提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


「卵屋さんのスイーツ」が直営の直売所で人気

2014年11月10日

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立川直樹さん (新潟県柏崎市・刈羽村 農業生産法人鎌田養鶏株式会社)


 「おいしい卵は健康な鶏から」―――新潟県柏崎市の農業生産法人鎌田養鶏(株)は、2010年に導入した、養鶏業では国内初の「アニマル・ウェルフェア」仕様の開放鶏舎で飼育、生産した高品質・栄養豊富な卵を自社ブランド「養生卵(ようじょうらん)」と命名し、直営の直売所でも販売する。また、直売所内の工房で「養生卵」を使って製造した多彩なお菓子類が「卵屋さんのスイーツ」として消費者に好評だ。


 同社専務取締役の立川直樹さん(38)は開口一番、「新鮮で高品質、栄養価の高い卵は、その卵を産む健康な親鶏を飼育することから生まれるのです。この養生卵は、新鮮さに加えて、普通卵と比較してビタミンEが約10倍、ビタミンDが約5倍多く含まれています」と話し、産みたての卵を手に微笑む。開放的で清潔な鶏舎は、臭いも気にならない。


健康な鶏は鶏舎の環境改善から
 アニマル・ウェルフェアは、動物愛護先進国である欧州で生まれた考え方で、一般社団法人畜産技術協会の指針では、「快適性に配慮した家畜の飼養管理」と定義している。欧州ではアニマル・ウェルフェアに対する国民の期待は高く、畜産物購入の指標としている人も少なくない。


201411yokogao_niigata_882.jpg  鎌田鶏舎7棟のうち5棟、3万5000羽分がアニマル・ウェルフェアの飼養管理基準に対応したケージシステムだ。「鶏舎はより良い環境で卵を生産するため、鶏の健康に配慮し、ストレスを与えないように工夫を凝らしているのが特徴」と説明する。欧州連合(EU)では、ケージを縦に3段重ねて飼養するのが一般的だが、確実に目視できる範囲で飼育したいと考え2段に抑えている。
左 :アニマル・ウェルフェア仕様の鶏舎全景


201411yokogao_niigata_844.jpg 奥行き120cm、幅360cmのケージに20羽を放ち、鶏が自由にのびのびと動けるゆったりした空間を確保。1羽当たり約2000平方cmの床面積(EUの飼養基準)で、従来の暗い鶏舎のイメージはない。卵は産卵ネットに産み落とされ、ベルトコンベアで移動し、集卵される。鶏舎内には給水器や給餌器、止まり木、爪とぎをつけ、床は一部ゴムマットを敷くなどの、鶏の生態に近づけた環境を整えている。
 鶏糞は、ケージ直下に設置されたベルトの上に落ちて回収処理され、長時間鶏や卵に付着したままにならず、常に衛生的だ。さらに鶏舎カーテンの調節によって、太陽光や空気を取り入れることもできる。

 立川専務は「鶏は暑さに弱い家畜。夏場でも飼養に適した快適な温度を保つよう、外気温が30℃を超える時も、鶏舎内は常に30℃以下になるよう冷気を送風しています」と言う。
右 :鶏舎内のケージは縦2段重ね


 飼料はトウモロコシ、新潟県産米、海藻、ヨモギなどの素材を独自の割合で配合した「タチカワ・ブレンド」を給餌。鶏の健康状態や施設の衛生状態を毎日確認して記録し、常に良い環境を保っている。健康な鶏が産む新鮮な卵は殻が硬く、黄身をはしでつまんでも破れにくいのが特徴だ。


地震被災を乗り越え経営転換、多様な販路を持つ
 鎌田養鶏は1976年の設立で、社長は父の正好さん(66)。約8万羽を経営し、2006年12月には新潟県畜産協会から「クリーンエッグ生産農場」として、畜産安心ブランド生産農場に認定された。新潟県の「にいがた食の安全・安心条例」に基づき定められた衛生管理方式(HACCP)を導入し、安全・安心な卵生産に努めてきた。


 ところが、2007年7月の中越沖地震で、事務所も鶏舎も全壊してしまった。新潟県柏崎地域振興局農業振興部普及課の髙橋弘幸課長代理は「中越沖地震による被災を契機に経営全体を全面的に見直し、鶏の健康に配慮した鶏舎の改築、こだわり卵の生産から直売、加工など経営体質の強化に努めた」と、鎌田養鶏の経営努力を評価する。もともと卵の品質にこだわり、健康な鶏の飼育に熱心だった鎌田養鶏に、経営の主力を直売戦略とアニマル・ウェルフェア鶏舎に転換する素地はあったといえよう。


201411yokogao_niigata_900.jpg 売り上げは2億7860万円(昨年)。現在、従業員は39名、うちパート雇用14名。飼養採卵鶏は約4万5000羽。品種は赤玉の「ボリスブラウン」と白玉の「ジュリア」で、この7月から初の国産系種鶏として「もみじ」(白玉)の一部飼養を始めた。鶏卵の生産・販売量は年間約700t。

 主な取引先は卸業者(市場)、食品取扱業者、市内菓子店をはじめ、地元刈羽村と柏崎市内に鶏卵自動販売機2台を設置し、インターネット販売、宅配業務も行う。2008年7月には直売所「たまご畑」を開設し、さらに昨年6月には上越市内にも第2号店「エッグガーデン」をオープンするなど販売網を広げた結果、卵の直売率は、約65%に達している。
左 :ゆとりのケージで飼養される鶏


多彩な"卵スイーツ"で直売が人気
 直売所「たまご畑」開設当初は、地元の洋菓子店に「養生卵」を使用した菓子の生産委託をしていたが、2012年10月に「スイーツ工房」を設け、お菓子の製造も始めるなど、6次産業化に本格的に乗り出した。


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 :会社事務所に併設した直売所「たまご畑」は国道116号線沿いの高台にあり、刈羽平野が一望できる。喫茶コーナーも併設し、営業は年中無休だ
 :自家製卵を使ったシュークリーム


 新鮮で栄養価に富む「養生卵」をふんだんに使った自家製の菓子類は、シュークリームやプリン、サブレ、パイなどの各種ケーキ類が15品目。100~180円と手ごろな価格だ。独特の食感が好評な新商品クレマカタラーナ(冷凍たまごプリン)は1本1500円、カップ入りだと1個300円。ほかに玉子焼き、焼き菓子、アイスクリームなども販売する。


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 :直売所「たまご畑」店内にて、立川直樹さん、有佳さん夫妻
 :できたてのシュークリーム


 卵以外にも、たまごかけご飯専用醤油など卵に合う調味料、国産はちみつ、国産若鶏唐揚や雑貨のほか、地元農家の米や旬の野菜、新潟県内の特産品も販売するなど、徹底して地産地消にこだわっている。同店には1日平均150人が来店する。

 直売所での本格的な事業展開にあたっては、国や県の6次産業化プランナー事業等を積極的に活用し、店内の陳列コンセプトづくり、商品開発・パッケージデザインづくりの面で協力、指導を受けている。


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 :手書きのスイーツボードでPR
 :「知人からもらって食べたらおいしかったので、今は直接買いに来る。特に卵は割った時にきれいな色だし、こくのある味が好き」と長岡市から来店した夫妻


 立川専務は今後の経営展開について「アニマル・ウェルフェア仕様の鶏舎づくりにはコストもかかり、これ以上の規模拡大は難しい。が、動物愛護の観点から国内でも取り組みがもっと増えてほしいと思います。こうした取り組みが普及すれば、家畜と畜舎の環境改善につながっていくでしょう。今後は卵の付加価値をさらに高める商品開発と販路の拡大に努め、直売比率をさらに高めていきたい」と熱く語った。(竹村晃 平成25年6月14日取材 協力:新潟県柏崎地域振興局農業振興部普及課)
●月刊「技術と普及」平成25年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


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