることが山のようにあって、しかも1年目は赤字。法人税も払えない状態でした。だけど村野さんが例会で宿題を出されるんです。それがとっても難しい宿題(笑)。彼女が背中を押してくれなければ何もできなかった。だから法人化が出発点でした。ようやく平成25年度で利益が出るようになりました」と川崎さん。


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 商品開発では、南越前町内で確保できる梅と大豆を使った商品を作るために、漬物と味噌の加工所を整備し、商品数が増加。営業活動で予約弁当の数も増え、平成25年度の売上げは5100万円を超えた。


地場産100%の商品づくりが夢!
 川崎さんの夢は、地元産の農作物で加工品を作ること。「お惣菜やお弁当などの野菜は市場から買ってきたものもあり、それを地元農家さんがすべて作ってくれないかな、と思います。加工しやすいデジマというジャガイモがあって、これを使ったコロッケを作りたいんです」と熱っぽく語る。


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 :商品棚を確認する川崎さん /  :特製手こねコロッケ


 現在毎日30~40種類の惣菜、弁当づくりをしている。米と大豆はすべて地元産で、夏野菜のトマト、ナス、ピーマン、カボチャなどの大半は地元産だが、毎日たくさん使うジャガイモ、ニンジン、タマネギはなかなか手に入らない。それらを地元産にすることで、「すべて南越前町の野菜のお惣菜、お弁当ですよ! と言いたいんです。そうすれば商品力も強くなると思うんです」と川崎さんの目が輝く。


「地元の農産物で作った安心して食べられる総菜で、仕事で忙しいお母さんをサポートしたい」がモットーの〝そまの恋姫サラダ会〟。新規就農者など農業者との連携を進め、すべて地元産になることを期待したい。
(上野卓彦 平成26年11月20日取材 協力:福井県丹南農林総合事務所 農業経営支援部技術経営支援課)
●月刊「技術と普及」平成27年2月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


(企)そまの恋姫サラダ会
福井県南条郡南越前町脇本25-19-1
080-4258-3526
販売店 :南条農産物直売所「四季菜」