提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


障害者が主役、水耕方式で野菜を栽培 遊休農地活用と地産地消で地域貢献も目指す

2011年09月13日


小頭芳明さん(大阪府南河内郡河南町 クボタサンベジファーム(株)代表取締役)


 大阪府南河内郡河南町白木の田んぼが広がる一画に、新しい大型のハウスがみえてくる。クボタサンベジファームかなん農場は、遊休農地約3,500㎡に建てた3連棟、約2,500㎡のビニルハウスが中心である。回転が速く、作りやすさ、売りやすさから選んだ水耕栽培により各種レタス、サラダ菜、水菜、菊菜、ネギなどの軟弱野菜を中心に育てている。生産開始は2011年1月。近隣のスーパーへの販売を核に、障害者へ職場を提供し、遊休農地の活用をねらう。


知的障害者による農業の可能性を模索

 始まりは、2006年4月。知的障害者による農作業の可能性を、(株)クボタと大阪府食とみどりの総合技術センターが、共同で研究することになった。府の設備を借りて1年間、軽度の障害者(身体、知的)3人が週3日のペースで水耕栽培の養液管理に取り組み、最終的には収穫した野菜のテスト販売までこぎつけた。

 2007年4月以降は場所を堺市に移し、(株)クボタの子会社、クボタワークス(株)の事業として、親会社の研究用設備のうち、1棟100㎡ほどを借り受け、水耕栽培のミニモデルを設置して水耕栽培を続けた。4年間ノウハウを蓄積し、2011年2月、農業生産法人クボタサンベジファーム(株)を設立。障害者12名を新規に採用し、社長以下15名で、4月から本格的に野菜生産を始めた。


  


箱庭から農業ビジネスへ

 ミニモデルからの従業員3名が全体管理や班長をつとめ、新規採用の12名が種まき、発芽チェックや定植、灌水等の管理作業を受けもつ。勤務時間は8:30~16:00の実働6.5時間。土曜日はシフト出勤だ。出荷作業には、地域の女性7名が週2日ずつパートで働いている。


  


  


 立ち上がりは順調に進んだ。シュンギク、コマツナ、ミズナ、ラディッシュ、チンゲンサイ、サンチェ、マザーグリーン等が次々に育った。ミニトマトは人気商品だ。サンベジ野菜と呼ばれるこの野菜たちは水耕のため農薬をほとんど使用していない。ハウス内で太陽の光を浴び、すくすくと育っている。
 収穫は定植後1カ月程度(夏場は4週間弱)で、周辺のスーパーマーケット3店・10店舗と焼き肉チェーン店10店舗が売り先となっている。(株)クボタ本社にも買い取ってもらい、社員食堂で好評という。道の駅やJAの直売所等には、農家ではないことから出荷していない。


  


エコシステムを導入し推進

 サンベジファームのもうひとつの特色は、環境への負荷低減のための設備を取り入れていることだ。太陽光発電設備、木質ペレットボイラー、パットアンドファン(ビニールハウス用水冷式冷房システム)を設置し、重油を使わないしくみを取り入れている。費用の回収はすぐというわけにはいかないが、うまく利用して環境によい農業を進めていきたいとのこと。


  


  


事業化と障害者雇用の両立をめざして

 「甘く見ていたわけではありませんが、商売として成り立つような農業は簡単でないと思いながらの毎日です」と小頭社長。作業しやすいように導入した水耕栽培用の移動ラックの不具合や病害虫の発生で、計画通りにいかない栽培等に頭を悩ませる。ミニハウスでは順調だったことが、規模を大きくしてみると、なかなかうまくいかない。大きな面積を管理しながら売上を上げていくのは簡単なことではない。夏場にいったん栽培を休止し、8月末から栽培が再開されたハウス内で、苗の定植作業が始まっていた。


  


 経営面では、「損益収益の見通しがたつようにしたい。そのためには、きちんとした栽培管理体制にもっていくことが必要です。生産技術のレベルアップと安定出荷、安定した売上が目標」。3年以内に3000万円の売上と、黒字化を目指していると小頭社長は語る。

 また、障害者の自立のための職場の確保・提供が求められている昨今、また農作業は精神障害の人にとって良い、と言われていることもあり、クボタサンベジファーム(株)では、身体・知的障害者に限らず、精神に障害を持つ人の採用も、今後行っていく方針という。(水越園子 平成23年8月29日取材)