提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


中山間地の農業法人が雇用した若者3人に、担い手として地域が期待

2011年04月27日


左から稲葉友和さん、石路正純さん、山本悠太さん(農事組合法人ユートピアかみなか・広島県三原市)


 農事組合法人ユートピアかみなか(以下、かみなか)は、広島県三原市大和町の中山間地にある。この数年のうちに、かみなかには相次いで若手農業者が誕生した。山本悠太さん(22歳)、石路正純さん(29歳)、稲葉友和さん(35歳)の3人だ。


法人の若返り、経営多角化をめざして若手を雇用
yokogao1104_kaminaka_03.jpg かみなかは、資本金756万円、構成員50名(54~84歳、平均年齢約70歳)、平成22年度の経営面積は33.8ha、栽培作目は水稲23ha、大豆2ha、キャベツ50a、ナス12a、オクラ10a、葉物野菜のべ10a。23年度は新たにジャガイモ、スイートコーン、レンコン、タマネギに取り組む。
右 :キャベツ苗の植え付け作業をする山本さんたち(提供 :広島県東部農業技術指導所)


 法人化は平成15年11月7日(登記日)。立ち上げ当初の構成員は46名、経営面積は27.7ha。この地域では兼業農家による米栽培が中心の農業が営まれてきたが、高齢化が進み、今後の地域農業を考える中、集落で法人を設立した。法人化後に機械を集約し体制を整えたが、高齢化と米価下落は待ったなし。そこで若い担い手の雇用を真剣に考え実現、それを契機に野菜栽培に取り組み、経営の多角化を図っている。


農業技術大学校での出会いが縁で就職
 山本悠太さん(22歳)は広島県呉市の出身で、広島県農業技術大学校の卒業生(野菜専攻)。就農を希望していたものの、非農家の出身でひとりで農業を始めるのは難かしいだろうと考えていた。一方、かみなかの前組合長らは大学校で開催された農作業安全研修会に参加した際、大学校の先生に「生徒の中に法人で農業をしたいという人はいないだろうか」と相談、山本さんを紹介された。何回か話し合いをしたのち、平成20年4月、就職が決まった。住居は、かみなかが地域内のお寺の離れを改築して用意した。


yokogao1104_kaminaka_06.jpg 就農1年目(平成20年)は、午前中は三原市大和野菜振興センター(以下、野菜振興センター)での研修、午後はかみなかで研修の毎日。かみなかでは主に水稲の作業を手伝った。2年目(平成21年)からは、この年から導入したナス10aの栽培を任され、田植えの時期は田植え作業も行った。4年目の今年は、ナスを30aに拡大する。

「始めはお寺の離れで一人暮らしをしながらの生活に、不安もありました」と言うが、熱心に作業に取り組み、また地域の行事にも参加して、かみなかと地域に溶け込んでいった。3人の中では一番若いが経験は一番長く、頼れる存在。「わからないことは、周りに相談しながら、どんどん野菜を作っていきたい」
左 :ナス畑で生育を確認 (提供 :広島県東部農業技術指導所)


 石路正純さん(29歳)は三原市内の稲作兼業農家の出身。平成21年4月から野菜振興センターで研修を受けていたところ、かみなかから「うちで働かないか」と声がかかった。同年10月にかみなかに就職し、午前中は野菜振興センターで研修、午後はかみなかで働き始めた。22年4月からは終日、農作業に従事している。「まだまだ教わりながら仕事をしている」と言うが、去年はオクラ、今年はレンコンに取り組む。「もっと勉強して野菜を作っていきたい。儲かる農業をしたい」と語る。農業機械に明るいため、農機担当で整備等も手がけている。


yokogao1104_kaminaka_05.jpg 稲葉友和さん(35歳)は三次市布野町の出身。広島市内で働いていたが、お子さんの小学校入学を機に、奥さんの実家がある三原市大和町に移り住んだ。イチゴ農家である義父の薦めで、平成22年4月から野菜振興センターで研修を受けていた。石路さんと同様にかみなかから誘われ、野菜振興センターの担当者の勧めもあり、22年9月からかみなかで働きはじめた。「ジャガイモやスイートコーンの栽培管理を担当しています。農業は大変な部分も多いけれど面白い。なにより食べ物をつくる、作物を育てる喜びがあります。今後は技術を向上させていきたい。3人での作業が、励みになっている」と稲葉さん。
右 :ナスの栽培管理指導を受ける (提供 :広島県東部農業技術指導所)


「地域に根付いて」若い担い手への期待は大きい
 「この地域は耕地が広くない。高齢化がどんどん進む一方、後継ぎは戻ってこない。このままでは地域が寂れてしまうという危機感から、3人に誘いをかけた。若い人によって次の世代につなげていくことを考えた」と代表理事組合長の中井一男さん(69歳)。

 若手を法人に迎えるにあたって、まず法人内部でよく話し合った。法人の将来像に結びつけて受け入れを合意した上で、理事らが面接を重ねて雇用を決めた。若手の当面の賃金は、市の研修制度と県の補助事業で確保し、補助がある間に自力で雇用ができるよう、経営体制を整え、園芸品目の栽培に取り組むことにした。


  
 :法人での検討会の様子(提供 :広島県東部農業技術指導所)
 :中井一男組合長(左)、上田励二理事(右から3人目)とともに 


「今では3人がいなければ進まないほど、中心になって作業をしてくれている。トラクタ、コンバイン等も使いこなし、頼もしい存在ですよ。今では年配者が彼らに頼っている」「若手の加入で将来的に経営規模拡大(集積や作業受託)を視野に入れ、前向きな経営展開、法人経営を考えることができるようになった。孫のような3人に、ぜひ地域に根付いてもらいたい。今後、農地の集積が進むときには、3人が先頭に立って地域を引っ張っていってほしい。みんながそう願っている。」と中井さんは力強く語ってくれた。


 農業者の高齢化が進む中、特に中山間地では、地域の維持と農業振興は密接に結びついている。法人が若手を雇用することで地域に新しい人材を呼び込み、法人も地域も活性化するユートピアかみなかは、県下の集落法人のモデル的存在であり、期待を集めている。(水越園子 平成23年2月3日取材 協力:広島県東部農業技術指導所)