提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


「なにわの伝統野菜」をはじめ、年間を通じて地元野菜が豊富に並ぶ「道の駅かなん」

2015年10月26日

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石原佑也さん (大阪府南河内郡河南町 農事組合法人かなん支配人)


 大阪の中心部から奈良へと伸びる国道309号線沿いに「道の駅かなん」がある。金剛山や葛城山系の山々が連なり、豊かな自然が広がる丘陵地では、「なにわの伝統野菜」をはじめ、千両なす、キュウリ、サトイモ、イチジクといった多くの野菜が生産されている。

 「道の駅かなん」を管理する「農事組合法人かなん」は、その前身である「河南町ふれあい朝市実行委員会」を母体に、平成14年5月から毎週土日曜日に「ふれあい朝市」を開催。直売所運営の基礎とノウハウを学び、その経験をもとに、河南町農業の活性化と発展を基本理念に94名(当時)の農家が集まり、平成16年4月に設立された。同時にオープンした「道の駅かなん」の管理・運営を町より委託され、現在にいたっている。


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 :河南町農村活性化センター正面玄関
 :「来店者数300万人御礼」「なにわの伝統野菜」の旗が立つ販売所の入口


いつのまにか6次産業化になっていた?
 「もともと町の施設を借り受けて、農家女性による3つの生活改善グループが、自分たちが食べるための加工品を作っていたのです。直売所を作ることになり、販売のための許可も取っていなかったので、勉強したり、見学に出かけたりして試作品を作り、販売をはじめたのですよ」と話すのは、理事で加工部長である藤原恵子さん。やがて店が繁盛するにつれ、加工品の品目が増えて行く。気がつけば「惣菜・餅・味噌・ジャム・米粉パン」の5部門を持ち、30種類以上の商品を製造するようになっていた。結果として6次産業化への道を歩んで来たことになるのだが、藤原さんたちには当初、その意識はなかったという。


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 :レジはパートタイマーが3人体制で担当。週末はひっきりなしにお客さんが訪れる
 :売れ行きがよいと「やりがいを感じる」と藤原恵子加工部長。新商品づくりのリーダー


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もちもちの食感と噛むほどに甘みが広がる河南町産米の米粉パン。売り切れになる人気商品


 「道の駅かなん」の運営に携わる石原佑也支配人は、これまでの経緯を「地元農業の活性化と発展をめざし、加工に関しても、地場産品を使った特色ある加工品作りを進めてきた結果、自然に今のスタイルになりました」と説明する。自分たちにとってベストなやり方を続けて来たら、6次産業化にたどり着いたという。


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 :5部門15人のスタッフが加工品を作る加工場
 :加工部の5部門で月1回定例会を開催。普及指導員のアドバイスを受けてドレッシング作りに挑戦中


 「道の駅かなん」開設当初、売上げ目標は6000万円程度だったが、10年目の平成25年度の売上げは3億4500万円。加工部だけで4000万から4500万円の売上げがある。構成人員は、代表理事1名と15名の理事、生産124名(理事を含む)、加工15名、販売は3名の職員とパートタイマーが10名である。


人気を集める、なにわの伝統野菜と餅
201509_yokogao_kanan4.jpg 「道の駅かなん」で人気を集めているのが「なにわの伝統野菜」(※)だ。江戸時代、天下の台所と呼ばれた大阪の食文化を支えたが、戦後、農産物の品種改良や農地の宅地化、食生活の洋風化が進んだことにより消えていった野菜である。生産組合員にこの「なにわの伝統野菜」作りに熱心に取り組んでいる人達がいて、田辺(たなべ)大根、玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)、大阪しろな、天王寺蕪(てんのうじかぶら)、勝間南瓜(こつまなんきん)など、9種類の「なにわの伝統野菜」を販売している。年配のお客さんは懐かしがり、若い人にとっては目新しい野菜として、またプロの料理人などにも評判が良く、売上げが伸びている。
右 :「なにわの伝統野菜」の売り場。料理レシピは買い物客に好評


 一方、餅類は白餅、よもぎ餅、7種類の大福餅と多くの品揃えで着実に売上げを伸ばしている。その理由を藤原さんは「この地域は祭りや行事が盛んで、そういうときに餅を食べる習慣があるんです。家ではもう餅つきをしなくなったので、うちに買いに来てくれはります」と説明する。売り場を見ていると、たしかに餅を買い求めるお客さんが多い。


 新商品の開発にも余念がない。サツマイモや紫芋の大福餅を新たに売り出したら、とてもよく売れたという。こうした新商品開発は、南河内農の普及課からの支援に負うところが大きいという。
 普及課は、府内の加工グループと合同研修会を開催するなど、情報交換の場づくりを行っている。担当者は「私たちは、それぞれのグループさんを結びつける仲立ちをし、専門家を呼んで講習会を開き、より良い商品づくりに向けたお手伝いをしています。こうした加工技術研修会から、売れる商品が生まれてきています」と語る。藤原さんたちは今、新しいドレッシングなど、人気商品の開発に取り組んでいる。


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 :人気の「よもぎ大福もち」と「白餅」。餅は直売所の売上ナンバーワン
 :普及指導員の仲介で他の加工グループから教わった「金山寺みそ」


後継者育成の「お野菜まるごと河南町の日」
 現在、「かなん」の組合員の平均年齢は66~67歳。5年後10年後を考えると「どこも同じ問題があると思いますが、どうすればいいのか」と藤原さんはため息をつく。石原支配人は「若い世代で農業をやっている人がいないわけではない。だけれど、この法人の組合員になるためには出資金が必要など、大きなハードルがあります。今後はそのハードルを低くする、あるいはハードル自体の形を変えるようにしなければいけない。でなければ、この道の駅も先細りになっていく」と危機感を募らせている。


 そうしたなか、「かなん」では、町内の幼稚園と小中学校の給食センターに野菜と味噌を納めていることから、子どもたちへの食育に取り組んできた。1学期に1度、「お野菜まるごと河南町の日」を設け、「道の駅かなん」の駅長で、「農事組合法人かなん」の専務理事が、農業について授業をおこない、一緒に給食を食べる活動を5年以上続けている。そこには、子どもたちに農業へ興味を持ってもらいたいという思いがある。石原支配人は、「子どもたちがおとなになって就職を考えるとき、農業という選択肢があればいいな、と始めました。時間はかかるかもしれませんが、大事な活動です」という。


来場者300万人突破
 「道の駅かなん」では、平成26年7月26日に来場者が300万人を突破した。設立から10年3ヵ月の快挙で、1日平均900人から1000人のお客さんが訪れたことになる。今年3月、近くに大規模スーパーマーケットがオープンしたが、「スーパーの帰り道にうちに寄ってくれるお客さんも増えて、逆効果というか、相乗効果的にお客さんが増えてきている」と石原支配人は言う。藤原さんも、「お客さんも、うちで買う野菜は朝採りの新鮮な野菜で日持ちするから、野菜以外をスーパーで買うと言ってくれます」とほほえむ。


 また、都心部のターミナル駅前で毎月第3土曜日、「朝市」を開いている。都心の人々に新鮮な野菜や加工品を提供したいという百貨店とのコラボレーション企画で、すでに4年目。朝早くから多くのお客さんが訪れ、すぐに売り切れてしまうことも。


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毎月第3土曜日開催の「朝市」は8時45分から。百貨店の開店前に売り切れる


 「もっとも、都心でうちの野菜を買ってくれるお客さんが、ドライブがてら河南町まで来てくれることが目的なんですが、なかなかねぇ......」藤原さんはちょっと残念そうだ。しかし南河内農の普及課の担当者は、「新しい商品を作り、都市部で宣伝して、ここへ足を運んでもらいたいです」と励まし、「どこでも直売所は同じ悩みを抱えていますが、新商品の開発と、後継者の問題に対して、しっかり支援していかなければと思っています。私たちは、農家と同じ夢を共有し、いつまでも喜びをわかちあえる間柄でありたいです」と話す。それを受けて石原支配人は、「特長のあることをやり続けて、ここの場所でものを売り、買ってもらうことが大事なんです」と、明日を見据えるように話してくれた。(上野卓彦 平成26年7月30日取材 協力:大阪府南河内農と緑の総合事務所・農の普及課)
●月刊「技術と普及」平成26年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


「道の駅かなん」 ホームページ
〈管理団体〉農事組合法人かなん
大阪府南河内郡河南町神山523-1
電話0721-90-3911
 

「なにわの伝統野菜」の基準
○おおむね100年前から大阪府内で栽培されてきた野菜
○苗、種子等の来歴が明らかで、大阪独自の品目、品種であり、栽培に供する苗、種子等確保が可能な野菜
○府内で生産されている野菜