提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


米どころ新潟平野で、野菜作ともち加工により収益確保。次世代につなぐ複合経営を展開

2013年10月24日

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田村良雄さん(新潟市 農事組合法人濁川生産組合)


 新潟市北区濁川(にごりかわ)は、日本海に注ぐ阿賀野川の河口から2kmほどの川沿いに広がる農業地帯だ。平成元年(1989年)設立の(農)濁川生産組合代表理事を務めるのは田村良雄さん(59)。従業員9名、パート4名と研修生2名(ほかに臨時雇用有り)で、米45ha(コシヒカリ33ha、ほかにこしいぶき、こがねもち、わたぼうし)、トマト1ha、エダマメ150a、葉物(コマツナ、チンゲンサイ、カブ、ホウレンソウ等)80aをつくる。米は全量直売し、もちを期間限定で製造直売する。自家栽培する「こがねもち」を加工した「阿賀の白雪餅」は、おいしいと評判の杵つきもちだ。法人の昨年(平成24年)の売上げは2億円を超えた。


始まりは大豆転作がきっかけ
201310yokogao_niigata_0034.jpg 法人の前身は、昭和62年、県の事業により大豆転作を始めたことにより設立された。大豆乾燥処理施設の費用返済が大豆だけではむつかしいので、米も作ろうとなったとき、30歳代だった田村さんを含む賛同した5名で平成元年、水稲の生産組合法人を立ち上げた。「先を考えたとき、いずれは、米だけでなく農業全般を共同でやっていくようになるだろうと思っていた」と、当時を振り返る。
右 :トマト栽培専用のハウス


 早速、秋の刈り取りから共同で作業を始めた。しばらくして転作大豆を米に戻したのを機に、農業機械の個人所有をやめて共同所有に踏み切った。平成3年には育苗ハウスと事務所を建設し、5年には各自が所有していたトマトのハウスを法人が借り受けた。そして平成6年、5名のうち3名が各自の経営を会社組織に統合し、現在の経営の形ができあがった。


50周年を祝った県内有数のトマト産地
201310yokogao_niigata_0042.jpg 「ここ濁川は、もともと水田地帯ではなかった」と田村さんは話す。新潟平野はブランド米・新潟コシヒカリの産地として知られるが、歴史ある「にごりかわトマト」の産地でもある。24年秋にJA新潟市トマト部会で50周年記念大会を行ったところだ。

 50年前、田村さんのお父さんを含めた7名が出荷組合を作り、地域で最初にトマト作りを始めた。ビニールハウスが世に出始めた頃で、はじめはトマト、キュウリ等の野菜と果樹を作った。「このあたりの経営面積は平均6、7反。1町歩以上あれば大きい方だった」。トマト栽培が軌道に乗ったためブドウをやめて、トマト作が中心になった。

 最盛期に70名いた生産者は、現在30名ほど。今では栽培「三代目」となる生産者もいるという。味にこだわり、糖度と酸味のバランスが良い、人気のトマトだ。濁川生産組合ではトマト専用のハウスを持ち、夏と秋の2回収穫、出荷している。
左 :施設内では、9月上旬からの収穫に向けてトマトが順調な生育をみせる


自家作米をもち加工し販売。野菜栽培も拡大
 濁川生産組合では、平成10年に長野県へ凍みもち加工の視察に行ったのがきっかけで、もち加工を始めることになり、加工設備を導入した。「もちはすぐ現金になるし、加工すれば米が3倍の価値を生むと聞き、視察に行った。これなら自分たちでもやれると思った」。ちょうど外部から雇用を入れ始めたときで、冬場の仕事と現金収入確保のために、新しいことを始める必要もあった。


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加工所内部。出来たてののし餅を乾燥させる棚(左)と餅つき機(右)。
一年に2カ月だけの稼働だが、「施設内の消毒を始め衛生管理等がたいへん。農作業よりも手がかかる」と難波さん


 もちは毎年、11月、12月の2カ月だけ製造し、販売は在庫がある限り。例年2月頃に完売する。原料のこがねもちは甘みがあり、もちにしたら最高の味になる。白もち、豆もち、ごまもち、よもぎもちの4種類。「阿賀の白雪餅」の名は、当時の市長が命名した。原料米だけでなく、もちに入れる豆、ごまも、自分たちで作っている。


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 :「阿賀の白雪餅」 
 :左から、白もち、ごまもち、豆もち、よもぎもち。10切入りで600~700円


 「付加価値をつけて売ることを考えないと、経営を維持していけない。だから、私の仕事は従業員を遊ばせないように仕事をつくること」と田村さんは言う。育苗ハウスを有効利用して、育苗期間以外に野菜を作る。特にトマトが終わった冬期には、コマツナ、チンゲンサイ等の葉物に力を入れている。生協や地元スーパー等との契約栽培も増えてきた。


部門責任制で後継者を育てる
 経営面積が増えた結果、専門的に作目を分担する必要がでてきた。稲作は大塚克洋さん(38)と山崎賢吉さん(31)が、葉物野菜は田村雄太郎さん(27)にと、責任を分担している。そうすることで、「任せても大丈夫になってきた。一人前と言えるには、あとは段どりが課題だな」。数年先には、経営を引き継ぎたいと考えている。

 従業員を時々募集するが、「女性の応募が多く、今年は女性を2名採用した。男性が入ってこないのが悩み」という。研修生も受け入れている。1年から1年半の研修を経て、今まで10名の研修生が巣立っていった。ほとんどが新潟県内で独立している。短期の研修を受けた人は多数いる。


201310yokogao_niigata_0036.jpg 濁川生産組合では今後、「水田面積を60haくらいまで広げて、もっと米がほしいという声に応えたい。圃場が分散しているので、大区画化して作業効率を上げることも必要。切りもちの生産も増やしたい。施設栽培については、手がかかるので今以上に増やすつもりはないが、減農薬・減化学栽培を続けていく」と田村さん。
左 : 田村良雄さん(左)と難波恵子さん(右)。難波さんは濁川生産組合の初期から勤める、組合の生き字引だ


 濁川地区は、県の先導的経営体育成事業モデル地区になっている。生産者を対象に行われた調査によると、濁川米の出荷者60人のうち、近い将来に作付けをやめたい人と増やしたい人の面積は、一致している。ただ、現状維持と答えた20人は60歳以上。10年後にはその人たちの田んぼがどうなるのか、気にかかる。濁川生産組合の将来だけでなく、地区の明日にも、田村さんは考えを巡らせる。(水越園子 平成25年8月27日取材)


▼農事組合法人 濁川生産組合
新潟県新潟市北区濁川字前通291番地
TEL 025-259-5542
FAX 025-259-5543