提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


東日本大震災を乗り越えて(4)歴史ある「米崎りんご」の産地を支える。直売向けに多品種を栽培

2014年03月06日

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大和田正人さん(岩手県陸前高田市 相野果樹園)


 岩手県陸前高田市米崎町は、リンゴ生産量全国3位の岩手県の中でも歴史ある「米崎りんご」の産地として、全国に知られている。米崎町の高台、緩やかな斜面では、樹高の低いリンゴの木が日差しを受けて、枝を広げている。大和田正人さん(62)の果樹園である。収穫間近のリンゴや色づき始めたリンゴが青空に映える。


直売が中心の産地
201311yokogao_iwate4_1624.jpg 大和田さんはリンゴを栽培して33年。リンゴを中心にナシ、モモ等を計1.5ha、家族3人で栽培する。果樹園に隣接した直売所で、収穫したリンゴを販売。昨年(2013年)は9月10日頃から店を開け、訪ねた10月上旬には、さんさ、つがる、早生ふじが、店頭に並んでいた。年内はジョナゴールド、北斗、王林、ふじ、が登場。年明け後、2月いっぱい販売を続ける。紅いわてのような新顔や、世界一など、15~16品種という多品種のリンゴを作る。直売所での販売と、贈答用を中心に宅配で売り切る。父君の代、40年前から、地元の保育園児のリンゴ狩り遠足の受け入れも行っている。
右 :緩やかな斜面に広がる大和田さんのりんご園


 産地は岩手県南部の海沿いにある。夏は冷涼、秋から冬にかけては比較的温暖である。
 米崎地区と高田地区を中心に、約70ha、149戸がリンゴを栽培しているが、小規模な経営体が多い。リンゴの開花時期は早いが、収穫は急がず、木に成らせて熟してから収穫するのが特徴。味と品質は、常に高い評価を受けている。


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 :りんご園に併設する直売所
 :売り場には、手ごろな価格のりんごと贈答用りんごが並ぶ


混植とわい化樹で育てるリンゴ
 大和田さんの栽培の特徴の一つは多品種の混植である。「作業性は良くないけれど、混植すると受粉効率が上がります」。早生や晩生等を組み合わせることで収穫適期が分散されるし、異なった品種を途切れさせず店頭に並べることができる。

 わい化栽培を取り入れることにより、脚立を用いる高所での作業を減らしている。さらに毎年50本ほど樹を更新しており「味も品質も良いリンゴを作る。そのために作業性も念頭に、どのように植え、育てたら良いのかをいつも考えている」と大和田さんは言う。


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 :大和田正人さんと藤田章宏主任農業普及員
 :色づいたリンゴ


米崎りんごの歴史
 米崎りんごの歴史は古い。百年以上前に、船によってリンゴの木が持ち込まれ、栽培が始まった。それを裏付けるように、大和田さんの園地には、樹齢百年を超えるリンゴの木がある。実ったリンゴは、「行商の荷として気仙沼や釜石へ売りに出ていたと聞きます。海と山の付き合いがある中で、この地方独特の売り方だったのでしょう」と大和田さん。また、釜石、大船渡、気仙沼に水揚げした漁船の帰りの荷として積まれ、遠隔地へと運ばれた時代もあった。海沿いにこれだけまとまったリンゴの産地があるのは珍しいという。ただ産地としての規模は小さく、市場では高値がでにくかったため直売が根付いたとも言われている。「昔は売りに出て行かなくてはならなかったけれど、今はお客さんが来てくれる」と大和田さんは話す。

 国道に面した直売店の大きなガラス窓からは、リンゴ園を一望できる。売るリンゴがない半年間は店を閉めていたが、東日本大震災津波で店舗を失った市内の肉屋さんが間借りするようになり、通年営業するようになった(リンゴ販売は半年間)。


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 :リンゴの老木
 :大和田さんご夫妻


百年続く産地を次につなぐ
 これからの課題として、大和田さんは「人気のある品揃えができるような品種を栽培することと、わい化樹を用いた低樹高化をさらに進め、より働きやすくすること」の2つを挙げる。

 東日本大震災により、陸前高田市内のリンゴ園では2haが被災したが、23年度に1.7haが復旧(植え直し)した。そんな中、住宅の移転先として高台にあるリンゴ園地が選ばれてリンゴのが伐採されることが増えている。そこで、地域では低地へリンゴ園を移動(造成)する検討がされているという。リンゴの栽培減少を食い止め、歴史ある産地を次の時代へつないでほしいものである。(水越園子 平成25年10月3日取材 協力:岩手県大船渡農業改良普及センター)


相野果樹園
 岩手県陸前高田市米崎町字高畑95
 電話 0192-55-4333