提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


観光地大原の隠れた人気スポット「里の駅大原」  旬の野菜と加工品の地産地消を進める直売所

2014年10月22日

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山本壽典さん(京都市左京区 株式会社大原アグリビジネス21)
右側は支配人の森下政尋さん


 5年前に開業した「里の駅大原」は、京都駅から北に約16km(車で約1時間)の京都市左京区大原にある。新鮮な旬の野菜と地元産・府内産農産物を使った弁当やお総菜、餅をはじめとする加工品が人気で連日、にぎわいをみせる。

 施設は直売所「旬菜市場」を中心に加工所「もちの館」、交流施設「花むらさき」があり、隣接地に体験農園を持つ。売上高は1億9200万円(24年度)、従業員30名(社員2名、弁当・総菜8名、もち加工10名、レジ7名、事務3名)、直売所への出荷農家は115名(2013年5月)。地域で育て地域に愛される、元気いっぱいの農産物直売施設だ。


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 :里の駅大原全景。景観に配慮して、周囲に溶け込んだ佇まいをみせる
 :買い物客が多く、どんどん売れていく


圃場整備をきっかけに野菜直売施設を建設
 直売所誕生のきっかけは、平成18年に始まった土地改良事業だった。事業が開始されると、圃場整備だけでなく地域全体に還元できるような取り組みをしたらどうかと、市から提案があった。当時、地区の国道沿いで、日曜限定の朝市(大原ふれあい朝市)が、週一回の開催にもかかわらず年間売上7000万円を上げていたことから、直売所の建設が決まった。地元負担金を捻出するため、発起人5名が運営母体となる (株)大原アグリビジネス21を平成19年2月に設立した。

 発起人のひとりで2代目の代表取締役を務める山本壽典さん(65)は、「朝市の経験はあるものの、直売所のことはまったくわからなかった。計画が決まって1年間は、他府県の直売所を視察して回った」と語る。


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 :生産者の携帯やパソコンには1時間おきに売れ行きが通知され、生産者が補充に来ることもある
 :地元産の野菜等を原料にした加工品


 翌平成20年3月に施設が完成し、5月31日、直売所「旬菜市場」が開店した。開業を5月末に延ばしたのは、大原を中心に隣接の静原、久多の出荷農家は露地栽培が中心(一部は雨除けハウス)で、3月では品揃えに不安があったため。大原に土地をもつ上賀茂(京都市北区)の篤農家にも声をかけ、出荷量を確保した。開店早々、午前中に品切れとなる日が続き、役員が出荷者60名(当時)を訪ね、出荷量を増やすよう頼んで回ったという。


味も香りも濃い野菜の育つ土地
201410yokogao_kyoto_3.jpg 大原は京都盆地の北、洛北に位置し、周囲を山に囲まれ独立した風土をもつ。『小野山霞(おのやまがすみ)』が山から降りて夜露をむすび、湿度が高く、気温の日較差も大きい。そのため野菜は味が濃く、香りも強く育つ。露地栽培で、旬のものが中心。

 舌の肥えた料理人にも「ここのものはおいしい」と言わしめるほど出来がよい。大原の地形と気候が、まさに味の良い野菜を育んでいる。香りが強い特産の赤ジソを大原以外の場所で栽培すると、香りが消えてしまうのだそうだ。
 地元や京都市内からの集客を想定したが、新鮮で味の良い農産物を求めて大阪など近県からも買い物客がやって来る。
右 :定植されたばかりの大原特産の赤ジソ。収穫のころには道沿いに香りが漂う


併設の加工場を活用した品揃え
 直売所の手数料は野菜の場合、売り上げの10%。そこで、野菜よりも単価が高く手数料15%の加工品(餅、弁当、総菜や菓子等)に力を入れている。

 弁当や総菜の材料は、大原産もしくは近郊市内産の旬の野菜を使用。米や地鶏にもこだわりがある。おばんざい弁当はワンコイン(500円)で買える(特別食を除く)ように値段を設定、昼時にはほぼ売り切れる。売れ行きを見て商品の追加(生産)をできるのが強みである。


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 :おばんざい弁当。ごはんは赤米か季節のご飯(豆ご飯)に日替わりのおかず。今日は、レタスとシイタケの炒め物、グリンピース入りおから、野菜のあんかけ、切り干しダイコン、山菜の和え物、あん入りシソ団子。ワンコインながら充実
 :親子丼。地鶏も米も地元産で人気のメニュー


 加工品では、できたての「餅」が看板商品だ。地元産、もしくは府内産の餅米と小豆を使っている。シソ、ヨモギ等を加えた餅は見た目も美しく、食欲をそそる。「よもぎ餅」にはスタッフが大原で摘んだヨモギを「入りすぎ」と言われるくらい使っている。添加物を一切使わないため硬くなりやすく、賞味期限は当日(餡なしは翌日)のみ。シンプルだが味わい深い、お母さんの味が人気を集めている。


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 :左から とち餅、よもぎ餅、しそ餅
 :スタッフが摘んだヨモギを蒸して冷ます


担い手を育てる
 80歳超の女性生産者が毎日2回、自分で小さい荷車を押して野菜を運んでくる。出荷者の多くを占める高齢農家にとって、直売は生きがいの元だ。直売所開設当時、60人足らずだった出荷者は倍増したが、その中には新規就農した約15名が含まれている。専業農家の生産者グループ「オーハラーボ」に属する、ここ数年のあいだに大原に住み着いた人たちだ。代表の渡辺雄人さんは、同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャルイノベーション研究コース出身で、大原に研究科の実践圃場がある縁から、有機農業を志して大原で専業農家となった。期待の若い担い手だ。

 年2回、出荷者が集まる推進会議では、クレーム等の公表と注意と、売れ筋品種の紹介を行い、合わせて農薬取り扱い上の注意と栽培履歴記帳の徹底等を確認している。また、今は担い手を増やすよりも、それぞれの生産量と種類を増やすよう働きかけている。


直売所を支える取り組み~経営会議と圃場指導
201410yokogao_kyoto_17.jpg 開設以来、里の駅大原では、毎月1回、欠かさず「経営会議」を開催している。取締役4名と支配人、京都市北部農業振興センター、京都府京都乙訓農業改良普及センターが毎月集まって、経営状況や視察の受け入れ等について話し合う。税理士が参加する月もある。定期的に経営状況を確認することが、堅実な経営につながっている。さらに支配人、市北部振興センター、JA京都中央大原支店(営農指導員)、京都乙訓普及センターが月1回、出荷者の圃場を巡回して営農指導を行うのも特徴だ。
右 :月1回の経営会議。午後2時から4時まで話し合いが続く


 また、大原の素材を使ったヘルシー料理のコンクールや地域の農産物品評会の開催、交流施設「花むらさき」の活用など、取り組みも多彩である。


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 :地域の農産物品評会を農協と共催
 :大原の素材を使ったヘルシー料理のコンクールの審査


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 :交流施設「花むらさき」で地元出身のシェフによる食事会を年2回、開催
 :地元の食材を使った料理


次につなぐ経営を実践
 ここ大原でも、里の駅大原の開設前は耕作放棄地が発生していた。農家の女性であっても手っ取り早く観光関係の仕事に働きに出ることが多く、機械が入らない農地は放棄されがちだった。「雇用と放棄地解消にも役立っているかな」と山本さん。売り上げは年々伸びており、平成24年度には初めて配当した。「生産者と株主あっての会社なので、株主や従業員にきちんと還元したい」。

 これからの課題として、黒字の安定化と、後継者の育成を挙げる。「特に餅の加工ができる人材は年配者が多いので、若い人に技術を伝える必要を感じている。経営陣、生産者、加工部ともに若い人を育て、次につないでいきたい」と話してくれた。(水越園子 平成25年5月22日取材 協力:京都府京都乙訓農業改良普及センター)
●月刊「技術と普及」平成25年7月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


里の駅大原 ホームページ
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