提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


業務用、加工用ダイコンで、地域農業の未来を拓く

2010年07月01日

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谷川洋造さん (鹿児島県大崎町 農業生産法人有田農産有限会社 取締役社長)


 見渡す限り緑色の畑作地帯。ここは、大崎町内の中部台地にある有田農産の自社農園だ。「今年のキャベツは順調です。今は手で収穫していますが、収穫機も検討しているんですよ。ここのキャベツは全部加工用です。大きさが不揃いでも、段ボールの重量で出荷できます」と語るのは、取締役社長の谷川洋造さん(37歳)。「この畑もあんな藪だったんですよ。耕作放棄地を一枚一枚開拓して、今があるんです」と、隣の山を指さした。


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 :同社が借り受けた土地は耕作放棄地も多かった。「荒れ地も藪も、みんなで力を合わせて開墾しました」と谷川社長
 :そうして生まれ変わった開墾後のキャベツ畑


代替わりをきっかけに。従兄弟ふたりで目指した新しい農業
 有田農産のスタートは40年前。現代表取締役社長の有田通文(みちふみ)さん(45歳)の父親が漬物用の大根を生産していた。作付け面積は2.5ha。息子の通文さんが昭和62年に後を継いで就農した当時、漬物用大根の価格は、スーパーの小売価格の10分の1ほどだった。

 平成6年、通文さんは、29歳で父親から経営を移譲された。通文さんの従兄弟にあたる谷川さんも経営に参画し、漬物ダイコンから青果用青首ダイコンの生産へと転換した。そんな時、知人の紹介で福岡の会社に「ダイコンを洗って出してみないか」という話があった。手洗いして出荷すると、価格は漬物用の泥付きダイコンの10倍。さらにそのダイコンを買った会社は、加工業者に刺身のつま用として売ったと知った。これをきっかけに、通文さんと谷川さんは、業務用のダイコン生産へと転換を図る。


 手収穫と手洗浄での出荷量に限界を感じていた平成9年、(株)クボタの販売店である(株)ミズホ商会から、青森に良い大根収穫機があるという情報を得て、早速視察に行った。そこで収穫機と同様に驚いたのは「ダイコン洗浄機」だった。このふたつを導入して効率化すれば...と夢が広がった。

 平成10年には認定農業者となり、町の経営改善支援センターの支援を受けて、農地の確保、集約を進めた。平成11年には、作付け面積を就農当初の14倍にあたる35haまで増やした。


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 :種蒔き、トンネルマルチも機械化 /  :大根の収穫機


「先代がこの土地で頑張ってきた信用もあり、少しずつ借地を増やすことができました。高齢でやめる人の土地や耕作放棄地など、小さい畑でも条件が悪くても、借りてくださいと言われた時には借ります。借りた以上は、迷惑をかけないように畦の管理などもていねいにやってきました」
 現在の耕作面積は、農地79ha、ハウス70a。出荷センターの周辺に84%の圃場があり、効率のよい作業が可能となっている。


加工野菜は切り干し大根から。集荷施設・加工施設も整備
 業務用野菜は、青果用の規格外を出荷するかというとそうではない。むしろ加工のしやすいよう、ダイコンの直径や曲がりなどの基準があり、変わらぬ品質と安定供給を要求されるシビアな世界である。それでも昨今の温暖化や気象条件では、規格外の商品が多い年もある。

 廃棄するのはもったいないという発想から、平成16年に切り干し大根の加工をはじめた。これが加工野菜の第一歩。切り干し大根と言えば宮崎の天日干しのものが有名だが、同社では、知人に譲り受けた中古のい草乾燥機で研究を重ね、異物混入のリスクが低い室内乾燥を確立した。

 そして平成21年、新たに出荷センターと加工センターを設立。自社加工の体制を作った。現在作っているのは、皮むきダイコン、つま用ダイコン、おでん用の打ち抜きダイコン、芯抜きキャベツ、皮むき里芋など。「この野菜を、こんな状態でほしい」という顧客の要望をききながら開発した、有田農産ならではの一次加工品である。


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有田農産が販売する加工野菜。
左から上から おでん用打抜大根、刺身のつま用大根、芯抜きキャべツ


 一次加工品は食品残渣が出ない点でも喜ばれている。都市部の加工業者では、野菜くずや皮は産業廃棄物処理をしなければならない。実際に業者に処理金額を聞くとかなりの額だった。
「ゴミがでない状態で納品できないか」という声で実現した商品なのだ。荷姿もできる限り取引先の要望に応えるようにしている。

 自社農場で賄えない分は、地域の農家から出荷してもらい加工する。加工用のハイテク機器はいずれも特注品で、設備投資も大きいが、「青果に付加価値をつける加工の部分を外に任せず、地域内で実現できれば必ず利益は残る」と谷川さんは言う。


高齢者の知恵を活かしたい。みんなで集える場づくりが夢
yokogao1006_arita_00.jpg 一昨年、大崎町でキャベツを生産している4つの農業生産法人で、大崎町キャベツ出荷組合を作った。有田農産は事務局をしている。組合長は20年来のキャベツ生産者。素晴らしい品質のキャベツを生産しており、引き合いも多いが、量が追いつかなかった。「共同出荷に留まらず、地域のベテランの農家さんや高齢者の知恵に学び、生産のノウハウを共有して、いいものづくりを継承していく場にもなれば」。
右 :町内の4法人で作った大崎町キャベツ出荷組合のキャラクター「おおさきキャべちゃん」


 6次産業化とは、地域で取り組み、利益を上げていく形だと谷川さんは言う。有田農産だけで今の耕作面積が2倍に増えることはあり得ない。今後は地域内の連携で、売れる野菜づくり、物作りをしていきたい。「そのための加工拠点、野菜工場になれれば。雇用の場づくり、Uターンや新規就農者の受け入れの場でもありたいですね」。


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 :現在役員3名、社員は96名 
 :加工センター職員。平成21年にできた加工センターでは地元の女性たちも多く働く

  

 そして、地元に留まり、ここで働く人のために、よりよい環境を整えるのも、谷川さんの夢だ。
 畑が大きくなり、集荷センター、加工センターと大規模になるにつれて、より多くの地元の人々が集まるようになった。子育て中の女性も働いている。社内に子どもを預けられる場所があったら、遠くまでパートに出なくて済む人もいるだろう。野菜を出荷してくれる地域の高齢者もいる。託児所に、地域のじいちゃんばあちゃんも集まって一緒に遊んだりすると楽しかろう。「そこでは、うちでとれた農産物をとれたその日においしい料理で食べられたり...。地域のいろんな世代の人が集う場所を作りたいですね」(森千鶴子 平成22年5月24日取材)