提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


地域貢献を実践。地域の若い世代のリーダー的存在。レストラン開店の夢も

2015年04月16日

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寺田 真由美さん(株式会社寺田農園 岐阜県高山市)


 岐阜県飛騨地域は、日本一の生産量を誇るホウレンソウの大産地であり、1日の寒暖差が大きく、新鮮な空気ときれいな水で育つおいしいトマトの生産が盛んだ。他にも飛騨ネギ、アキシマササゲや、宿儺(すくな)カボチャなど特色のある野菜、そして全国ブランドの「飛騨牛」の産地として名を馳せている。


生食用トマト・トマトジュースで、5年後には売り上げ1億円を目標に
 岐阜県高山市丹生川(にゅうかわ)町の株式会社寺田農園の寺田真由美さんは、平成22年、代表取締役に就任した。同時に国庫事業を受けて加工所を建設。清涼飲料水とソース類の営業許可を取得し、夫とともに6次産業化を図り、生食用トマトに加えトマトジュースを販売。また、若者育成や食育、地産地消活動などの地域貢献に寄与、いま地域に新風を起こしつつ、若手世代リーダーのモデル的存在として嘱望されている一人だ。


201504_yokogao_terada_6.jpg 寺田農園の経営概要は、雨よけ夏秋トマト60a、水稲160a、中玉・ミニトマト30a、ニンニク2a、加工トマトジュース(13種類)、飛騨ネギ2a。その基幹が生食用トマトと加工トマトジュースの生産・販売だ。

 労働力は、研修生を含めて最稼働期に11名。夏秋トマトの作型は、定植が5月下旬~6月上旬、収穫が7月下旬~11月上旬で、この期間に加工も含めて作業が集中する。収量は10a当たり、平成24年度が大玉10・6t(平成23年度9・6t)、中玉6・9t(平成23年度9・1t)と単収が平均以上で、好調だ。
右 :研修1年目の杉山さんによる、中玉トマト「フルティカ」の収穫


 生食用トマトの出荷先は、大玉はJAに、中玉・小玉は市場へ。現在、加工商品は、トマトを中心に5種類のジュースで13アイテム、その他トマトピューレやドライトマト等も加工販売している。


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 :大玉トマトの品種「桃太郎セレクト」
 :勝どきマルシェ(東京都中央区)の商品陳列風景


 トマトジュースの年間生産量は、平成24年度には1万7000tだった。おもな販売先は地元の直売所、直販、市内土産店、ホテル、旅館、また、時々マルシェに出店するなど、年々増加している。
 平成25年の総売上は約5000万円で、5年後には1億円を目標に奮闘中である。


非農家出身で農業を知らないからこそ、純粋に楽しいと思う
201504_yokogao_terada_2.jpg 夫の寺田正樹さんは、昭和61年に建築関係の会社勤務から両親の行う農業経営に参画。真由美さんと正樹さんとの出会いは、彼女がジェイアール東海ホテルズ(高山市)の和食レストラン部門に勤務の頃、寺田家の稲刈り体験に参加したのがきっかけであった。

 彼女は20歳で結婚を考えた時、相手が農家であること、31歳の相手とは年齢が離れていることで両親に結婚を猛反対されるが「親に認めてもらえる農家の嫁になってやる。カッコイイ農業をやる」と啖呵を切り、平成9年に結婚する。

 もともと夏秋トマト・水稲栽培農家で農協出荷が基本であった寺田農園に入った彼女は、さまざまな野菜の栽培にチャレンジ。屋号の「庄兵衛(しょうべえ)」という自家ブランドを立ち上げ、それまで同農園としては未経験であった直売所での販売を開始、売り上げ向上に貢献する。
右 :中玉トマト品種「フルティカ」の出荷荷姿。「庄兵衛さん家の中とまと」と称して直売所にブランド化した最初の商品


結婚6年目に自らマスクメロンの栽培を開始。県知事賞を獲得
 家族から指示された仕事だけでは物足りなくなり、結婚6年目にはメロンを自分で作ると宣言。メロン用の土地を増設し、栽培にチャレンジする。しかし、栽培面では幾度も失敗し、疑問が増えた。そこで、地域内の同年代の仲間に声をかけて、普及指導員を講師として毎月1~2回、肥料や農薬、栽培技術等を中心に勉強会を開催。真由美さんは所属する飛騨メロン研究会では、副会長を務める。努力の甲斐あって、平成17年には、飛騨メロン共進会で岐阜県知事賞を獲得する。


地域に新風「周囲の人と新しい農業スタイルを作る」を実行
 結婚10年後の平成17年に、両親と真由美さん夫婦の4人で家族経営協定を締結する。仕事と家事との両立に悩みつつも、逆に意欲的に。さらに平成18年には、農業経営改善計画書を夫との共同名義で申請して認定農業者に。平成17年頃からは、地元農家の後継者や非農家、移住希望者等の若者の研修生を受け入れ始める。平成22年の法人化と同時に、夫とともに代表取締役に就任。この時、周囲に協力してもらうことにより、トマトジュース等の加工・販売を行えることに気づいたことは、「周囲の人と新しい農業スタイルを作る」契機になり、寺田農園を6次産業化へ大きく飛躍させる元となった。


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 :勝どきマルシェでの販売風景。販売対応は現場責任者・取締役の大前章さん。
 :収穫したトマトを運搬する研修1年目の山岸さん


 その後も、高校生や、農大生、非農家や移住希望者を受け入れ、地域の担い手育成にも力を入れるとともに、役員、正社員、雇用、研修生が役割分担しながら、生産・加工・販売部門に取り組んでいる。この中で真由美さんは、経営内の財務管理、雇用管理、販売管理などを担当し、同農園でのゆるぎない地位を確立してきた。


農業を担う人材育成・若者のモデル的存在としての活躍
 平成24年からは親子農作業体験、異業種との食にまつわるワークショップ等を企画し、Facebookやチラシ配布などで公募・食育活動にも意欲的に取り組んでいる。

 しかし、経営が軌道にのりかけていた平成25年3月、夫の正樹さんが急逝。
 5歳の息子をかかえた1児の母の彼女は、代表取締役として留任し、新たに義弟を役員として迎え、役員3名のほか、正社員3名、常時雇用1名、パート2~3名、研修生5名の会社の社長となった。将来の夢の1つ「農家レストラン」開店実現に向けて、また、「本気で農業をやりたい人と一緒に新しい農業スタイルを作り実践していこう」と、チャレンジ精神旺盛なスタッフや研修生と日々奮闘中である。


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 :いまは亡き夫・正樹さんによる加工所でのトマトジュース充てん作業
 :25年度生産スタッフとトマト栽培のハウス(雨よけ)前で。毎年おそろいのユニフォームを作って士気を高めている


 岐阜県飛騨農林事務所農業改良課果樹特産指導係の井之本浩美係長はこう語る。

「寺田農園は、地域内でも先駆的に6次産業化を図ったことで、地域の農業振興、地域内農産物のPRや所得向上に貢献している(※)。今後も幅広い視野での研修ができる研修機関の指導者として期待される。農業を職業として選択し、彼女の『未来予想図<キラキラ女性が輝く>』『自分らしい新しい農業スタイル』をめざし実践している良きアドバイザー、サポーターであり、若い世代の地域リーダーとして、モデル的存在となっている」

同農園は、6次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画認定事業者に(平成24年度第1回認定)。また、平成24年には青年就農給付金(準備型)研修機関に登録、平成25年には農業研修者を受け入れ就農まで育成する「あすなろ農業塾長」(岐阜県独自の制度)にも登録されている。


 堅実で真摯、そして前向きなその姿勢に行政や地域の人々、若者の多くがその活動にいま、エールを送っている。(鎌田正男 平成25年11月28日取材 協力:岐阜県飛騨農林事務所農業改良課)
●月刊「技術と普及」平成26年2月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


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