提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


戦略的な取り組みで成果を上げる大規模集落営農組織 

2009年06月18日

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工藤修代表理事(秋田県大仙市 農事組合法人たねっこ)


 秋田県のほぼ中央部、雄物川中流湾曲部に広がる水田地帯286haと、小高い台地の畑地110ha。ここを生産基盤としているのが、小種地区5集落の農家からなる「農事組合法人たねっこ」だ。米・大豆併用型ライスセンターを所有し、1ha区画圃場で水稲・大豆、それに野菜を生産する大規模複合経営に挑戦している。
 出羽丘陵と雄物川に囲まれて隔離された立地条件から、当法人は水稲・大豆の指定採種圃を担っている。小種という地区名と、種子生産の拠点であることから、「たねっこ」の法人名が付けられた。


県内最大規模の特定農業法人 
 法人化のきっかけは、平成13年度から施工された県営担い手育成基盤整備事業による、1ha区画整理事業。それに伴い、集落営農を推進していくことになったのだ。
 しかし、5集落132戸にも及ぶ農家を一つにまとめるのは、容易なことではなかった。「農地を取られるのでは」「自分の体が動くうちは要らない」「機械を持っているから組織化する必要はない」など、始めのうちは抵抗感を持つ人や必要性を感じていない人も多かったという。

 現状を理解してもらうため、地域のリーダーたちが、集落内の農家に対してアンケートや説明会を実施した。不安や誤解を少しずつ取り除きながら、賛同する声を増やしていった。こうして平成17年3月、県内最大規模の特定農業法人が誕生。集落内の農家の97%にあたる132戸が組合員になっている。


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 :出羽丘陵と雄物川に囲まれた圃場
 :たねっこが所有する米・大豆併用型ライスセンター。平成20年度の利用面積での計画対比は水稲147%、大豆223%


経営の安定が担い手問題を解消 
 経営基盤強化のため、たねっこでは農地の集約、機械設備の共同利用、肥料等の一括購入など、徹底したコスト削減に取り組んでいる。水稲直播栽培もその一つ。平成18年度に1haの試作を行ない、その後2カ年で移植栽培と同等の収量が確保できるようになった。当初は鳥害などの懸念から導入に消極的だったが、仙北地域振興局普及指導課の支援を受け、成果を上げていった。

 また、野菜や花きの栽培管理は女性や高齢者が担当し、地域雇用の場を得るとともに、組織力を向上させている。意欲の増した女性たちは、次なる挑戦として、水稲育苗ハウスを活用したケイトウやアスター等の切り花栽培に、取り組んでいるという。


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 :普及指導員から指導を受ける女性たち /  :たねっこは種子生産の拠点にもなっている


 「組合員には、去年の通帳より10円でも多く残しましょうと呼びかけている」と話す工藤修代表は、経営体力強化を第一に掲げる。当初238万円だった出資金は、増資を重ねて現在は3400万円。「今年もできれば1500万円増資し、自己資本比率を高めたい。5000万円を超えれば、法人として体力がつくのでは」と語る。

 経営面が安定してくると、集落内の若者も希望を持って就農できる。たねっこでは、研修費を負担して、農業試験場に研修生を派遣する。研修期間中でも賃金を支払い、福利厚生面での保証も一般企業並みという。最近では、27歳の若者が研修を終えて就農した。「毎年1人ずつ声をかけて、若い担い手を増やしています」と工藤代表は話す。来年は20歳の若者が組合員に加わるという。

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 :集落内の機械設備と労働力を有効に活用 /  :作付面積を順調に拡大している水稲直播栽培


流通大手イオンと米の契約栽培 
 たねっこでは、平成20年度から減農薬減化学肥料の特別栽培米の生産も始め、高付加価値化を図っている。この取り組みが、安全・安心を前面に押し出したイオン(株)の販売戦略と合致し、年間800トンの契約栽培に至った。
 出荷はJA秋田おばこを経由。イオンの独自ブランドとして扱われる特別栽培米あきたこまちは、市販の特別栽培米より安い価格で販売され、安全でおいしく、割安な米を求める消費者ニーズに応えている。たねっことしても、米価の低迷に左右されることなく生産できる契約栽培のメリットは大きい。


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集落にあるコンバイン総出の稲刈り作業


新たな取り組みに次々と挑戦 
 このような成果の数々は、他の集落営農組織からも注目され、各地から視察団が訪れる。工藤代表は「人が来ると思えば、作業する場所を常にきれいにしておくようになります。また、私自身も勉強の必要性を感じ、日々専門紙で情報収集をするなどしています」と、視察の受け入れが組合員の意識改革につながっていると話す。

 「毎年ステップアップしていきたい」と力強く語る工藤代表。新技術の導入や事業拡大など、果敢に挑戦する姿勢は、これからも変わらない。(橋本佑子 平成21年5月28日取材 協力:秋田県仙北地域振興局普及指導課)